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どうなる「私的録音補償金制度」〜「新しい制度に見直しを」JEITAの主張


 私的録音補償金制度を考える短期集中連載の3回目となる今回は、デジタルオーディオプレーヤーを生産するメーカー側を代表して電子情報技術産業協会(JEITA)の考えを見てみよう。

 JEITAの主張は「私的録音補償金制度を抜本的に見直す」ことだ。権利者団体が政令指定を訴えるiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーについては「汎用機器」と見なし、政令指定するべきではないという立場をとっている。また、DRMなどのコピーコントロール技術の発展により、「ユーザーからその都度、直接的に、個別の徴収ができる新しい制度」へ移行できると主張し、現行制度の凍結や廃止を訴えている。

 JEITAではこれまで「法制問題小委員会での議論を一番大切にしてきた」という。ただし、権利者団体に比べると一般に対して意見を述べる機会はあまりなかった。そこで、JEITA法務・国際部の土屋正寿部長代理と原田明子氏にJEITAの考えを詳しく伺った。


現行制度に問題点、iPodを政令指定する前に「制度凍結」を

「私的録音補償金制度制定当時とは技術レベルが異なり、個々のユーザーの利用状況を把握できるようになってきた」と土屋氏
――まず、JEITAの主張を教えてください。

土屋氏
 私的録音補償金制度が制定された1993年当時とは技術レベルが異なります。個々のユーザーの利用状況が技術により把握できるようになってきました。補償金制度自体にも、負担者たるユーザーの認知度が低い、私的録音しないユーザーも機器や媒体購入時に負担を強いられるといった問題があります。

 JEITAでは、iPodなどのハードディスク内蔵型録音機器などを汎用機器と見ています。音楽を聴く以外にもボイスレコーダやデータ用メディアとして利用できます。従って、専用機器、専用媒体を対象とする現行制度の対象とはなりえないと考えています。

原田氏
 補償金の返還に関しては、先日初めて1枚数円単位のCD-Rについて返還されましたが、手続きにかかる費用は返還請求者が負担する制度になっています。私的録音を行なっていない人が、返還請求したとしてもかえって損をしてしまうというのが実情です。消費者の財産権を侵害していると言えるのではないでしょうか。

土屋氏
 こうした状況でiPodなどのハードディスク内蔵型録音機器などを追加指定すると、多くの問題を解決しないまま制度を拡大してしまうことになります。導入当初は、メーカー側も是認した現行の制度ですが、技術環境、ビジネス環境は様変わりしました。インターネットを通じて利用者と直接結びつくビジネスモデルが進む中、矛盾をはらんだ制度を拡大することは時計を逆回しするようなものです。ひとまず制度を凍結して、現行制度について真の当事者たるクリエイターと消費者が参画する場での検討が必要です。

 録画については、地上アナログ波が停波する2011年に一斉にデジタル化することになり、事実上すべてのソースにコピープロテクト技術が導入され、複製行為をコントロールできるようになります。ですから、私的録画をコントロールできないという理由で導入された補償金制度は不要になります。

 録音についても、インターネットによる有料音楽配信が本格化すると、音楽配信の対価と私的録音補償金制度の“二重の負担”が問題です。権利者団体側の主張では、許諾の範囲が異なる――つまり、インターネット上のサーバーからPCにダウンロードするまでを許諾し、その後の複製は許諾範囲外だと主張しておりますが、一般の消費者からみれば納得できないと思います。


PDへの転送を許諾していないという主張は「ユーザーには理解できない」

――デジタルオーディオプレーヤーなどPD(ポータブルデバイス)への転送そのものが許諾されていないとの主張もあります。

土屋氏
 音楽配信ダウンロードで1曲いくらで買いましたというiPodユーザーに、同じ曲をPCからiPodに転送するからといって私的録音補償金を払えと言うのは一般のユーザーには理解できないと思います。

 音楽配信サービスではダウンロードしたPCから先の転送は許諾していないと権利者団体側は主張されておりますが、私の知る限りでは通常の音楽配信サイトでは許諾条件としてPDへの転送回数が明示されています。この回数までは許諾の範囲であり当然この部分の対価も含まれているという契約になっていますので、私の知る通常の音楽配信サービスについては、「契約にある回数の複製が許諾対象外の私的複製であり、補償金の対象である」という主張はあたらないと思います。


私的録音補償金制度廃止はベルヌ条約違反になる!?

――権利者団体は私的録音補償金制度を見直すことになれば、著作権法第30条1項と2項が成り立たなくなると主張しています。また、補償金制度がなくなればベルヌ条約違反との主張もあります。

原田氏
 著作権者側は著作権法第30条2項で定められている補償金制度が空洞化すると、ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)違反のおそれがあるとの主張であると理解しておりますが、これについては150以上のベルヌ条約加盟国の中でも補償金制度を導入している国は22カ国に過ぎないことを見ればその是非は明らかであると思います。


新制度のDRMは市場競争で選択されるべき

原田氏は「クリエイターにもユーザーにも受け入れられるようなビジネスを作っていくほか道はない」という
――新しい制度で構築されるDRMのシステム費用がデジタルオーディオプレーヤーに転嫁されるという意見もありますが。

土屋氏
 それについては誤解があるのではないかと思うのですが、なにも国家単位の大きなシステムを作ろうというわけではないんです。すでに市場にあるDRMのシステムやネットワークを利用して、個々のビジネスとして形成されていくと思っています。その全体を称してDRMを活用した制度と言っても良いかもしれませんが。

 負担については、最終的に国民経済全体の負担になりますが、それが直接的に機器に上乗せされるとか、消費者が全て負担するといった話ではありません。事業者がそれぞれのビジネス判断でDRMを導入するべきで、それが消費者から受け入れられなければ消えていくだけです。

原田氏
 iTunes Music Storeに代表されるように、現時点でも音楽配信サイトは少なくありません。ユーザーに受け入れられないビジネスであれば当然消えていくでしょう。受け入れらないような価格設定であったり、使い勝手が悪ければ消えていくだけです。メーカー側では、クリエイターにもユーザーにも受け入れられるようなビジネスを作っていくほか道はないと考えています。

――具体的にはどのような制度になるのでしょうか。

土屋氏
 制度というとやや語弊があるかもしれませんが、具体的な形は今後の展開次第です。「技術+契約」による「都度+直接+個別」の対価徴収をイメージしています。今の技術で可能なDRM技術を導入した複数の事業者間で競争し、その中でどこが生き残るか、という――結局は消費者が決めていく構図ですね。

原田氏
 現状の音楽配信サイトにおけるビジネスモデルの延長線で考えています。また、コピーコントロールが施されていないCDという媒体において、著作権者やユーザーに納得してもらえるようなかたちでDRMを実装していき、不正コピーを減らしていくことも重要ですね。

――8月25日には文部科学省文化審議会著作権分科会の第7回法制問題小委員が開催されます。

土屋氏
 法制小委の場でもJEITAの意見を表明させていただき、主旨はご理解いただけたと考えています。私的録音録画補償金制度の抜本的見直しやPCなどの汎用機器への拡大について見送りの方向が示されました。ハードディスク内蔵型録音機器などについては結論が出ておりませんので、8月25日の法制小委を含め今後の展開を注視し、必要な対応を引き続き行なっていきたいと考えております。




 3回にわたって権利者団体やメーカーが主張する「私的録音補償金制度」のあり方を追った。8月25日の第7回法制問題小委員では中間とりまとめが予定されており、その後はパブリックコメントに付される見込みだ。


関連情報

URL
  電子情報技術産業協会(JEITA)
  http://www.jeita.or.jp/
  日本音楽著作権協会(JASRAC)
  http://www.jasrac.or.jp/

関連記事
どうなる「私的録音補償金制度」〜iPodは補償金の対象になるのか(2005/08/23)
どうなる「私的録音補償金制度」〜「iPodも対象に」JASRACの考え(2005/08/24)


( 鷹木 創 )
2005/08/25 11:32

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