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どうなる「私的録音補償金制度」〜iPodは補償金の対象になるのか


 「私的録音補償金の対象にiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーを政令指定するべきだ」。日本音楽著作権協会(JASRAC)など著作権者7団体が7月28日に発表した声明に反響が広がっている。

 日本レコード協会(RIAJ)が10日に発表した「有料音楽配信売上実績」によれば、2005年上半期におけるインターネットや携帯電話での音楽配信の売上総額は141億円を超す。日本版iTunes Music Storeもついに始まり、インターネット上での音楽配信がますます盛んになる中、私的録音補償金制度は一体どのようにあるべきか。編集部では著作権者側としてJASRAC、メーカー側として電子情報技術産業協会(JEITA)の意見や考えを伺った。全3回にわけてお伝えしよう。


関連記事
「iPodなどを私的録音補償金制度の対象に」JASRACなどの7団体が声明(2005/07/28)
上半期の音楽配信売上は141億円、96%がモバイル〜RIAJが国内42社集計(2005/08/11)

私的録音補償金制度とは

 そもそも、私的録音補償金制度とはどういった制度なのか。著作権法第30条とその第2項に私的録音とその補償金制度の定義が記載されている。

【著作権法第30条】

 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう)を用いて複製する場合。

二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合。


 2  私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。


 わかりやすく説明すると、個人的な使用または家庭内での使用を「私的使用」と定め、私的使用の範囲であれば著作物の複製は可能だというのが著作権法第30条の第1の意味だ。私的使用目的であっても、政令によって定められたデジタル方式の機器や記録媒体で録音・録画を行なう場合は補償金を払うよう定めたのが第2項に該当し、これが私的録音補償金制度を定義付けている。

 私的録音補償金制度について詳しくは「社団法人 私的録音補償金管理協会(sarah)」のWebサイトで解説しているのでそちらを参考にしてほしい。


URL
  私的録音補償金制度に関連する著作権法(sarah)
  http://www.sarah.or.jp/guide/guide00.html

私的録音補償金制度の歴史と国内制度の特徴

 私的録音補償金制度は1965年のドイツ(当時西ドイツ)が世界で初めて導入した。日本でも1977年から著作権審議会第5小委員会において導入が検討され、1987年の第10小委員会を経て、1992年に著作権法が改正される。翌1993年には改正著作権法が施行され、私的録音補償金の管理団体である「社団法人 私的録音補償金管理協会(sarah)」が設立。同年、日本国内においても私的録音補償金制度が始まった。

 1993年当時の政令指定機器・媒体はDAT、DCC、MDの3種類。1998年にCD-RとCD-RWも追加されている。2005年現在の補償金額は録音機器であれば、カタログ表示価格の65%を基準価格として、その基準価格の2%。上限は録音機能が1つであれば1,000円、2つであれば1,500円だ。記録媒体の場合は、カタログ表示価格の50%を基準価格として、その3%が補償金額となっている。

 徴収された補償金はメーカーからsarahに渡り、補償金全体の最大20%を共通目的基金として除き、残りをJASRAC、RIAJ、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)に配分する。2004年度出荷分のデータでは補償金総額が23億3,936万円で、そのうち共通目的金は4億4,494万円と約19%を占める。残りの約36%はJASRACに、RIAJと芸団協には約32%ずつ配分され、それぞれに加盟する著作者に対して最終的に分配されている。


補償金の徴収・分配の流れ(出典:sarah)

 日本の私的録音補償金制度の特徴として、1)デジタル機器のみが対象となっていること、2)補償金の支払いがユーザー負担になっていることなどが挙げられる。2)のユーザー負担については、例えばドイツでは1955年から1964年にかけて、連邦通常裁判所で「メーカーが録音できる機器を提供し、利益も得ているのだから、私的録音補償金はメーカーが負担することが妥当」との判決が出ている。一方、日本では私的録音という著作物利用に関する受益者負担の原則から補償金をエンドユーザーが負担する方式に決定した経緯がある。

 なお、日本の補償金制度導入の直前に当たる1992年に米国でも「Audio Home Recording Act(AHRA)」を制定し、デジタル録音のみに限定した私的録音補償金制度を導入している。また、カナダでは2003年にiPodを対象とした補償金制度を導入しようとしたが、同国の最高裁判所は、iPodを対象とした補償金制度を認めず、2005年7月に訴えを却下している。


iPodを対象にしないと補償金収入がなくなる?

 現在問題になっているのが、iPodをはじめとしたデジタルオーディオプレーヤーを私的録音補償制度の対象として政令の対象機器に含めるかどうかだ。まずはJASRACをはじめとする著作権者側の意見を見てみよう。7月28日に発表された声明によれば、私的録音を許しているのは「極めて零細な使用だから」だという。現在私的録音補償金の対象外であるiPodなどのハードディスクもしくはフラッシュメモリ内蔵型デジタルオーディオプレーヤーにおいては、利用が拡大して「零細な利用とは言えない状況」になっているという。

 現実的にも政令指定を受けていないデジタルオーディオプレーヤーが、政令指定されたMDの出荷を大きく上回っており、著作権団体では「いずれは私的録音補償金制度による収入が事実上ゼロになってしまう可能性がある」(JASRACの泉川昇樹常務理事)と危惧する。

 一方、メーカーを代表するJEITAの考えは「iPodなどを私的録音補償制度の対象にするべきではなく、技術の発展に応じて私的録音補償制度そのものを見直すべきだ」というもの。「DRMなどの技術が進展し、利用者との契約を組み合わせることで、利用に応じてその都度課金し、個別の利用者から直接権利者に著作権料を支払うことが可能になった」(JEITA法務・国際部の土屋正寿部長代理)と主張し、これまで制度で一括して補償金を徴収してきたスタイルを「都度+直接+個別」の対価徴収スタイルに変えるべきだと主張している。

 7月28日に開催された文部科学省文化審議会著作権分科会の第6回法制問題小委員では、私的録音補償制度の対象にiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーを含むかどうかの中間とりまとめを行なう予定だった。しかし、賛成・反対両意見の整理に止まり、結論は先送りされた。中間とりまとめが予定されている第7回の法制問題小委員会は8月25日に行なわれる。


URL
  第6回法制問題小委員会議事録(議事内容は8月22日現在作成中)
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05072901.htm



 ここまで日本国内の私的録音補償制度をめぐる問題をざっと見てきた。次回以降は権利者側の代表としてJASRAC、メーカー側の代表としてJEITAから伺ったそれぞれの意見や考えを紹介したい。


関連情報

URL
  日本音楽著作権協会(JASRAC)
  http://www.jasrac.or.jp/
  電子情報技術産業協会(JEITA)
  http://www.jeita.or.jp/
  私的録音補償金管理協会(sarah)
  http://www.sarah.or.jp/
  文化庁
  http://www.bunka.go.jp/

関連記事
どうなる「私的録音補償金制度」〜「iPodも対象に」JASRACの考え(2005/08/24)
どうなる「私的録音補償金制度」〜「新しい制度に見直しを」JEITAの主張(2005/08/25)


( 鷹木 創 )
2005/08/23 11:34

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