日本音楽著作権協会(JASRAC)、日本レコード協会(RIAJ)など音楽の権利者7団体は28日、私的録音補償金制度においてiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーを緊急に政令指定すべきだとする声明を発表した。なお、同日開催された文化審議会著作権分科会法制問題小委員会では、iPodなどを私的録音補償金制度の対象にするべきかどうかの結論は出ず、賛成・反対両意見の整理に止まったという。
声明を発表したのは、JASRAC、RIAJのほか日本芸能実演家団体協議会、日本音楽事業者協会、音楽出版社協会、音楽制作者連盟、日本音楽作家団体協議会の7団体。声明では、私的録音が許されるのは極めて零細な使用だからだと主張。権利者団体の調査によると、私的録音された楽曲の51%が私的録音補償金制度に含まれないデジタルオーディオプレーヤーなどの機器や記録媒体で録音され、仮にそれらの楽曲をパッケージで購入すると試算すると3,400億円に達する。こうした状況は「零細な使用とはいえない」というのが権利者団体の考えだ。
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声明を発表した7団体の代表者
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日本芸能実演家団体協議会の椎名理事
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JASRACの吉田理事長
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ただし、私的録音補償金制度には「DRMシステムがあれば補償金は不要」「私的録音補償金は二重取り」「権利者への分配が不透明」などの指摘もある。日本芸能実演家団体協議会の椎名和夫理事の説明によれば、DRMついては、私的録音補償金制度とDRMは対立するものではないという。また、DRM対応機器を導入する際のコストはユーザーの負担になるなどのポイントを指摘した。二重取りについては、音楽配信業者やCDレンタル業者へ許諾した範囲と私的録音の範囲は異なると反論。さらに権利者への分配については、2003年の場合7,543人の実演家に対して1人あたり55,693円が分配されていると実績を示して説明した。
JASRACの吉田茂理事長は、私的使用のための複製を規定する著作権法第30条第1項と、私的録音補償金制度を定める著作権法第30条第2項を引用する。「MDが私的録音補償金制度の対象に指定されているのに、今後ますますの増加が予想されるiPodなどが指定されていないのは不公平。著作権法第30条第2項が死文化してしまう」。
さらに、第1項と第2項で日本が批准する国際条約であるベルヌ条約を満たしているとして、「iPodなどのデジタルオーディオプレーヤーが私的録音補償金制度の対象として認められないのであれば法理としてバランスをとるべきだ」と説明。デジタルオーディオプレーヤーを私的録音補償金の対象として認めない場合は、ベルヌ条約などの国際条約に違反しないためにも著作権法第30条そのものを見直す抜本的な改革が必要になる可能性もあると示唆した。
権利者団体も私的録音を完全に否定するつもりではない。「一定の節度やルールの下に私的録音が行なわれるという状態を考えたいのが本音。著作権法第30条の第1項だけが突出している状況を補うためには補償金制度が必要だ」(JASRAC吉田理事長)。
その一方で、現状の補償金制度にデジタルオーディオプレーヤーが含まれていないことに対しては「文化、芸術の振興や知的財産立国を掲げるわが国にあって大きな失態」とし、緊急に政令指定すべきと強調した。なお、補償金制度に指定された場合の料率は未定だ。記録容量に応じて料率が決められているフランスなどの例を挙げ、「機器によって容量が違う。日本においても容量に応じて料率を変えることになるのではないか」とコメントした。
関連情報
■URL
日本音楽著作権協会
http://www.jasrac.or.jp/
日本レコード協会
http://www.riaj.or.jp/
日本芸能実演家団体協議会
http://www.geidankyo.or.jp/
日本音楽事業者協会
http://www.jame.or.jp/
音楽出版社協会
http://www.mpaj.or.jp/
音楽制作者連盟
http://www.fmp.or.jp/
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( 鷹木 創 )
2005/07/28 21:01
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