日本音楽著作権協会(JASRAC)は18日、2004年度の事業報告を行なった。2004年度のJASRACの権利保護とコンテンツ流通促進に向けた取り組みとしては、著作権法の一部改正と、今後の著作権法改正に向けた要望提出、コンテンツ促進法の施行、各種協議会への参画などを挙げた。また、音楽ファイル交換サービス「ファイルローグ」に対する裁判が確定したことや、楽曲データベースの整備状況などについての報告が行なわれた。
● iPodなどのデジタルプレーヤーを補償金制度の対象にすることを強く求める
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JASRACの加藤衛常務理事(左)と吉田茂理事長(右)
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著作権法の改正については、アジアなどでライセンス生産された安価な邦楽CDなどが日本で販売されることを防ぐ環流防止措置などを導入する改正案が2004年6月3日に可決し、2005年1月1日から施行されている。また、著作権侵害に関わる罰則についても、懲役の上限が3年から5年に、罰金の上限が300万円から500万円に引き上げられた。JASRACの加藤理事によれば、現在までに国内の税関において8件の環流防止措置が取られたという。
今後の著作権法改正に向けた要望としては、JASRACでは文化庁に対して「死後70年までの間」となっている著作権保護期間の延長や、私的録音補償金制度の対象機器に関する要望などを行なっている。私的録音録画補償金制度は、ビデオデッキやDVDレコーダーなどの録画機器やMDレコーダーなどの録音機器、 MDや音楽用CD-R、DVD-RW/RAMなどのメディアについて補償金を徴収し、著作権者に還元する仕組みとして導入されている。ただし、iPodのようなHDD内蔵型プレーヤーやデータ用CD-Rなどは対象となっておらず、JASRACをはじめとする著作権管理団体が対象となる機器やメディアの拡大を求めている。
JASRACでは、iPodなどのデジタルプレーヤーに対しては、私的録音録画補償金制度の対象とすることを強く求めていくとして、4月28日に行なわれた文化庁の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会において、JASRACや日本レコード協会など7団体が連名で意見書を提出したことを明らかにした。意見書では、「HDD内蔵型などのデジタル録音機器については、早急に補償金制度の対象とする」「録音以外の用途にも利用できる汎用型の機器についても、補償金制度の対象に含めることを検討する」「現行の制度では対象となる機器を政令によって指定するとしているが、新たな機器の登場などに迅速に対応できるように改正する」という3点を求めている。
JASRACの泉川理事は「iPodなどのデジタルプレーヤーについては、早急に補償金制度の対象とすべきであると考えている。文化庁の小委員会では、こうした機器は音楽プレーヤーとしてだけでなく汎用に利用できるものであるという意見がメーカーから出た。しかし、実際にはこうした機器は『最高1,000曲が再生できる』といった宣伝がされており、主として音楽プレーヤーとして販売されていることは明らかだ。メーカーにも理解を求めていきたい」と語った。
また、データ用CD-Rメディアや通常のHDDなどの機器についても、「アンケート調査などでは、多くのユーザーがこうした機器にも録音や録画を行なっている実態が明らかになっている。全てのユーザーが行なっているわけではないため、どのような形で対象にするかについては難しい面もあるが、多くの録音が行なわれている以上は見過ごすことはできない」とした。
● 阪神私設応援団による著作権詐欺は「JASRACの信用に関わる問題」
2004年度にJASRACが行なった法的措置としては、音楽ファイル交換サービス「ファイルローグ」を運営していた日本MMOに対する、音楽ファイルの送信停止と損害賠償を求めた裁判を挙げた。
この裁判は、2003年12月17日に東京地裁が日本MMO側に総額約6,689万円の損害賠償の支払いを命ずる判決を下しており、2005年3月31日には東京高裁が一審判決を支持し、日本MMO側の控訴を棄却する判決を下した。日本MMO側は上告期限までに最高裁への上告を行なわなかったため、東京高裁の控訴審判決が確定した。JASRACの加藤理事はこの判決について、「インターネット上での音楽流通に著作権保護のルールが必要であることを明確にしており、今後のJASRACの管理業務に好影響をもたらすものと考えている」とコメントした。
楽曲データなどのデータベースシステムについては、演奏会での音楽利用のインターネットからの申請システム、CD・ビデオ・出版での音楽利用のインターネットからの利用申請システム、映像コンテンツの権利情報についてのデータベースを2004年度中に稼動し、権利情報データベースと利用申請システムについては主要なものがすべて稼動したという。今後についてはは、さらに徴収から分配までの一貫したシステムの構築を行なっていくとしている。
加藤理事は、「このシステムは国内よりもむしろ海外で知られている。ヨーロッパなどでもいわゆる着メロ・着うたのようなサービスが普及しだして、こうしたシステムの必要性が高まっている。システムの構築においては日本が先進国となっており、今後はヨーロッパやアジアなど他国にも構築のための情報を提供していきたい」と語った。
また、阪神タイガースの私設応援団が、作者不明の応援歌を自らが作詞作曲したと虚偽の登録をしたとして著作権法違反で刑事罰を受けたという事件について、加藤理事は「JASRACの信用に関わる問題と強く受け止めている」とコメントした。「楽曲は著作権信託契約に基づいて、他人の権利を侵害していないことを作者や音楽出版社などに保証していただいた上で管理を行なっており、今後もこの管理の方向に変わりはない」としたものの、届出時のチェックの強化や作者不詳の楽曲についての作品データベースの整備、著作者などからの疑義の申し出の窓口のほか、広く一般からの情報窓口としてインフォメーションデスクを開設するなどの措置により、こうした事件の再発防止に取り組んでいくとした。
関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.jasrac.or.jp/release/05/05_1.html
■関連記事
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( 三柳英樹 )
2005/05/18 19:00
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