マイクロソフトは11月30日、17種類のMicrosoft Windows Vistaサイドバー・ガジェットおよびWindows Liveウェブガジェットの無償提供を開始した。また、新ガジェットをPRするために、デーブ・スペクター氏を起用した動画コンテンツ「マイクロソフトオフィシャルガジェット特集」も公開するなど、新ガジェット普及に対する意気込みが伺える。
ガジェットの魅力とは何か、また、マイクロソフトがどのような取り組みを行うのかを同社オンラインサービス事業部の安藤浩二氏に伺うとともに、今回提供開始された17種類中7つのガジェット制作を担当したサムライワークスの取締役 矢追龍之介氏に、開発の取り組みやガジェットの現状についてお話を伺った。
● ダウンロードしてダブルクリックするだけで利用可能に
Microsoft Windows Vistaサイドバーガジェットのような機能は、今回が初めてではない。古くはWindows 98以降のOSで利用可能となった「アクティブデスクトップ」が挙げられる。アクティブデスクトップでは、チャンネルとしてバナーを配置し、ユーザーにダイレクトにアクセスさせる仕組みだったが、その試みが成功したとは言いがたかった。その反省を踏まえて、安藤氏は、今回の取り組みの第1のポイントがユーザー負担の軽減にあるとした。
「確かにアクティブデスクトップが成功したとは言えません。しかし、依然としてPCのデスクトップには媒体としての価値があると思っていました。デスクトップに常駐性の高いガジェットがあれば、ユーザーに直接リーチすることが可能になります。」(安藤氏)
ただし、「従来はソフトウェアのインストールが必要で、一般ユーザーには敷居が高かった」。こうした反省を踏まえ、Windows Vistaでは、OSの標準機能の1つとして、サイドバー・ガジェットが利用可能となった。
「ランタイムが不要なので、利用したいガジェットをダウンロードして、ダブルクリックするだけでインストール完了と、インストールは誰でもできる簡単操作になっています。ランタイムなどの専用ソフトウェア不要で、ガジェットを簡便に扱えるようになったというのは注目すべき点だと考えます。」(安藤氏)
今回発表されたガジェットは、Windows Liveガジェットと、サイドバー・ガジェットの2種類。Windows LiveガジェットがWindows XP、Vistaを問わずIE 6.0以上のブラウザ上で動作し、ネット上のサービスAPIを使うのに対し、サイドバー・ガジェットは、サイドバーそのものがWebサーバーのような役割を果たしており、APIもOSの機能を利用する。ともにミニアプリケーションという位置付けだが、サイドバー・ガジェットはWindows Vistaでしか動作しない。双方に互換性はないため、2種類用意する手間が課題だという。
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Windows Live Galleryでは、会員登録などは不要。ダウンロードボタンを押すだけでダウンロードできる。ダウンロードしたガジェットのファイルをダブルクリックするだけでインストールできる
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Windows Vistaにガジェットを導入した様子。いったん導入したガジェットは、サイドバーから削除しても、ドラッグ&ドロップで簡単に戻せる
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● Webサイトが制作できれば、ガジェットも作れる
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マイクロソフト株式会社 オンラインサービス事業部シニアマネージャ 安藤浩二氏
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ガジェット制作に必要なのは、HTML、JavaScript、CSS、Flash、Ajaxなど、「いわゆるWebサイト制作ではおなじみの技術」(安藤氏)だ。このため開発の敷居が非常に低く、コストも安く済むという。
すでにWindows Live Galleryを通じてダウンロード可能なサイドバー・ガジェットは、全世界で4,000件近くあり、国内向けも今回のリリースで220件ほどに増加した。個人の利用スタイルによって好みのガジェットが異なるため、数と同じく多様性も重要だが、現状のガジェット開発は個人に依存しているところが大きいという。
「従来は個人ベースで開発し、Windows Live Galleryにアップロードして、シェアしていただくというスタイルでやってきました。今後ガジェットをさらに活性化していくためには、優れたガジェットを表彰する場なども設けていく必要があるでしょう。また、ガジェットの認知度向上施策の積極的な展開として、店頭でガジェットそのものを訴求するようなプランや、開発支援も積極的に行なっていくつもりです。さらに、自分に合ったガジェットをが探しやすくするサービスも検討していきます。」(安藤氏)
テキスト、静止画、Flash動画など、ほとんどのコンテンツが扱え、デスクトップというもっとも目にする頻度が高い。メールマガジンと組み合わせて新着を知らせるなど、最新情報をユーザーにダイレクトに届けるチャネルとしても利用できる。そうした点で、ガジェットは企業から見ると非常に美味しい広報メディアでもある。そうしたソリューション展開においては、ある仕組みが大事だという。
「ガジェットを推進していく上で一番重要なのは、デベロッパー、広告主、ユーザー、他のコンテンツパートナーを結びつけることです。15社17種類のガジェットが提供できたのは、こうした関係各社を結びつける仕組みがうまく作用した結果だと考えています。こうした仕組みを我々は『エコシステム』と呼んでいますが、これは今後さらに拡大していける可能性があると考えています。」(安藤氏)
Webコンテンツを提供している企業であれば、既存リソースも活用して、Webコンテンツとほとんど変わらない人的・金銭的コストで簡単にガジェット制作が行なえる。安藤氏は、「ガジェットの認知度が上がり、多くのガジェットが提供されるようになれば、Windows Vistaのキラーアプリケーションになる可能性もある」とガジェットをプラットフォーム的に広めることへの意欲を述べた。
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「凝ったガジェット制作には高機能な画像編集ソフトなども必要になってきますが、基本的にソフトはこれだけで制作できます」(安藤氏)
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「Web制作の技術があれば、ガジェットは作れます」(安藤氏)
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● 「ガジェット浸透の手ごたえを感じた」サムライワークス矢追氏
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サムライワークス株式会社 取締役 兼 COO 矢追龍之介氏
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今回リリースされた新ガジェット15社のうち、7社分の制作に携わったサムライワークスは、2004年の設立以来、数多くのガジェットやサイドバーを制作してきた。
矢追氏は、Windows VistaとWindows Liveガジェットの良さは、ユーザーにとっても制作者にとっても敷居が低くなった点だと指摘する。また、Liveガジェットの認知度が上がってきたことで、企業側からガジェットを活用したビジネス展開の相談を受ける機会も急増しているという。「認知度が上がったことでクライアントの見方も変わり、マーケットの広がりが生まれたと感じています。」(矢追氏)
今回サムライワークスがガジェット開発を担当したのは、大塚製薬、佐川急便、サンリオ、ANA、ニッセン、JAL、ニューバランスジャパンの7社。サンリオは看板キャラクターのキティちゃん、JALは操縦席から見える風景が入れ替わる世界時計など、それぞれの企業の持ち味や特徴を活かしたガジェットとなっている。
矢追氏によれば、すでにWebサイトなどで独自のコンテンツを提供している場合は、ガジェットへの転用も比較的容易だという。今回提供開始された中では、ニッセンの占いコンテンツは自社サイトですでに提供されていたものをガジェット化したものだ。
「Webサイトと基本とする技術が同じなので、JavaScriptなども、既存のものがかなり活用できます。そういう意味で、既存コンテンツをお持ちであれば、ガジェットの制作コストも下げられるでしょう。」(矢追氏)
サイドバーに企業のガジェットを常駐させるということは、ユーザーのデスクトップに自社専用のPRエリアが常に用意されるということを意味する。企業にとっては、ブランドイメージをダイレクトに訴求することが可能になるわけだ。
ただし、いったんインストールされた後は、「いかに長期間利用してもらうかというのもテーマ」(矢追氏)になる。
そうした意味で、ガジェットを制作する側はついビジュアル的な訴求力を求めて、サイドバーで縦のサイズが大きなものを作りがちだが、「1社のガジェットでサイドバーのスペースを大きく占有するといった使い方はユーザーには敬遠されやすいので注意が必要です。大きなものは他のものと入れ替えられやすい。コンパクトで、見栄えがよく、使い勝手のよいものが望まれます」(矢追氏)という。
「今回、キティちゃんのカレンダーに新着情報があることを知らせる機能を付けています。ある企業のガジェットを入れてくださるユーザーさんは基本的にその企業に好印象を持っている顧客、あるいは潜在的顧客であると考えて良いでしょう。情報提供機能などを付加することは、継続的にユーザーにガジェットを使っていただくことにもつながります。今後はRSS配信など、付帯的なサービスも工夫していくことで、ガジェット市場の活性化にもつながっていくのではないでしょうか。」(矢追氏)
関連情報
■URL
マイクロソフトオフィシャルガジェット特集(MSN)
http://feature.jp.msn.com/gadget/
Windows Live Gallery
http://gallery.live.com/
ニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3288
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( すずまり )
2007/12/07 15:20
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