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間もなく始まる“オプトイン規制”、改正迷惑メール法が12月に施行

IAjapan迷惑メール対策委員長の木村孝氏に聞く

 迷惑メールは、インターネットにとって非常に大きな問題となっている。その対策の1つとして、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)」と「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」が改正され、12月より施行される。目玉は、ユーザーの事前同意なく広告・宣伝メール(特定電子メール)を送信することを禁ずる“オプトイン規制”を導入したことだ。

 今回の法改正の背景やオプトイン規制の概要について、インターネット協会(IAjapan)で迷惑メール対策委員長を務める木村孝氏(ニフティ経営補佐室担当部長)に聞いた。


インターネット協会で迷惑メール対策委員長を務める木村孝氏(ニフティ経営補佐室担当部長)
――特定電子メールのオプトイン規制が始まります。今回の法改正は従来のオプトアウトから180度の転換となりますが、なぜそうなったのでしょうか。

木村氏:オプトアウトからオプトインに変更した理由ですが、おそらく、オプトアウトを6年間やってきて十分な効果が上がらなかったことや、「オプトアウトの矛盾」と呼ばれる、拒否通知をすることじたいがメールアドレスの収集に使われてしまう現実などを考えた上での判断だと思われます。迷惑メールの題名に、実態としてほとんど「未承諾広告※」と書かれていないことが一例ですが、規制が事実上、有名無実化し、実体に合わなくなってきたということもあるでしょう。真っ当な事業者のほとんどはすでにオプトインに近い運用を始めていたということも法改正を後押ししたと思います。

 また、迷惑メール対策を進めるために海外の政府機関と送信者摘発などの連携を強化する際に、諸外国がオプトインなのに、日本がオプトアウトという形で前提が違うと好ましくないという面もあります。米国は別として、EUや中国、韓国などほとんどの国はオプトインですので、これを機会にオプトインに移行するというのは合理的です。

――法改正で、誰が、どのような影響を受けるのでしょうか。

木村氏:広告・宣伝のメールを送る事業者すべてに影響します。個人でも、事業を営む場合は対象となります。

 おそらく、ちゃんとやってきた事業者は大きな影響を受けないと思われますが、それでも、今後はメールを送るためのメールアドレスのリストをどのように収集したかを証明できる記録の保存は必須です。法的には、法律の施行前に集めたメールアドレスは問題なく、法律の施行後に集めたメールアドレスが対象となります。オプトインだと、メールを受け取ることについて本人の承諾もしくは請求があったことを示せないといけませんので、その記録をするという部分の負荷が重いかもしれません。

 オプトイン規制は、メールの受け手が苦情を上げるための法律ではありませんが、苦情の声が大きければ省庁が調査に入りますので、疑われたくなかったら、やはり承諾・請求の記録を保存することが重要になります。


――承諾・請求の記録保存というのはどのようにすればいいのでしょうか。

木村氏:そこは省庁が出すガイドラインを見てもらいたいのですが、極端に厳しいものではありません。ただし、省庁ばかりでなく、実務上は一般の人や顧客から確認を求められることも考えて記録を作る方がよいかもしれません。

 少し話がそれますが、広告主がメール配信業者を使って広告・宣伝メールを出す場合を考えてみましょう。その場合には、メールの配信先を広告主が用意するケースと、メール配信業者が持っている配信先を使うケースが思い浮かびます。広告・宣伝メールを出したことに対して苦情が出た際に、調査をする側としてはオプトインの事実を確認するために双方を調べることになります。広告主にしてみれば、ちゃんとしたメール配信業者を選ばないと自身が調査されることになるため、メール配信業者に対してオプトインの事実を確認するケースが増えると想像されます。

 補足になりますが、個別の種類の広告・宣伝メールについて承諾・同意を取るのではなく、包括して行うことも不可能ではありませんが、あまりよくないかもしれません。受信者が承諾・同意について誤解の生じないものである必要があります。そうした点も、今後、評価対象になってくるかもしれません。

 すでにいろいろなところで記事になっているのでご存知の方も多いかと思いますが、総務省の特定電子メール法は主にメール送信者に影響し、経済産業省の特定商取引法はメール送信を依頼した人(広告主)に影響します。それぞれガイドラインなどが公表されていますので、以下に現時点での参照先を示します。


・特定電子メール法のガイドライン(案)
 http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080916_2.html
・特定電子メール法関連
 http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/d_syohi/m_mail.html

・特定商取引法のガイドライン
 http://www.meti.go.jp/press/20081001002/20081001002.html
・特定商取引法の条文
 http://www.no-trouble.jp/search/joubun/index.html
・特定商取引法の解説パンフレット(PDF、迷惑メール関連は24ページ以降)
 http://www.no-trouble.jp/search/joubun/pdf/kaisei_point_080623.pdf


 また、IAjapanが公開しているポータルサイトもあります。私どもとしては、このサイトを使ってこれからも情報を提供していきます。

 それと間近ですみませんが、11月5日には、IAjapanの迷惑メール対策委員会が行う「迷惑メール対策カンファレンス」もあります。省庁の担当官が法改正について解説を行うセッションもありますし、質問票によるQ&Aなどにより(省庁の担当官に)直接質問ができる機会も設けますので、情報収集には非常によい機会になると思います。


・有害情報対策ポータルサイト -迷惑メール対策編-
 http://www.iajapan.org/anti_spam/portal/
・IAjapan 第6回 迷惑メール対策カンファレンス
 http://www.iajapan.org/anti_spam/event/2008/conf1105/


――これで迷惑メールは本当に減るのでしょうか。

木村氏:正直なところ、法改正だけで迷惑メールを減らすことは難しいと思います。国内の事業者は対象にできても、海外発、外国語の迷惑メールは相変わらず増加していますから。もし、減る可能性があるとすれば、今回の法改正によって、ISPでもメールの受信拒否ができるようになることによる効果の方がはるかに大きいはずです。

 従来は、広く一般にインターネット接続サービスを提供する事業者は、エンドユーザーから依頼がない限りは、たとえどのようなメールであれ受け取らなくてはいけませんでした。しかし今後は、例えばSPFやDKIMといった認証技術などを使って、送信元を詐称したメールに関しては、一定の条件の下ではその受信を拒否できるようになります。結果、ユーザーに届く迷惑メールも減ることになります。

 これは今回、特定電子メール法第11条で認められました。ISPとしては受信者の迷惑メールフィルタリングサービスの設定いかんにかかわらず、この種のメールについて一定の条件の下ですが、受信拒否が可能になるので設備的負担を軽減できるのではないでしょうか

――ありがとうございました。


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( 聞き手:遠山 孝 )
2008/10/29 18:10

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