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自分で気付かせることが大事、中学校教員に聞くケータイ問題
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【 2009/03/19 】
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【 2009/02/05 】
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【 2009/01/22 】
学校・教員用のネットいじめに関する対応マニュアルが必要な理由
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【 2008/12/26 】
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【 2008/12/11 】
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【 2008/10/24 】
ケータイ小説は新時代の“源氏物語”
~「魔法のiらんど」に聞く<後編>
[11:18]
【 2008/10/23 】
子どもはわからないから問題を起こしているだけ
~「魔法のiらんど」に聞く<前編>
[16:19]
10代のネット利用を追う

若者の「KY式日本語」には、ネットとケータイの影響

大修館書店に聞く

 “ケータイ世代”である10代のインターネット利用実態に焦点を当て、「短期集中連載」として5回にわたってお届けした本連載を今後も継続していくこととなりました。最近話題になっている携帯フィルタリング原則化や、情報リテラシー/情報モラル教育のあり方といったテーマのほか、10代特有のネット文化などのやわらかい話題も含めて逐次レポートしてまいります。



ローマ字略語が多い若者言葉

「KY式日本語 ローマ字略語がなぜ流行るのか」(北原保雄編著、「もっと明鏡」委員会編集、新書判・144ページ、714円)
 「明鏡国語辞典」「ジーニアス英和辞典」で知られる大修館書店から、「KY式日本語」というユニークな本が出版された。今時の10代の若者言葉のうち、ローマ字略語ばかりを集めた本だ。ローマ字略語とは、日本語をローマ字書きにした時に句や語の最初に来るローマ字をとってつなげた語のこと。「Kuuki Yomenai」(空気読めない)の頭文字をとって「KY」というように作る。ちなみに「KY」とは、昨年突如辞任した安倍晋三内閣が「KY内閣」と呼ばれたことでも話題になった。

 これらの用語が生まれる背景には、ネットやケータイの影響が大きいという。ネットやケータイは10代の若者の言語にどのような影響を与えているのか? 大修館書店販売部宣伝グループの北村尚子氏に、10代の言語感覚について聞いた。

 辞書に載っていない言葉と意味を書いて送ってください──。普段使っている言葉の意味を改めて考える機会にしてほしいと、国語辞典の販促キャンペーン「みんなで作ろう国語辞典!『もっと明鏡』キャンペーン」が行なわれて今回で2回目となる。前回の第1回は、小学生から大人まで11万件以上の応募があり、集まったものは「みんなで国語辞典!」という本になった。第2回となる今回は、国語辞典の主要マーケットである中高校生を中心とした学生に対象を絞ったところ、44,000件が集まった。

 「きちんと自分なりに意味を書いてくれているユニークなものには賞を差し上げたのですが、そこに収まらないものがたくさん出てきたのです。前回と違い、今回、特別に多かったのがローマ字略語です。ローマ字略語を推奨したいわけではなく、現象として面白いし、社会背景として流行る理由があるのではないかと考えて、ローマ字略語だけを集めた『KY式日本語』を出版することにしたのです」(北村氏)。大人世代からの注目は高く、発売前に増刷がかかったそうだ。


インターネットとメール、ケータイによる影響

KY式日本語 主要単語集
 じつは“KY語”は新しいものではなく、「MMK」(もててもてて困る)などは、戦前、旧日本海軍で使われていたものと同じという興味深いデータもある。「日本語はもともと頭文字をとって略すことが多い言語。これまでも『NHK』(日本放送協会)、『YKK』(吉田工業株式会社)などローマ字略語の企業名やサービス名などはありましたが、一般会話文をローマ字略語にするのが新しい」(北村氏)。

 このような新しいKY語が氾濫するようになった背景には、インターネットやメール、ケータイの影響が大きいという。日本語をローマ字で入力することが多くなったため、KY語が生まれる背景になったと考えられる。

 また、ケータイメールには通信料がかかり、多くの文字を使えばそれだけ料金がかかる。しかし、略語を使えばたくさんの文字を打たなくても済むようになるため、略語が流行る要因になっているとも考えられる。同時に、ケータイはディスプレイが狭いが、略語なら少ない文字でも事足りるというメリットもある。

 ローマ字略語のほかにも、寄せられた言葉には「W、(笑)、ワラ」「神」「ググる」などインターネットで多用される語も多く、「コムる」というウィルコム関係の言葉も見られ、10代のインターネットやケータイへの関心の高さが感じられる。10代にはネットやケータイ文化が深く浸透しており、それが言語にも影響を強く与えていると言えるだろう。


婉曲、優越感、仲間意識にもつながる

KY式日本語 基本単語帳
 KY語にはさまざまな表現効果があるという。まず、言葉に出して言いにくいことを遠回しに表現できる。「DB」(デブ)、「HD」(鼻毛出てる)と言えば、明るく軽く言える上に、言われた側も周囲にはそれと気づかれずに済むのだ。

 かつて、元の文字とは意味や字形の異なるカタカナや記号などを組み合わせ、ひらがなやカタカナなどの字形に見立てる、通称“ギャル文字”が流行したことがある。これと同じで、女子高生たちは他人がわからないのを面白がっている様子だという。業界用語的に隠語として使うことで、優越感を感じたり、仲間意識が高まる効果もあるというわけだ。

 また、「アルファベット化すると格好いい、可愛いという感覚もある」(北村氏)。「PK」と言えば、「パンツ食い込む」も可愛く笑えるようになるというわけだ。一方で、「KY」が生まれたことで言葉がひとり歩きしてしまい、それまで気にしていなかったのに「KY」と言うようになった面もあるそうだ。


プリクラ女子とアキバ男子

 使用する言語には男女差が見られ、女子の方がませていて言語能力が発達している傾向にあるそうだ。例えば、「JK」(女子高生)といったローマ字略語以外にも、「仲仔」(仲のいい子)、「2コ1」(2人はいつも一緒)、「心友」(心の友)などの友達関係に関する言葉は女子の使う言葉だ。プリクラに書き込む時に使用し、「これらの略語は、スペースが小さいプリクラに書けるように生まれたのかもしれない」(北村氏)という。一方、ネット用語やオタク用語、バイクのマニアックな用語、アキバ語は男子が多く利用する。「ワラ」「アキバ」「ググる」などは、主に男子が使うものだ。

 新語に関しては地域差はあまりなく、広まっている言葉はどこでも広まっている。第1回の時は沖縄ブームの名残で方言が多く寄せられた。「辞書に載っていないけれど、おばあちゃんが使っている」という投稿もあったそうだ。


言葉の運用能力は落ちているが、感度は高い10代

大修館書店販売部宣伝グループの北村尚子氏
 北村氏は、現在の10代の言語能力について以下のように推察している。

 「学校の先生からは、若者は口語と文語の区別がつかず、他の世代に通用する言い方ができないと聞いており、運用能力が下がっているのは確かだと思います。しかしその一方で若者たちは、自分たちが言葉をうまく使えないことや、言葉が乱れていると言われていることもわかっています。自覚的に、大人になる前の今だから使えるとわかって(KY語を)使っている面もあります。」

 「言葉自体に関する感度は高くて、我々大人が同年代だった頃より気を遣って話している気がします。『微妙』『うざい』『痛い』『キモイ』など、関係性や評価を表わすことに関心が高く、意味もあれこれ書いてきていました。彼らは一所懸命会話を面白くして、ウケないと受け入れてもらえないと感じ、ハブられることを恐れています。」

 「子どもの言葉能力が落ちているのは、大人が原因だと思います。昔は祖父母や先生などと敬語で話す機会がありましたが、今はありません。友達同士の短いメールのやりとりが増えていることや、読書量が減って、ケータイ小説などの口語文に触れる機会が増えているのも原因でしょう。」

 インターネット、ケータイ、メールが10代の言語能力に与える影響は大きい。これからのネット時代、さらに新しい言語が生まれてくるのかもしれない。


関連情報

URL
  KY式日本語 ローマ字略語がなぜ流行るのか
  http://www.taishukan.co.jp/item/ky/index.html

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2008/02/21 11:34
高橋暁子(たかはし あきこ)
小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。

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