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10代のネット利用を追う |
全国webカウンセリング協議会に聞く、ネットいじめへの対処法(1)
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学校裏サイトの数は、文科省発表の数十倍
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全国webカウンセリング協議会が始めた「ネットいじめ対応アドバイザー資格認定制度」をご存じだろうか。これが生まれた背景には、ネットいじめや学校裏サイト、各種ネットトラブルなどの増加がある。
ネットいじめ、チェーンメール、学校裏サイトなどについて、同協議会の理事長である安川雅史氏に聞いていく。ケータイがわからない先生たちができることは何だろうか。
● ネットいじめは、メールと掲示板
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全国webカウンセリング協議会・理事長の安川雅史氏
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「パケット通信が定額制になったので、親は子どもがケータイでどういう使い方をしているのかについて無関心になっています」と安川氏は言う。子どもたちは、ご飯を食べる時はもちろん、お風呂の時もビニールにくるんで持ち込み、勉強中もつなぎっぱなしだという。子どもたちにとってケータイは手放せないものであり、「右手でご飯を食べながら、左手でケータイを打っている」ほど身体の一部となっているのだ。
ネットいじめには大きく分けて2パターンある。掲示板に書き込まれるものと、メールでのいじめだ。学校裏サイト、プロフ、メールなどでのいじめは、ケータイの普及につれて増えてきたという。
● メールアドレスを偽装した「なりすましメール」
メールでのいじめはどのように行なわれるのか。安川氏によると、「メールでのいじめは、なりすましが多い。とある無料サービスを使うと、誰でも他人のメールアドレスを騙ることができるのです」。
PC向けにはそのようなサービスがあると聞くが、携帯電話向けのそれはどんなものなのだろうか。筆者も実際にそのサービスを試してみた。安川氏の携帯電話をお借りしてとあるWebサイトに接続し、送信元と宛先のらんに筆者のアドレスを入れて送る。すると、すぐに筆者の携帯電話に筆者のアドレスからメールが送られてきた。送信元部分に他人のメールアドレスを入れれば、簡単になりすませるというわけだ。
「気に食わない子にクラス全員のメールアドレスを偽装して嫌がらせメールを送り、不登校にさせた例があります。返信してもアドレスを書き込まれた人のところに行くので、ぱっと見は全くわからず、偽装がばれるまでに時間がかかります。元メールを送った送らないでケンカになることもあります。また、『お前は1週間以内に死ぬ』と、死体掲示板など気分が悪くなるサイトへのリンクが付いたメールが、自分のメールアドレスから届いたという例もあります」。
● チェーンメールはサブアドレスを利用
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「全国webカウンセリング協議会」のサイト
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チェーンメールの例もある。チェーンメールは確かにいいものではないが、「テレビ番組の企画で、このメールがどこまで届くかを試しているので止めないで回してほしい」(ただし、実際はそのような企画はなく架空のもの)などという他愛もないものが多かったイメージがある。しかし、最近は悪質なものが出回るようになってきたという。
例えば、画像を添付して流すタイプのものがそうだ。「いじめられっ子がトイレに行くと他の子たちもついて行き、こっそり携帯で下半身の写真を撮るのです。みんなで行くのは、シャッター音を消すため。女子の場合は、個室の上から盗撮します。そして、その画像を添付して『○○のクソをしているところの画像。5人にまわせ。まわさないとお前の盗撮画像も流す』などという文面で送るのです」。おまけに、誰が送り始めたのかわからないように、サブアドレスから送るという周到さだという。
ところで、サブアドレスの存在はご存じだろうか。PCと同様に、ケータイにもフリーアドレスはたくさんある。それがサブアドレスとして利用されているわけだ。安川氏によると、「今の子はアドレスを30個くらい持っていて、サブアドレスは主に出会い系に登録する場合などに使っている」という。このサブアドレスが、チェーンメールや嫌がらせメールを送る際に“活躍”するのだ。
● なりすましメール対策の設定とは
では、なりすましメールには対策はないのだろうか。安川氏によると、「拒否できる設定があります。例えばNTTドコモなら、『iモードメニューボタン→iMenu→料金&申込・設定→iモード設定』で受信拒否ができます。auやソフトバンクモバイルでも同様に簡単な設定で可能です」。買った時にはどの携帯も受信できるようになっているので、必ず設定する必要がある。みんなが受信拒否設定にすれば、自分も受け取らずに済むし、嫌なメールが誰にも行かなくなるというわけだ。
ちなみに、送信元を偽ったなりすましメールの拒否以外に、「URL付きメールの受信拒否設定」なども可能だ。サブアドレスとして使われるフリーアドレスサービスは無料のため、広告のURLが付いている。そこで、URL付きメールを受信拒否すれば、自動的にサブアドレスから送られてくるような匿名メールが拒否できるというわけだ。「これらの設定は、先生が100人いても1人知っていればいいくらいのもの。携帯電話の利用説明書にも載っていません。もっと広めていくべきだと思う」。
スパムメールもこの方法で送っている場合がある。ちなみに、スパムメールが来たら、そのメールに載っている配信拒否ボタンや配信停止ボタンを押してはいけない。真面目な人ほどクリックしてしまうが、それによって実在のメールアドレスということがスパム業者に知れ渡ってしまい、広告メールが倍増してしまうのだ。
● チェーンメールは「転送先アドレス」に転送を
チェーンメールが広がる理由についても聞いてみた。「自分で止めたら、今度は自分の画像が広まってしまうかもしれないと思うからでしょう。どこで止まったかがわかる機能などないのに、教えてあげられる人がいないことが問題。教えないと子どもは不安で転送してしまいます」。
「転送しないと悪いことが起きるかも」という漠然とした不安は理解できる。そのような強迫観念に駆られている子どものために、チェーンメールの転送先が用意されている。どうしても気になるという子どもがいたら、転送先アドレスを教えてあげてはどうだろう。送っても責任を持って削除してくれ、同時に流行っているチェーンメール情報を集めて公開しているそうだ。日本データ通信協会のほか、全国webカウンセリング協議会でも転送先を用意している。
● “学校裏サイト”の本当の数は?
“学校裏サイト”などの掲示板への書き込みによるいじめも多い。学校裏サイトは、「高校 スレッド」「高校 掲示板」などでand検索すると山ほど見つかる。「文部科学省は、中高生の携帯電話の利用状況に関する実態調査の中間報告で、学校裏サイトは3万8,000件と発表しました。しかし、高校で探しただけでケータイで8万件、パソコンで数百万件出るので、本当はもっとあるはず」と安川氏は語る。
学校裏サイトには、全国版がある。例えば中高生・大学受験の掲示板として知られている「ミルクカフェ」などがそうだ。「全校で30人規模の学校も登録されているので、ほとんどすべての学校のスレッドがあると思います。全国版学校裏サイトは、1つでほとんどの学校をカバーしているのです。それを1つと数えるか、1校ずつを数えるかで数はまったく違ってきます。スレッドごとで数えたら、当然3万8,000件ではきかないでしょう」。
● 学校裏サイトにおける書き込みの削除依頼法
学校裏サイトで問題となるのは、個人情報や誹謗中傷などが掲載されてしまった場合だ。被害が大きくなる前に削除したいところだが、どうしたらいいのか。
まず、上記のような全国版で規模が大きいところは、概してきちんとした団体などで運営されているので、削除依頼は受け付けてくれるそうだ。ただ、受け付けてはいるものの、数が多すぎて管理しきれないというのが実態だという。
全国版以外にも、中高生が個人や友人間などで作ってしまうタイプの学校裏サイトがある。そういうサイトは書き込みがすぐに削除されないことが多いため、削除してほしい時は管理人ではなくプロバイダーに直接依頼をするといいという。
削除の際にいちばん大事なのは、依頼の方法だ。削除の方法がわからずに掲示板に直接書いてしまう先生が多いが、これはトラブルの原因となってしまう。個人を特定されて写真を貼られる、中傷される、家族も含めた脅迫を受けることなどがあるそうだ。
「絶対に掲示板に直接書き込んではいけません」と安川氏はアドバイスする。「まずは管理人にメールをすべき。それでもダメならプロバイダーに連絡をすること。中でも大切なのが、削除依頼にはその箇所がわかるようにURLを入れること。書き込みは膨大で、URLを書かないと特定できず、削除も不可能です。その際、どういう面で不利益になっているのかも書いておくといいでしょう」。
● 「ケータイがわからない」先生のできること
学校の先生はどうしたらいいのか、安川氏にアドバイスをいただいた。「まず、学校裏サイトを探す場合は、学校のパソコンでは見られません。携帯電話からしか見られないサイトも多いので、携帯電話から見るべきです。携帯電話が1台あるとパソコンも携帯もどちらの裏サイトも見られるようになります」。
生徒から学校裏サイトなどの書き込みに関する相談があった時は、その場で相談に乗ってあげるのがよい。調べ方は、その生徒の名前やあだ名、電話番号やアドレスで検索するのだ。中には伏せ字を使うこともあるので、「山田高校」ならば「山●高校」や「Y高」というように、愛称や略称でも検索してみるといいかもしれない。
ひどい書き込みに対して、「放っておいたら徐々に忘れられるから大丈夫」と済まそうとする先生もいるが、放置してひどい目にあった子どもの例を聞いた。就職の内定をもらった会社から突然取り消しの電話をもらったというのだ。もしやと思った本人が、自分の名前をネットで検索したところ、「全部カンニングでテストをクリアしている」などとひどい作り話の書き込みを見つけたという。書き込みを削除したら、もう内定取り消しなどの目に遭うことはなくなったそうだ。
もちろん企業に確かめることはできないので、これが原因かはわからないが、書き込みを放置するのは危険だ。インターネットは、誰が見ているかわからない。「ひどいことをいろいろ書かれていると、『何かあるから書かれているのではないか』と思ってしまうのが人情。最近は企業もネットで採用者について調べる時代。見た人は信じてしまうかもしれないので、間違った情報や不利益なことは削除すべき」と安川氏は言う。
そうは言っても、先生たちが現役の中高生についていくのは厳しいものがあるだろう。そんな時はどうしたらいいのか。「生徒会を巻き込んで力を借りればいいのです。生徒会なら生徒の目線で見ることができるし、情報も入ってきます。例えば、匿名の目安箱を用意すれば、先生に相談できない子たちの悩み相談が集まってきます」。実際に山形の学校で生徒会に動いてもらったところ、学校裏サイトを作る子が減るなどの効果が見られたという。
次回はプロフや荒らし依頼サイトの現状から、保護者がどんな対応ができるのかまでを聞く。
関連情報
■URL
全国webカウンセリング協議会
http://www.web-mind.jp/
チェーンメール転送先アドレス一覧(日本データ通信協会「迷惑メール相談センター」)
http://www.dekyo.or.jp/soudan/chain/tensou.html
■関連記事
・ 文部科学省が“学校裏サイト”の実態調査、半数に誹謗・中傷表現(2008/04/16)
2008/05/22 14:06
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高橋暁子(たかはし あきこ) 小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。 |
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