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10代のネット利用を追う

小学校でネットの約束事の授業〜ニフティの「情報モラル教育」


 ニフティは2008年6月より社会貢献活動の一環として、東京都品川区立の小学校にて「情報モラル教育」の授業を始めた。この授業は、品川区独自の教科「市民科」の一環として実施された。

 ニフティはなぜこのような活動を始めたのか。授業に込めた思いは何か。そして、受け入れた側の教育委員会や学校側の思いは? 品川区立台場小学校5年1組・2組合同で行われた授業を取材し、2回にわたってレポートする。まず今回は、授業の様子や子どもたちの反応などを紹介する。


クラス全員が「ネットを使ったことがある」

品川区立台場小学校5年1組・2組合同で行われた、ニフティの「情報モラル教育」の授業
 ニフティによる情報モラルの授業は、「インターネットを安全に使うために」というテーマで行われた。社員が講師となり、ニフティの社会貢献活動第1弾として実施されている。

 授業の冒頭、講師の先生がした「インターネットを使ったことのある人は?」という質問に、児童たちは全員手を挙げた。“全員”とは、わかってはいるつもりだったが改めて驚く。続いて「インターネットって何だと思う?」と質問されると、「メール」「検索」「携帯電話」「相手と通信をしたりする」と口々に回答。ちなみに講師の先生の説明によると、小学生でネットを利用している割合は平均で65〜69%くらいだという。

 「便利で楽しいインターネットだけれど、悪い人も使っており、インターネットを使った犯罪は増えていて、危険も増している」という前置きがあり、いよいよ授業は本題に入っていった。


事例1:モデル募集偽サイトに潜む危険

講師を務めたニフティコーポレート本部社会活動推進室社会貢献チームの大空真由美氏。何がいけなかったのか、どうすればよかったのかについて児童が挙げた意見を書き出した
 「インターネット事件簿1」として、本当にあったことだという「N子さんのモデル応募」の事例が紹介された。子どもたちは、何がいけなかったのか、どうしたらよかったのかを考えながら話を聞いた。

――N子さんは将来の夢が歌手という小学校6年生。ある日、パソコンを使って検索をしていると、「モデル募集、スターへの第一歩!」とある。詳細を読むと、「顔写真を送ってください。お友達を紹介してくれたらプレゼントをあげます。写真審査に合格した人にはご連絡します」と書いてあった。サイトには合格した人の写真も載っていたため、本当だと判断したN子さんは、早速応募することにした。その際、同じ夢を持つ親友のY美さんの分も応募することにした。名前、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、友達の名前を記入して、友達と撮った顔写真を送った。

 数日後メールが来た。「合格しました。お友達も合格しました。明日、駅前に来てください」という文面だ。喜んだN子さんは、Y美さんに一緒に行こうと誘い、「みんなには内緒にしてほしいの」と頼み込んだ。翌日、2人が会いに行くと、芸能プロダクションの女性がいた。喫茶店でケーキを食べながら撮影の説明を受け、車で移動することになった。不安になった2人は逃げようと店を出たが、そこにはワゴン車が止まっていた。男の人が2人降りてきて、彼女たちは車に連れ込まれさらわれてしまった――。

 講師が「怖いなと思った人」と聞くと、児童全員が手を挙げた。何が悪かったのかについては、「親に相談しないで勝手に送ったこと」「自分と友達の個人情報を送ってしまった」「誰にも言わないで2人だけで行ったこと」などの意見が出た。どうすればよかったのかについては、「警察の人に言えばよかった」「お店の店員さんなど大人の人に助けを求めればよかった」「防犯ブザーを持っていればよかった」など、具体的な意見が多数出てきた。


事例2:ケータイ詐欺サイトに隠された罠

メインの講師を務めたニフティサービスビジネス事業本部の細身友章氏。普段はシステム開発を担当している技術者だ
 続いて2つめの事例が紹介された。この事例では、パソコンで実際に情報を入力できる、デモ用の携帯電話画面が用意されている。名前や学校名などは、代表となった児童が入力したものが使われたため、メールが非常にリアルに感じられた。

――ある日携帯電話を使っていると、メールを受信。「ハッピープレゼント」のメールで、ゲームでプレゼントを当てようというものだ。クリックしてゲームソフトを選び、名前、電話番号、小学校名を入力する。音楽が流れてスロットが回るが、結果は「残念」。2回目もトライするが、やはり結果はダメだった。

 3日後、メールが来た。「○○小学校△△様へ。ハッピーゲーム利用料をお支払いください。ゲーム利用料は2回で1万円になります。1週間以内に振り込まない場合、学校や自宅に連絡します」とある。どうしようと思ったけれどそのままにしていると、電話が鳴った。電話に出ると、「早く金を払えよ。学校まで取りに行くぞ」という男性の声が響いてきた――。

 男の声で電話がかかってくるところでは、実際に教室に大人の男性の声が流れたため、児童たちは震え上がっていた。

 この事例で悪かったところについて、児童からは「個人情報を教えた」「知らない人からのメールを開いた」などが挙がった。どうすればよかったのかについては、「応募しなければよかった」「どういうサイトかを確かめてからゲームをすればよかった」「知らない人から来たメールは開かなければよかった」などの意見が出た。

 講師の先生からは、「詐欺サイトは嘘の情報で個人情報を入力させて、お金を騙し取ります。『お金を振り込め』というメールや電話が来たら、払わないで親や先生など信頼できる大人に相談しましょう。1回払うと、“払う人”と思われて毎日電話がかかってくるので気を付けましょう」というアドバイスがあった。


お茶を煎れる時にも、ネットにも必要な“フィルター”

 このような事例を通じて、パソコンにも携帯電話にも危険があることがわかった児童たち。では、どうすればいいのだろうか?

 「パソコンや携帯電話にフィルターをかけるといいです。フィルターは知ってますか。お茶を煎れる時には茶葉にお湯を入れて煎れますが、その時葉っぱが湯飲みに入らないようにするのがフィルターです。いい情報と悪い情報のうち、悪い情報をはじくものです。」

 では、フィルターをかけたら安全なのだろうか。安全と思うかという講師の先生の質問に対しては、児童からは1人しか手が挙がらなかった。「フィルターをかけても入ってきてしまう悪い情報があります。見分けるのが難しいので、いいのか悪いのかを見極める力を付けないといけません」。


インターネットを使うときの約束事

 その後、「インターネットにある情報はすべて正しく安全とは限らない」という説明があり、インターネットを使うときの約束事が説明された。約束事とは、「自分や友達の個人情報、名前や住所、顔写真などは無闇に人に教えないこと」「困ったことがあったらすぐにおうちの人に相談すること」「インターネットを使う時間や使い方などについて、おうちの人と約束事を決めること」「フィルターをかけてインターネットを使うこと」というものだ。

 授業の最後、「今日の授業でネットを使う自信ができた人」という質問に対しては、半数くらいの手が挙がった。手が挙がらなかった子たちに自信がない理由を聞くと、「いい情報と悪い情報の区別がわからないから」という。これについては、「大人の人に相談すること」というアドバイスがあった。

 授業の終了後、数名の児童にインタビューしてみたところ、パソコンや携帯電話を持っている子はたくさんいたが、身近な友人間でネットでのトラブルは聞いたことはないそうだ。メールは友達とするという子がいた程度で、Webサイトは「Yahoo!きっず」程度であまり見ないということだった。小学生ではネットを利用してはいるものの、使いこなすまで至っている子どもは少ないというところか。


小学校でのネット活用状況、子どもには十分な技術的知識

品川区立台場小学校の松本清介校長
 ニフティによる授業を取り入れるかどうかは、学校側の判断に委ねられている。しかし、情報モラルのカリキュラムは用意されているため、ニフティの授業でなくとも同様の授業は必ず実施しているという。品川区では、情報モラルの授業は小学校5、6年と中学1年生で3、4時間ずつ行っている。

 台場小学校の松本清介校長は、学校でのパソコンの活用状況についてこう説明する。「小学校では、多くの授業でネットを活用しており、主に調べ学習などで利用することが多い。例えば移動教室で行く場所を調べてみんなに紹介するなどの場面で使っています。子どもたちは、技術的な知識は低学年のころから授業の中で学んできており、使いたいという気持ちもあるし、十分に使える状態です。携帯電話はまだ授業の中では扱っていませんが、保護者への啓発活動はしていきたいと考えています」。ちなみに中学校では、技術家庭の時間に安全なネット利用法などを教えるという。

 小学校ではネット絡みのトラブルはどのくらい起きているのだろうか。「多少はあるようです。ある小学校では、友達の携帯電話を借りて誹謗中傷したというトラブルがありました。小学校の段階では子どものネット利用は親が責任を持つべきです。最近の保護者は、仕事など自分のことで精一杯で子どものことが疎かになりがち。もっと子どもに関わって、どんな使い方をしているのかを見てほしいですね」。

 子どもたちは、今回のニフティの授業も楽しみにしていたという。「ただ、今日の授業だけでは実際に行動に移せないし、実感して怖いとわかることこそが日常化につながると思います。ニフティの皆さんに疑似体験コンテンツを作っていただき、子どもたちが授業の中で実際にパソコンを使って操作をする時間を取る予定です」。

 次回は、ニフティによる授業の導入を決めた品川区教育委員会と、提案したニフティの考えを聞く。


関連情報

URL
  ニフティ
  http://www.nifty.co.jp/
  品川区立台場小学校
  http://www1.cts.ne.jp/~daiba/

関連記事
ニフティ、小学校で「情報モラル教育」の授業(2008/06/05)


2008/09/04 13:07
高橋暁子(たかはし あきこ)
小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。

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