ASUSで今スグはじめる快適Wi-Fi生活
デスクトップPCで1300Mbpsの無線LANを堪能
PCI-E接続の11acアダプタASUS「PCE-AC68」
(2014/4/28 06:00)
ASUSからIEEE802.11ac対応無線LANアダプタ「PCE-AC68」が発売された。最大1300Mbpsに対応の無線LAN子機だが、PCI-Eスロット接続の製品となっており、デスクトップPCを最新の11acに対応させることができる。その実力を検証してみた。
待望の1300Mbps対応子機
80MHz幅、3ストリームMIMOで最大1300Mbps。IEEE802.11ac(以下11ac)のこのスペックが、もう少し、身近な存在になりそうだ。
ASUSは、最大1300Mbps対応の11acに準拠したPCI-Express x1(以下PCI-E)接続の無線LANアダプタの新製品「PCE-AC68」を発表した。
現状、11ac対応製品対応の無線LAN子機は、USB接続やPC内蔵で最大867Mbpsの2ストリームMIMO対応製品がいくつか存在するのみで、1300Mbps対応の製品は入手することができなかった。
もちろん、メディアブリッジモードやコンバーターモードなどを備えた無線LANルーターを2台利用すれば、フルスピードとなる1300Mbpsの通信を実現可能だ。しかし、コストや置き場所の問題で、必ずしも実用的とは言えない状況だった。
そんな中、登場したのが今回の「PCE-AC68」だ。残念ながら汎用的なUSB接続ではなく、PCI-Eスロット向けの製品となるため、利用環境は自作PCや企業向けのデスクトップPCに限られるが、ようやく11acの1300Mbpsの利用環境が広がったことになる。
最近では家庭向けのPCでPCI-Eスロットを搭載する製品は少なくなってきたが、企業などではデスクトップPCを利用するケースも少なくない。大量のデータ処理に高速なネットワークが必要だが、物理的な制約で有線LANを敷設することができないといったケースでは、この「PCE-AC68」が強い味方となりそうだ。
マグネット式のアンテナベースを採用
それでは、実際の製品をチェックしていこう。前述した通り、本製品はいわゆる拡張カードタイプの製品で、PC内部に拡張用として用意されているPCI-E(x1)スロットに接続して利用する。
全体を覆う赤いヒートシンクが印象的だが、本体はPCI-E x1接続ということもあり、比較的コンパクトな設計となっている。標準ではフルサイズ用のブラケットが装着されているが、ロープロファイル用のブラケットも同梱されており、省スペースタイプのPCにも装着可能となっている。
背面には、3ストリームMIMOの証となる3つのアンテナポートが用意されており、ここに付属の外付けアンテナを接続する。
と言っても、カードにアンテナを直接つなぐわけではなく、3本1組になった1mほどのケーブルをカード背面に接続し、その先に固定されているアンテナベース(台座)にアンテナを立てる方式となる。
アンテナは、同社製の無線LANルーター「RT-AC68U」で採用されているものと同一で、1本あたりの長さは16cmほどとかなり大きい。調整は難しいが、角度などを調節することで、電波の感度をコントロールできるのがメリットだ。
感心したのは、アンテナベースの構造だ。ベース底面に、そこそこ強力なマグネットが仕込まれており、スチール製のPCであればケースの上部や側面などに、ピタリと吸い付くように固定することができる。
このため、上部に立ててしまうとかなり目立つが、側面にベースを貼り付け、アンテナを折り曲げてやると、さほどスペースを占有せずに済む。もちろん、電波の受信感度を考えれば、なるべく見通しの良い場所に設置すべきだが、工夫次第では大きさを気にせず利用できるだろう。
通信情報を把握しやすいユーティリティ
拡張カードということで、PCケースを開けるのが若干億劫ではあるが、装着や初期セットアップはさほど難しくない。
今回はMini-ITXのマザーを搭載したPCを利用したため、本来、ビデオカードなどに利用するPCI-Express x16スロットを利用したが、カード自体はx1用となるため、余っているスロットに挿して、ブラケットをネジで固定。背面にアンテナケーブルを装着すれば作業は完了だ。
ドライバーとユーティリティは本体付属のCD-ROMに収録されているものを利用したが、同社のサポートページ(http://www.asus.com/jp/support/)をチェックして、最新版があれば、そちらをダウンロードして利用するといいだろう。
接続はインストールされたユーティリティを利用するのが簡単だ。一覧からアクセスポイントを指定して手動で接続することはもちろんのこと、WPSでの接続もサポートしており、手軽に接続することができる。
また、詳細設定で、ビームフォーミングやTurbo QAM(256QAM変調の有効化)をオン/オフすることも可能となっている。製品によっては、このような詳細な設定をデバイスマネージャのドライバの詳細設定画面からしか変更できない場合もあるので、ユーティリティから手軽に設定できるのはありがたいところだ。
このほか、通信状況も把握しやすい。アクセスポイントに接続すると、右上に帯域(20/40/80MHz)や通信速度(リンク速度)が表示されるうえ、状態画面で使用チャンネルや信号強度なども確認できるようになっている。
11acといっても常に80MHz幅で通信しているわけではなく、通信状況によって40MHz、20MHzと利用帯域が変更される場合があるので、今、どれくらいの帯域で、どれくらいのスピードで通信できているのかを確認できるのは便利だ。
余裕の600Mbps越え
気になるパフォーマンスだが、デスクトップ向け製品ということで、測定環境が限られたため、今回は同一フロアでのみ計測してみた。同社製の無線LANルーター「RT-AC68U」を利用し、iPerfの値を計測したのが以下のグラフだ。
親機 | 子機 | 周波数 | 速度(Mbps) |
RT-AC68U | PCE-AC68 | 5GHz | 662 |
2.4GHz | 295 |
- サーバー:Intel NUC DC3217IYE
- サーバー側:iperf -s、クライアント側:iperf -c [IP] -t10 -i1 -P3
- 2.4GHz帯は1Fでのみ40MHz幅で接続された
5GHz帯の11acの実効で662Mbpsを実現できているので、パフォーマンスとしては十分だ。もちろん、距離が離れたり、別の部屋となれば、これよりも速度は低くなるが、それでも11nよりは高い速度が期待できるだろう。
なお、2.4GHz帯は、11ac技術となるTurbo QAM(256QAM)の利用で最大600Mbpsに対応しており、実効速度でも300Mbps近い速度で通信できているが、今回のテストではアクセスポイント側で40MHz幅固定で接続されるように設定を変更して計測した。通常は周囲の混雑状況などから20MHz幅で接続されることが多いため、値はもう少し下がると考えた方がいいだろう。
以上、ASUSのPCI-E接続IEEE802.11ac対応無線LANアダプタ「PCE-AC68」を実際に試してみたが、デスクトップPCで、11acのフルスピード通信が可能になるのは大きなメリットと言えそうだ。
PCI-Eスロットが必要だが、2ストリーム対応しか存在しないUSBの無線LANアダプタに比べて高速な通信が可能になるうえ、アンテナ配置の自由度が高いので、PCの設置場所にさほど左右されずに済む。自作PCで高速な無線LAN環境を求めているユーザーはもちろんのこと、オフィスの無線化を検討している場合に、おすすめできる製品だ。