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第114回:Androidスマホのナビ性能を拡張するクレイドル、パイオニア「SPX-SC01」

「ドコモ ドライブネット」アプリと一緒に使ってみました


 パイオニア株式会社が4月に発売したAndroidスマートフォン向けナビクレイドル「SPX-SC01」は、車のダッシュボードにスマートフォンを固定するだけでなく、加速度センサーやジャイロセンサーなどカーナビと同様の自律航法センサーを搭載したクレイドルだ。スマートフォンにアプリをインストールするだけでなくハードウェア面でも拡張することで、スマートフォンを本格的なカーナビとして使うことを目的とした機器なのである。

 今回はこのSPX-SC01と、これに対応したAndroid用ナビアプリ「ドコモ ドライブネット」アプリを組み合わせたレビューをお届けしよう。使用したスマートフォンはNTTドコモの「Galaxy S」だ。

「SPX-SC01」に「Galaxy S」を装着した状態「ドコモ ドライブネット」アプリ

5Hz測位が可能なGPSを内蔵

 SPX-SC01にはスマートフォン内蔵のGPSとは別にナビクレイドル単体でGPSも内蔵している。内蔵されているGPSは、一般的な1Hz測位ではなく5Hz測位が可能なものだ。1Hz測位のGPSが位置情報を1秒間に1回取得するのに対して、5Hz測位のGPSは1秒間に5回測位する。移動速度が速い車での使用だけに、細かい間隔で測位できるのは有利だ。また、このナビクレイドルを利用することにより、パイオニアのプローブ情報「スマートループ渋滞情報」を取得することも可能だ。

 希望小売価格が1万5750円とクレイドルにしては少々高めだが、前述したナビ関連の機能に加えてBluetooth通信によるハンズフリー通話などの機能も搭載しており、内蔵マイクとスピーカーによる通話が可能だ。ダッシュボードへの取り付けにはPNDでよく使われている吸盤式によるもので、あらかじめダッシュボードに両面テープで取り付け板を張り付けておけば、自由に取り付けと取り外しが可能だ。

 クレイドルの電源はシガーソケットから給電されて、スマートフォンとUSBケーブルで接続することによりスマートフォンへの給電も可能となっている。さらに下部にあるLEDで燃費の良し悪しを示す「エコ・イルミネーション」という機能も搭載されている。

SPX-SC01のパッケージ「carrozzeria」のロゴの両隣がボリュームボタンになっている

クレイドルから伸びるケーブルをスマートフォンに接続する右側面にはステレオミニジャックとDC5Vコネクターがある

アーム解除ボタンを押すとアームが開く横に倒して横画面で使うことも可能

カーナビとして使うには有料登録が必要

 ドコモ ドライブネットは、NTTドコモが提供するナビアプリで、Androidマーケットから無料でダウンロードできる。さらに「マイドコモ」で有料サービスに申し込むことにより、ルート検索や駐車場の満空情報、テレビ紹介スポット、グルメ情報、GS価格情報といった「最新エリア情報」も利用可能になる。料金は月額315円だ。有料サービスに申し込まなくても地図アプリとしては使えるが、ルート検索が使えないのでカーナビとして使うのは難しいだろう。

 有料サービスに申し込んでから画面右下にいるドコモのオリジナルキャラ「ドコモダケ」をタッチすると、「最新エリア情報」の4つのアイコンが表示される。「駐車場満空情報」をタッチすると画面上に「P」のアイコン、「テレビ紹介スポット」をタッチすると「TV」、「グルメ情報」では飲食カテゴリを示すアイコン、「GS価格情報」をタッチすると「GS」のアイコンが表示されて、地図上に表示されたスポットの店名や住所、価格情報などが地図の下に表示される。

 ルート探索をする場合は、施設情報を検索するか、地図上で位置を直接タッチして目的地を指定する。探索条件は「推奨」「距離優先」「幹線優先」の3種類だけとシンプルだ。施設検索はフリーワード検索、周辺施設検索、住所検索とひと通り可能で、お気に入りの場所を登録することもできる。

 ナビゲーション中の画面については、交差点の案内表示が上部に矢印が出るだけのシンプルな表示スタイルだが、走行レーンの案内も出るし機能的には十分だ。また、高速道路の分岐点では3Dの案内表示が出るのでわかりやすい。

右下にあるドコモダケのアイコンで有料サービスを呼び出せる有料サービスのアイコン

夜間表示交差点の案内表示

高速道路の入口案内高速道路の分岐標示

“街歩き”の地図としては今ひとつ

 地図画面については、カーナビ用のため縮尺を小さくすると幹線道路が太く表示されるようになっており、道路地図として見やすいように配慮されている。街中の詳細地図では一方通行の矢印表示が細かく入っており、高速道路の合流や出入り口にも矢印が記載されている。また、縮尺の拡大・縮小はピンチ操作のほかに、画面下にあるスライダーと「+」「-」ボタンでも操作可能で、このあたりもカーナビとしての使い勝手が優先されている。

 詳細地図では建物の形まで詳しく描かれており、街歩き用のデジタル地図としても使えなくはないが、住所の番地表示が少なめなのが少々残念だ。また、地下鉄の路線や駅の表示などは記載されているものの、駅の出入り口や地下街の形状などは省略されている。街歩きの地図としてはGoogle Mapsに比べると情報量は少ないが、地図データをローカルに置けるので、電波状態の悪いときなどは重宝するだろう。なお、山岳地の等高線も記載されていない。

 もうひとつこのアプリの特徴として挙げられるのがスマートループ渋滞情報だ。SPX-SC01と組み合わせることによりVICSだけでなくスマートループ渋滞情報を加えた情報が地図上に表示される。渋滞個所は赤い矢印で表示されて、ナビゲーション中に「○○m先が渋滞しています」といった案内も告知される。

小縮尺画面詳細地図画面

駐車場満空表示地図データをローカルにダウンロードできる

山岳地の地図渋滞表示

横画面

クレイドルにセットすると渋滞情報を取得可能に

クレイドルを吸盤で固定

 クレイドル「SPX-SC01」を使うには、まず吸盤でダッシュボードにクレイドルを設置し、シガーライターソケットに電源ケーブルを接続する。次にスマートフォンをクレイドルに載せて左右のアームではさむ。位置を調整するためのスペーサーや、落下防止ストラップなども同梱されている。落下防止ストラップは、運転中のトラブル防止のためにも必ず使いたい。アームにスマートフォンをセットして充電用のMicro-USBケーブルをスマートフォンに接続すれば取り付けは完了だ。

 あとはスマートフォンのBluetoothをオンにした上で、ドライブネットアプリを立ち上げてクレイドル設定画面を表示させる。スマートフォンとの位置情報のやりとりやハンズフリー通話などはBluetoothを介して行われる。このクレイドルは最大5台までのスマートフォンの情報を登録可能で、登録された機器の情報を消去するためのリセットボタンも搭載されている。

 クレイドルと接続すると、スマートフォンの画面でGPS受信状態や測位衛星数、緯度・経度、学習状態などが表示される。また、内蔵スピーカーの出力設定やLED設定、走行速度に応じて音量を変化させるASL(オート・サウンド・レベライザー)の設定に加えて、内蔵センサーの学習の初期化なども行える。

 燃費表示機能のエコ・イルミネーションについては、下部のLEDの点灯により燃費状態がわかるようになっている。前回までのドライブの燃費と現在の燃費を比較して、前回よりも燃費が良い場合は緑色に、反対の場合は赤色に点灯する。


高さは上下に移動可能背面にスピーカーを搭載

価格は高めだが、完成度の高いナビクレイドル

エコステータスの画面

 クレイドルと接続しないでスマートフォンのGPSを使う場合と、接続してクレイドル内蔵のGPSを使った場合と両方を切り替えながら試してみたが、測位性能の差は正直言うとあまり感じられない。これはマップマッチング(自車位置を道路に合わせて修正する機能)を使っているためにクレイドル未接続でもある程度補正されるからだと思われる。しかし全く差がないというわけではない。例えば交差点で右左折する場合に地図への表示の反応が良くなったり、ビルに囲まれた都市部を走っているときに自車位置の表示がスムーズになったりと微妙な変化は感じられる。

 ただし、このSPX-SC01の価格が実売1万3000~1万4000円ということを考えると、測位精度が向上するというメリットだけでは少々高い。渋滞情報が取得可能になることやハンズフリー通話機能、スピーカー内蔵でナビの案内音声を高音質で聴けること、前面に使い勝手のよい音量調整ボリュームボタンが搭載されていること、ASL機能、燃費状態を示すLED、スマートフォンへの給電機能など、さまざまなメリットを総合的に考えて納得できる値段だと思う。

 この価格の点に納得できるのであれば、スマートフォンをカーナビに拡張する装置としては完成度が高く、単にスマートフォンをダッシュボードに取り付けただけとはひと味違うワンランク上の使い心地を得られるだろう。Androidスマートフォンをカーナビとして本格的に使いたいと思っている人には注目のアイテムだ。できればNTTドコモだけでなく、他キャリアのAndroidスマートフォンやGoogle Mapsなど、ドコモ ドライブネットアプリ以外の地図アプリでも使えるようにしてもらいたいと思う。


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2011/7/7 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。