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第115回:あの「震災時帰宅支援マップ」の情報を表示可能なPC用地図ソフト
「スーパーマップル・デジタル12」試用レポート
7月14日に発売となった昭文社の地図ソフト「スーパーマップル・デジタル12」。今回のバージョンでは描画スピードの向上やグラフ機能の強化など基本機能を進化させただけでなく、同社の出版物「震災時帰宅支援マップ」の情報を表示できるようにした点が大きな特徴となっている。
昭文社の「震災時帰宅支援マップ」といえば、被災時の帰宅困難者の役に立つ情報が詰まった書籍として以前から人気だったが、東日本大震災をきっかけにさらに注目されることになった。この本に収録された数々の情報をデジタル地図と組み合わせることで、いったいどのようなメリットが生まれるのだろうか。発売されたばかりの「スーパーマップル・デジタル12」をチェックしてみよう。
スーパーマップル・デジタル12 |
「スーパーマップル・デジタル12」はWindows 7/Vista SP2/XP SP3に対応。製品ラインナップとしては、収録している詳細地図データの違いにより「全国版(標準価格1万5330円)、「東日本版」(同8820円)、「西日本版」(同8820円)、「関東甲信越版」(同5880円)がある。また、アップグレードまたは他社地図ソフトユーザーを対象にした「乗換・アップグレード全国版」(オープン価格)も用意している。
「全国版」パッケージ | 震災時帰宅支援マップ |
●非常時に役立つ施設情報が満載
「震災時帰宅支援マップ」の情報は、「スーパーマップル・デジタル12」をインストールしただけでは見られるようにはなっておらず、表示させるにはコンテンツをダウンロードする必要がある。まずメニューの[取込]をクリックしてリボンの中から[まっぷる]をクリックする。独自ブラウザーが開いて「まっぷるダウンロードページ」が表示されるので、最下部にある「震災時帰宅支援マップ情報」をクリックするとダウンロードページが表示される。
リボンの[取込]タブから[まっぷる]ボタンをクリックすると、「まっぷるダウンロードページ」が表示される。 | 最下部にある「震災時帰宅支援マップ情報」をクリック | エリアごとに「帰宅支援ルートデータ」と「帰宅支援ポイントデータ」の2種類を用意 |
用意されているのは現在のところ首都圏および中京圏、京阪神圏の3エリアだけで、エリアごとに「帰宅支援ルートデータ」と「帰宅支援ポイントデータ」の2種類が用意されている。
「帰宅支援ルートデータ」は、自治体や団体が選定したルートや、各県緊急輸送路など昭文社が独自に選定したルートを収録したもの。ルート周辺の「危険箇所」と飲用専用の「水場」の情報を含んだデータも収録する。
「帰宅支援ポイントデータ」には「救急指定・災害拠点病院」「広域避難場所」「帰宅支援ステーション」など、震災時の支援ポイントとなる施設を収録している。
それぞれをクリックしてカスタム情報ファイルをダウンロードして追加すると、地図画面の右にある「カスタム情報」のリストにダウンロードした情報がカテゴリー別に並ぶ。
リストのカテゴリー名をクリックすると、各カテゴリーの情報が地図上に表示される。例えば「危険箇所」をクリックすると「危」というアイコンが地図上に配置されて、「塀」「ガラス」「頭上注意」「ガケ・石垣」といった危険の内容を吹き出しで表示する。
「水場」をクリックすると青丸で「水場」と記載されたアイコンが無数に並ぶ。これらは水飲み場のある公園などを示したものだ。なお、小縮尺にするとわかるが「危険箇所」と「水場」については、「帰宅支援ルート」の幹線道路沿いの情報を示している。
これに対して「広域避難場所」「帰宅支援ステーション」「救急指定・災害拠点病院」については帰宅支援ルートに関係なく紹介している。「広域避難場所」をクリックすると、避難場所として指定されている公園など、「帰宅支援ステーション」をクリックすると学校など、「救急指定・災害拠点病院」については救急病院が施設名とともに地図上に表示される。
●情報を書き込んでオリジナルの帰宅支援マップを作成可能
「スーパーマップル・デジタル12」は起動時に「ガイドマップ」という初心者向けの案内ウィンドウが表示されるが、ここでは「自分だけの帰宅支援マップを作ろう」と題して、震災時帰宅支援マップ情報を使ったオリジナルの帰宅支援マップの作成を提案している。
「震災時帰宅支援マップ」の情報に補足して、テキストや直線・四角形・円・折れ線などの図形データを地図上に書き込み、さらに地図表示をモノクロや白地図に変更することで、緊急時に特化した自分だけの地図を作れるわけだ。収録されている帰宅支援ルートだけでなく、自分の家までのルートを細かく記載しておけば、いざという時に慌てないで済むだろう。
「ガイドマップ」案内ウィンドウ | 情報の記入方法を解説 |
さらにルート全体図を印刷する方法も案内している。紙の本と違ってオーダーメイド感覚でオリジナルの震災時帰宅支援マップを作成できる点が書籍にはない魅力と言える。
なお、追加コンテンツとしては震災時帰宅支援マップのほかに、「路上駐車取締情報」もある。こ「駐車違反取締重点路線マップ」に掲載された駐車違反取締重点路線および地域情報データを都道府県別にダウンロードすることが可能だ。
「路上駐車取締情報」を都道府県別に収録 | 「路上駐車取締情報」を表示 |
●グラフ表示や住所検索の位置精度が向上
新バージョンのこのほかの強化点としては、地図描画のスピード向上が挙げられる。描画スピードについては昨年、バージョン10から11へとアップデートしたときにも大きく向上したが、本バージョンにおける速度向上率は前回ほどではないとのこと。ただし、ユーザーが地図上に追加する顧客データや物件データなどの「情報管理データベース」の描画については、前回のバージョンアップでは全く手が付けられていなかったが、今回はこの部分を大きく改善したという。例えば数百~数千件の顧客情報を地図上にばらまくような場合でも、従来よりも地図のスクロールや拡大縮小がスムーズになる。
東京駅周辺の詳細地図 | 銀座四丁目交差点付近 |
新宿都庁周辺 | 高尾山周辺 |
もうひとつ改善されたのが分布図やグラフなどを地図上に表示させる場合の位置精度だ。前バージョンでは住所データをもとにグラフを取り込む場合、大字町丁目(~丁目)レベルまでの精度でしかグラフを置く位置を決められなかったのが、バージョンアップしたことにより、地番レベル(~丁目~番~号レベル)まで細かい位置にピンポイントでグラフを置けるようになった。
分布図 | 円グラフ |
棒グラフ |
また、住所検索時の住所データも約400万件増強されて、住所検索時に表示される位置の精度が向上した。住所データをインポートした場合の位置のマッチング精度が高まり、大量の顧客データや物件データを扱う場合にも便利だ。個人が使う場合でも、住所検索のときに微妙に違う位置が表示されるとストレスに感じるので、これが改善されて「~号」レベルまで正しい位置が表示されるように精度が高くなったのは魅力だ。地味だが見逃せない強化点と言える。
●いざという時のためのパッケージ地図ソフト
しかし今回のバージョンで最も注目されるのは、なんといっても「震災時帰宅支援マップ」の情報を地図上に取り込めるようになったことだろう。これ1本あれば自分だけでなく家族用のオリジナルの帰宅支援マップも作れる。会社や学校などから帰宅するまでのマップを印刷して渡しておけば、いざという時に役立つのではないだろうか。首都圏・中京圏・京阪神のユーザーなら前バージョンを持っていても買い換える価値は十分にあると思う。
もちろん地図データは最新のものが収録されており、例えば銀座エリアを見ると「スーパーマップル・デジタル11」と比べてリニューアル後の銀座三越などの描き方が変わっている。パッケージの地図ソフトは地図データをPCのローカルに保存できるということで、インターネットが使えなくなるような非常時にも強い。日頃はGoogleマップばかり使っているという人でも、いざというときのための備えとして1本購入しておくのもお勧めだ。
なお、昭文社の子会社である株式会社マップル・オンは7月20日、iPhone向けアプリ「震災時帰宅支援マップ 首都圏版」もリリースした。こちらは首都圏限定で、オリジナルの帰宅支援マップなどは作成できないが、800円(リリースキャンペーン価格で先着5000ダウンロードまでは450円)と低価格で購入できるので、首都圏ユーザーは要注目だ。
iPhoneアプリ「震災時帰宅支援マップ 首都圏版」の起動画面 | 帰宅ルート選択画面 | 地図画面 |
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2011/7/21 06:00
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