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第133回:100kmマラソンで使用可能、Edyにも対応のGPSウォッチ「ARES Ultra」


 マラソン人気の高まりとともに注目されているのが、走行軌跡を記録できるGPSランニングウォッチだ。従来は米GARMINの製品ばかりが目立っていたが、最近はGISupplyや、今回紹介するトランステクノロジー株式会社など参入する会社も増えてきた。また、詳しい発売日は未定となっているものの、セイコーエプソン株式会社が2012年内にこの分野に参入すると発表したのも記憶に新しい。

 今回は、トランステクノロジーのGPSランニングウォッチ「ARES GPS」シリーズの中から、3月に発売された「ARES Ultra」を紹介しよう。

ARES Ultra

ウルトラマラソンに使える長時間駆動と70gを切る軽さを両立

 GPSランニングウォッチはカーナビやハンディGPSとは異なり、地図上で現在地を確認できるわけではない。腕時計型ということでディスプレイサイズにも限界があり、表示内容は移動速度や移動距離、経過時間、区間タイム、現在地の緯度・経度などの数値データに限られる。

 それでも走行速度や移動距離が具体的な数値として表示されるのはランニングへのモチベーションが大いに刺激されるし、それによってペース感覚も養成される。この効果はGPS非搭載の一般的なランニングウォッチでは得られないものだ。

 また、軌跡ログを保存できるので、ランニングを終えて帰宅してから、データをPCに転送してデジタル地図上に表示・保存することも可能だ。走行軌跡を後から確認することで、トレーニング内容を分析したり、新たなランニングコースを検討したりするのも楽しい。

 トランステクノロジーのARES GPSは、2010年に初代モデル「AR-1080」が発売。今年に入り、後継機種となる2世代目ARES GPSシリーズが発売された。新モデルはGPSの駆動時間が8時間と12時間の2モデルが用意されており、さらに電子マネー「Edy」チップをバンドに搭載したモデルも用意された。心拍数測定用のチェストベルトの有無も合わせて、計8モデルのラインナップとなっている。

 新モデルの特徴の1つは、軽量・コンパクトを実現していること。前モデルのサイズは50×65×18mm、重さが64gだったのに対して、新モデルの8時間モデルは48×58×16mm、重さは54g(Edy対応機は56g)、12時間モデルは62g(Edy対応機は64g)となっている。

 今回借りたのは「ARES Ultra(AR-2120E)」という名が付けられた12時間モデルで、Edy機能付きで心拍測定用ベルトが付属しないモデルだ(同社直販サイトでの価格は3万3000円)。バッテリー持続時間が12時間ということは、100kmのウルトラマラソンでも使える長時間駆動を実現しているわけで、これはなかなか画期的なことだと思う。GPSランニングウォッチは普通のランニングウォッチと異なり、バッテリーの消耗が激しく、使うたびに充電が必要となるが、ARES Ultraはウルトラマラソンに使える長時間駆動を実現しながら、同時に70gを切る軽量化も達成。Edy非対応機では62g、Edy対応機でも64gと、初代のARES GPSとほぼ同じ重さを維持している。

 GARMINの「Forerunner 910XT」やスントの「アンビット」などの長時間記録可能なモデルが70g以上の重さなのに対して、この軽さに魅力を感じる方もいるのではないだろうか。ウルトラマラソンの大会が増えるこれからの季節には最適なモデルと言えるし、長時間の使用が多いトレイルランなどでも安心だろう。

パッケージ カラーはブラック×チャンピオンゴールド
GARMINの「Forrunner 405」(左)と比較 本体裏面には充電/データ転送用の接点が
USBクリップケーブルとACアダプター USBクリップケーブルを取り付けた状態

Edyチップをバンドにセットすれば小銭を持つ必要なし

 さらに、Edy対応機が用意されている点にも注目だ。ランニングの経験者ならご存じかと思うが、走行中に小銭入りの財布をポケットやポーチに入れると、ジャラジャラと鳴ってうるさくわずらわしい。かといって電子マネーのカードやクレジットカードなどを持つと紛失や水濡れ、汗濡れの心配がある。

 ARES GPSのEdy対応機ならバンドにEdyチップを搭載しているので、腕のバンドをかざすだけで自動販売機やコンビニで買い物ができる。これなら長時間のトレーニング中でも小銭を持つことなく飲料水や食料を入手可能だ。EdyチップはIPX-7相当の防水対応になっており、汗や雨に濡れても問題ない。ちなみにARES GPS本体は3気圧防水となっている。

 チャージはコンビニなどに行って頼めば簡単に手続きできる。このEdy機能は想像以上に便利だ。事前に入金さえしておけば、いつでもキャッシュレスで買い物できるし、ランニング中にいちいちポケットをまさぐって小銭を取り出す面倒もなくなり、身軽な気分になれるだろう。

 ハシートップインの「e-money band」など、以前からリストバンド型のEdyチップは存在したが、腕時計も別に装着しなければならなかった。ARES GPSなら時計と一体化しているので装着の面倒はない。使ってみるとわかるが、ランニングウォッチに電子マネー機能というのは実に合理的な組み合わせで、今後はこのようなEdy対応のランニングウォッチがもっと増えてほしいと思う。

Edyチップ バンドの金具付近にEdyチップを収納可能
Edyチップはコンパクトなので着け心地に違和感はない Edy対応の自動販売機で購入可能

バックライトを常時点灯させることが可能に

 初代モデル(AR-1080)からのもう1つの追加機能としては、夜間にバックライトを常時点灯させることが可能となった。筆者は夜間のランニング中は時計を常時点灯させるのが好きなので、この機能はとてもありがたい。もちろん常時点灯機能をオフにして、5秒間だけ点灯させるように設定することもできる。

 このほかの機能は、ほぼ前モデルを踏襲している。設定した距離ごとに自動的にラップタイムを計測する「オートラップ機能」は、0.5/1/2/3/4/5kmの6段階。なお、移動をやめて静止するとタイム計測を自動的に中止する「オートストップ」機能は搭載されておらず、この点は少し残念だ。

 情報表示は日本語表記で、表示モードは「ジコク(時計)」モードと「ランニング(走行)」モード、「クロノ」モード、「ランニングデータ」モード、「センサーリンク」モード、「セッテイ」モードの6モードで構成されている。

 「ジコク」モードでは、5種類の時計表示方法が用意されており、2つの時刻帯を並べて表示させることも可能。アラームは合計5つまで登録できる。

【お詫びと訂正 2012/4/9 14:45】
 記事初出時、「オートラップ機能」について、「従来は1/2/3/5kmの4段階だったのが、0.5kmごとの計測も追加されて5段階となった」と記載しておりましたが、正しくは、前モデル・新モデルともに「0.5/1/2/3/4/5kmの6段階」です。お詫びして訂正いたします。

 また、バックライトを常時点灯できる機能は、初代モデル「AR-1080」(本連載第100回でレビュー)には搭載されていませんでしたが、そのマイナーチェンジモデルである「AR-1081」において、「ナイトモード」としてすでに搭載されていた機能です。ただし、AR-1081ではナイトモードの時間帯が夜の18時から朝7時までに固定されていましたが、今回の新モデルから任意に設定できるよう改良されました(「ランニング」「クロノ」モード時のみ作動)。

「ジコク」モード(1行表示) 「ジコク」モード(2行表示)

 「ランニング」モードでは情報を3行表示し、上の2行には経過時間および移動距離を表示。最下行には現在時刻または走行スピード、ペース(1km走るのにかかる時間)、消費カロリーのいずれかを選んで表示させられる。走行データは最大60時間または最大50件を内蔵メモリに保存可能。各データに300ラップ、最大1500ラップタイムを記録できる。

「ランニング」モード(最下行に走行スピード表示) 「ランニング」モード(最下行にペース表示)
「ランニング」モード(最下行にカロリー表示) 「ランニング」モード(最下行に時刻表示)

 「クロノ」モードはラップタイムとスプリットタイムを中心としたタイム計測を行うことが可能で、オートラップを設定している場合は自動的にラップごとの時間が記録される。ラップを記録するごとにラップタイムとスプリットタイムを10秒間固定表示する。表示モードはラップタイム/走行距離/合計タイムの3行表示と、ラップタイム/合計タイムの2行表示、ラップタイムのみの1行表示と3種類から選択できる。

「クロノ」モード(3行表示) 「クロノ」モード(2行表示)
「クロノ」モード(1行表示) オートラップのラップ表示

 「ランニングデータ」モードでは過去の走行データを参照できる。日付ごとにリスト表示されて、選択するとスプリットタイム/距離/平均ペース/平均スピード/消費カロリーの5項目を確認できる。

「ランニングデータ」モード

 なお、消費カロリーについては心拍計測用チェストベルトを装着していない時は入力された体重と走行距離によって簡易的に計算されるが、チェストベルト装着時にはより正確に表示される。チェストベルトとの無線接続は「センサーリンク」モードにて行う。

 「セッテイ」モードでは、使用言語や表示単位を設定できるほか、性別・年齢・体重・身長などの個人データを入力できる。さらに好みの心拍数範囲(HRゾーン)を設定することも可能で、設定したHRゾーンから外れた時にアラームを鳴らす機能も搭載する。

 このほか、操作音のオン・オフや画面のコントラスト設定も可能。コントラストは30〜90%の範囲で調整できる。コントラストを高めると屋外でも見やすく、視認性の面で不満は感じない。

管理ソフト「Enjoy ARES」にKMLの出力機能を搭載

 ARES Ultraで記録したログをPC上で管理するためのソフトウェア「Enjoy ARES」は従来通りだが、前モデルのリリース直後には搭載されていなかったKML/CSV/GPXファイルの出力機能が、過去数回のバージョンアップにより追加されている。出力したファイルはGoogle EarthやGoogle マップのマイマップ、3D地図ソフト「カシミール3D」、ルート共有サイト「ルートラボ」など、ほかの地図ソフトや地図サイトなどで利用可能だ。

「Enjoy ARES」の日時記録画面

 取り込んだログについては、カレンダー画面で一覧したり、ラップ情報や走行ペースのグラフを確認したりできる。また、取り込んだログをGoogle マップ上に表示する機能も搭載する。

履歴画面

カレンダー画面

ペース情報

ラップ記録

Google マップ上にログを表示

 「Enjoy ARES」ならではの機能として、累計走行距離が小縮尺の日本地図上に表示される「トラベルチャレンジ」というモードも搭載している。自分の走った距離がどれくらいなのかを直感的に把握できるので、ランニングへのモチベーション維持につながるだろう。

トラベルチャレンジ

 データの転送および充電は付属のUSBクリップケーブルにて行う。USB ACアダプタ−も付属しているので、PCがない場合はこれを使えばAC電源から直接充電できる。クリップは硬めで少し付けにくく、最初はクリップの接点をきちんと噛み合わせるのに手間取ったが、何回か繰り返したら慣れて、すばやくセットできるようになった。

出力したログの軌跡に細かいブレが発生

 それではログを見てみよう。今回はGARMINのGPSランニングウォッチ「Forrunner 405」と比較する。左腕にARES Ultra、右腕にForrunner 405を着けて、皇居周回コースを走ってみた。ログの赤線がARES Ultraで、青線がForrunner 405となっている。軌跡を重ねて比較するため、専用ソフトのEnjoy ARESからKMLファイルを出力してGoogle Earth上で表示させている。

皇居周回コース(全景、Google Earth上で表示)

皇居周回コース(三宅坂付近、Google Earth上で表示)

皇居周回コース(大手町付近、Google Earth上で表示)

 全体的には両方とも似たような軌跡を描いているが、ARES Ultraのほうが直線での左右のブレが激しい。日を変えて測定し直したが、やはり同じように細かいブレが出ている。これはARES Ultraのログ取得間隔が1秒間と短いことから、細かい誤差が目立つ結果となったと思われる。ちなみに専用ソフトのEnjoy ARES上で地図を見るとスムージング処理が行われてスムーズな線として表示される。

皇居周回コース(全景、Enjoy ARES上で表示)

皇居周回コース(三宅坂付近、Enjoy ARES上で表示)

皇居周回コース(大手町付近、Enjoy ARES上で表示)

 この1秒の記録間隔は設定変更することはできない。対してForrunner 405のほうは移動ペースに応じて記録間隔が切り替わる仕様で、例えば皇居のログの内容を見ると間隔はだいたい2〜3秒おきとなっている。個人的にはARES Ultraのように記録間隔が一定のほうが好みなのだが、出力した場合の軌跡のギザギザは気になるので、できれば計測時に記録間隔を幅広く変えられるようにしてほしかった。

 なお、トランステクノロジーにこの件を問い合わせたところ、今後はスムージングした後のデータが出力可能になるよう検討しているという。中には元データを必要とする人もいるので、どちらか一方ではなく出力するデータを選べるようにしてほしいと思う。さらにこれに関連して、「JogNote」などのランニング関連SNSに距離や時間、地図、メモなどを出力する機能も搭載する予定とのことだ。

 記録間隔の件は少し気になるものの、Enjoy ARES上でログを見る分にはスムーズな軌跡として表示されるし、皇居周回コースの総走行距離についても1回目は4.99km、2回目は4.98kmと、ほぼ正確な距離が出た(皇居周回コースは約4.98kmと言われている)。ほかにも、メニューが日本語化されており操作方法がわかりやすい点と、付属ソフトの使いやすさも魅力だ。ウルトラマラソンのランナーには軽量・小型な長時間駆動モデルとして、有力な選択肢になると思う。

 なお、ランニングGPSウォッチは内蔵バッテリーを使っているものがほとんどなので、購入する際はバッテリーの交換費用も含めて検討することをおすすめする。参考までにARES Ultraのバッテリー交換費用を記しておくと、商品送付時の送料はユーザー負担で、交換料金は税・返送時送料・代引き手数料込みで9800円となっている。


関連情報



2012/4/5 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅−デジタル地図に残す自分だけの鉄道記−」がインプレスジャパンから発売中。