山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

東日本大震災、中国のネット上でも大きく報道 ほか
2011年3月


 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を取材拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

東日本大震災、中国のネット上でも大きく報道

ポータルサイト「捜狐」の東日本大震災特集ページ

 東日本大震災は、中国でも非常に大きな扱いで報道されている。ネットメディアでも、中国の大手ポータルサイトで特集ページが組まれ、4月に入って震災から3週間以上経過した現在も特集ページでの更新は続いている。事件・事故・話題の多い中国で、大手ポータルサイトが海外ニュースで長期にわたって大きく報道するのは珍しい。

 報道の内容はというと、福島第一原発事故による中国国内の塩の買い占めによる一時的な高騰や、中国国内の放射能濃度など中国国内の話題もあるが、基本的に日本のメディアの報道をそのまま翻訳して報じている。欧米の報道に比べると、独自解説・予想記事などが少ない。その一方で、掲示板などでは、被災した日本の人々を思いやるコメントと、日本の不幸を喜ぶコメントの両方が多数書き込まれた。


ポータルサイト「新浪」の東日本大震災特集ページポータルサイト「新浪」の東日本大震災特集ページでは地震関連の微博(ミニブログ)の書き込みもリアルタイムで紹介

 

百度、オンラインショッピング事業で楽天中国などに注力

楽酷天(楽天中国)へのシフトを進める百度有〓

 中国ナンバーワン検索サイトの百度(Baidu)は3月31日、同社のオンラインショッピングサイト「百度有〓(〓は口へんに阿)」を1カ月以内に終了させることを発表した。百度有〓は2008年10月に本サービスを開始、当時から圧倒的人気の淘宝網(TAOBAO)のシェアを奪うと鼻息は荒かったが、2010年第2四半期のオンラインショッピング市場の0.11%しかシェアがなかった(易観国際調べ)など淘宝網の牙城を崩すことはできず、「最も大口叩きのサービス」と揶揄する記事も。

 発表では「B2Cショッピングには注目している」とし、楽天中国こと「楽酷天」や台湾と提携する「耀点100」に注力するともしている。


百度の各コンテンツサービス、海賊版普及の元凶と名指し

百度合作ページ

 中国国内の権利者が、百度が提供する「百度mp3捜索」などのmp3関連サービスや、文書共有サービス「百度文庫(Baiduライブラリ)」に対し、「海賊版をほう助の元凶」だと名指しした。日本でも、出版4団体、「Baiduライブラリ」のデジタル海賊版に対策を求める声明を発表している( http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20110228_430140.html )

 音楽に関しては、中国音像協会が「百度が海賊版サイトへのリンクを提供している」と非難。また文書に関しても、著名小説家ら50人による中国作家聯合が百度に対して、「百度は作家からの許可を得ていないコンテンツ全てを無料でユーザーに開放している」と非難する声明を発表した。

 百度はmp3サービスに関しては、「5月に新サービスを投入する」「広告収入よりも版権費の支払のほうが大きく赤字であり儲かっていない」と弁明。また、文書ファイルに対しては、提携合作に関するサイトを開設(http://wenku.baidu.com/hezuo)。数日で180万近い文書ファイルを削除するという対処を行った。

 こうした対処について、中国のIT系メディアは「百度の態度ががらっと変わった」と評価。原因としては、中国国家新聞出版総署が反百度側についたことと、権利者らが世論を反百度に誘導したことにより、百度が知らないふりをし続けるのが極めて難しくなったことを理由として挙げている。


世界消費者権利デー到来も、消費者センターサイトが違法で閉鎖

 3月15日は消費者の権利確立などを訴える世界消費者権利デー。中国でも毎年この日は「315」と呼ばれ、国営テレビ「CCTV」や新聞・雑誌・WEBサイトなどで、中国市場の製品やサービスはもとより、個人輸入される海外の製品まで総点検し、品質に問題のある製品やサービスを晒していく。

 今年はインターネット関連では、去年より急増しているグルーポン型サイトでのトラブルや、絶えないオンラインショッピングでの詐欺が槍玉にあがった。「315」を契機に発表された統計によれば、去年のオンラインショッピングの詐欺などによる被害総額は150億元(約1950億円)にのぼるという。

 ありとあらゆるものの品質チェックは3月15日に総点検されるが、普段から問題があれば消費者センターに苦情を言うことができる。

 ところが、その消費者センターが詐欺で3月末に閉鎖した。閉鎖したのは電子製品に関する苦情を担当する「315消費電子投訴網」。315消費電子投訴網はメーカー各社に対し、「戦略合作協議」と称したデマを流して風評被害を行わないための口止め料を長きにわたり回収していた。

 315の特集記事や掲示板上では、そもそも全体として信用がないことも、論議として立ち上がった。

一大政治イベント「両会」で、インターネットも話題に

 中国の一大政治イベント「両会」が開催され、インターネットに関しても論議の対象となった。ニュースにのぼっただけでも、「モバイルインターネットの推進」「掲示板のコメントにより競争企業に風評被害を与えるといった中国のネット習慣を否定し、中国のインターネット競争力を発展させる論議」「インターネット上の海賊版を取り締まれるよう、著作権法の改正の検討」「ミニブログ(中国語で微博)サービスを利用したオープンな情報公開」などが話題にあがったようだ。

中国政府、中国ネットカフェ市場についての調査結果を発表

 中国政府文化部文化市場司は、「2010中国ネットカフェ市場年度報告」を発表。それによれば2010年のネットカフェ市場規模は前年比12.96%減の771億1690万元(約1兆円)、2010年末の段階でのネットカフェ利用者数は前年比2847万人増の1億6300万人、ネットカフェ数は14万4000店、ネットカフェ内の端末総数は1428万台であるという。

 毎年所得が増えるのにともない、インターネット利用者も自分で所有するPCからインターネットを利用するユーザーが増加している。また、中国政府は、健全なインターネット環境を実現すべく、大規模のネットカフェやチェーン店のネットカフェを推進。14万4000店のネットカフェのうちの3割がチェーン店で、中国全土に展開する企業は4社、省内の各都市に展開する企業は351社で、レポートでは「チェーン店化は進んでいる」とまとめている。

 しかし、ネットカフェ市場規模が縮小する一方でネットカフェ利用者数は増加している。ネットカフェは娯楽の場となっており、利用者はビデオを観たり、チャットソフト「QQ」でチャットをしたり、オンラインゲームを利用するなどそれぞれに楽しんでいる。都市部では個人所有のPCがデスクトップPCからノートPCへと移行していることから、ハイスペックPCでオンラインゲームなどを利用するために、ネットカフェ利用者が増えている可能性はある。

Google「地図サービスは中国政府と交渉中」

 中国でオンライン地図サービスを提供する業者は3月31日までに許可証をもらわなければならず、既に70以上の企業が許可証を得ているが、Googleの手続きが難航している。担当する国家測絵局のスポークスマンは「3月29日までGoogleからサービス継続の申請は受けていない」と語る。許可証が発行されない場合、中国ではGoogle mapやGoogle Earthが利用できなくなる可能性がある。

 許可証発行の条件のうち、Googleにとって障壁となるのがサーバーと資本だ。サーバーは中国本土内に置かなければならず、また中国企業と資本の提携を行う必要がある。

 Googleは2006年に中国市場に進出。検索サーバーを中国に置いていたが、2010年に中国の人権活動家のGmailアカウントハッキングを目的とした大規模なサイバー攻撃を受けたことを発表。中国当局に検閲のない検索サービスを提供させるよう求めたが、中国政府はこれに応じなかったことから、中国国内に設置していたサーバーと北京のオフィスを引き払い、検索サーバーを香港に移転して中国向けの検索サービスを提供している。

2010年の第三者支払サービス市場は15兆円弱

 中国のリサーチ会社「易観国際(Analysys International)」によれば、第三者支払サービスの市場は、前年比95%増の1兆2342億元(14兆7000億円)と大きく成長した。第三者支払いサービスは、日本でいえば「楽天あんしん支払サービス」のような、オンライン取引におけるリスクを軽減するサービスだ。

 易観国際では成長の理由を、オンラインショッピングの普及に加え、航空会社や保険会社、金融業界が第三者支払サービスを採用したことが大きいと分析している。

全鉄道切符をオンラインで購入可能に。一方で実名化の動き

 中国政府鉄道部のスポークスマンは、購入の電子化を進めていることを発表。「全ての切符がオンラインで購入できるシステムを年内に完成させる」とした。

 同時に、鉄道切符購入も実名制を導入する方針を示し、近く、中国の高速鉄道「和諧号(CRH)」のチケット購入に実名制を導入すると発表した。中国では、国内の航空便チケット購入の際には、以前から身分証やパスポートの提示が必要だったが、今後は鉄道の切符購入の際にも身元確認を求められることになる。


関連情報

2011/4/6 06:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。