清水理史の「イニシャルB」

SynologyのNASにnasneの動画をムーブ 「sMedio DTCP Move」を試す

 今年の初めにDS216play向けにリリースされ、その後、対応機種を拡大してきたSynology NAS向けのDTCP-IPアドオン「sMedio DTCP Move」。個人的に使う用途がなかったので、試していなかったのだが、いつの間にか我が家のDS1512+でも使えるようになっていたので試してみた。

払い戻しまで確認

 結論から先に言うと、筆者宅の環境では、SynologyのNASをnasneのムーブ先として使うことは現実的ではなかった。

 それはそれで仕方ないのだが、せっかく$8.5で購入したDTCP-IPのダウンロードムーブ対応アドオン「sMedio DTCP Move」が「もったいなかったなぁ」と思いつつ、いろいろ調べていたところ、無事に払い戻しができることがわかった。

 SynologyのNASに機能を追加するパッケージセンターからダウンロード可能な「sMedio DTCP Move」は、いわゆる先払い方式の有料アプリで、Paypalでの支払いを済ませることではじめてインストール可能になる。

 アドオンの中には、McAfeeのアンチウイルスアドオンのように、インストール時は無料で継続して利用する場合は有料という製品もあるが、それとは異なる先払い式だ。

 で、払い戻しについては、どのアプリストアも方法がわかりやすいとは言い難いのだが、Synologyのアドオンの場合も、本体のパッケージセンターではなく、Web上のSynologyアカウントのページ(https://account.synology.com)から払い戻しが可能になっている。

 購入履歴のページを参照すると、購入した「sMedio DTCP Move」が表示されるので、リストの右端にある「払い戻し」ボタンをクリックするだけだ。

 前述したように、パッケージセンターでの支払いにはPaypalが使われるが、しばらくするとPaypalからも払い戻しの連絡がメールで届いたので、無事に払い戻しができていることが確認できた。

 今回のケースでは、前日の夕方(17:00)に購入し、解約したのは翌朝(8:00)だったので、24時間以内に払い戻しを実行したことになるが、規約を見ても払い戻しの有効期限について記載がないので、どれくらいまで払い戻しができるのかは不明だ。

 とはいえ、無事に払い戻しができることを確認できたのは、大きな安心感につながると言えそうだ。海外製品の場合、独自のストアなどからの課金に不安を覚える人もいるかもしれないが、少なくとも今回は日本語で払い戻し操作ができたうえ、その後の処理もスムーズだった。

Synologyアカウントから有料アドオンの払い戻しができる

DTCP-IPのダウンロードムーブに対応

 それでは、本題に戻ろう。SynologyのNAS向けに提供されている「sMedio DTCP Move」は、DTCP-IPのダウンロードムーブに対応したアドオンパッケージだ。

 アドオンのリリースは今年の初め、DS216playの提供開始と同時期なので、決して新しい製品ではないのだが、その後、対応機種が次第に拡大され(こちらを参照)、今やほとんどの機種で利用可能になっている。

 筆者宅のDS1512+も後から対応した機種となっていたが、いつの間にか対応していたため、ようやく試すことにしたというのが今回の経緯となる。

sMedio DTCP Moveの対応機種

 何ができるのかというと、nasneなどのレコーダーで録画したデジタル放送をNASへとムーブし、DTCP-IPに対応したテレビや再生アプリを使って、ネットワーク経由でムーブした動画を再生することができる。

 単純にネットワーク経由で再生したいだけなら、直接nasneなどの機器を参照すればいいので、本体側の空き容量が足りなくなってきたときに、いくつかの番組をNASへと退避するという使い方が想定されるだろう。

 使い方は簡単で、冒頭でも触れたとおり、パッケージセンターからPaypal経由でアドオンを購入してインストールする。

 設定画面からsMedio DCTP Moveを起動すると、設定画面(ポート32142で直接接続することも可能)が表示される。設定といっても、言語、サーバー名、ムーブ先フォルダ、サーバーメンテナンス(再起動、コンテンツスキャン)などができる程度で、サーバーそのものも標準で起動しているため、特になにも変更する必要はない。

インストールするだけで有効化される。設定も標準のままで問題ない

nasneの動画をムーブする

 ムーブ操作も上記Webページから実行する。画面右上の「コンテンツのムーブ」をクリックすると、ムーブ画面に移行するので、右上のサーバー名をドロップダウンして、接続先を選択する。

 一般的なDLNAサーバーなどに交じってnasneが表示されるので、これを選択。すると、フォルダーの表示が切り替わるので「ビデオ」→「すべて」などとたどると、録画した番組の一覧が表示される。

 ムーブしたいコンテンツの「↓」ボタンをクリックするか、タイトルをクリックして複数番組を選択後、「選択したコンテンツをダウンロード」をクリックすると、録画した番組のダウンロードムーブが実行される。

 ダウンロード時間は、環境や録画した番組の品質(DRか3倍か)にもよるが、DRで録画した30分番組の場合で約4分10秒。さほど待たされることなくスピーディにムーブが完了する。

接続先を選択すると録画番組の一覧が表示される。ムーブしたい番組を選んで転送する
番組の転送は4~5分程度。スピーディに転送される

 ちなみに、ムーブされた動画ファイルは、標準では「/volume1/sMedioDTCPServer/Download」に保存されるが、このフォルダーはNASの共有フォルダーではないので、エクスプローラーやFile Stationなどのアプリからは参照できない。

 再生はDTCP-IP対応プレーヤーで、削除はsMedio DTCP Moveの画面(ムーブ済みコンテンツの管理)から実行できるので、ファイルそのものを参照する必要はないが、どうしてもという場合は、SSHでアクセスすることでファイルを確認できる。

録画番組の保存先は共有フォルダーとしては表示されない。SSHなどで接続すると直接参照できる

再生環境が限られる

 このように、sMedio DCTP Moveは、Web画面から簡単に番組をムーブできるうえ、ムーブもスピーディで、複数動画もまとめてムーブできるため、結構、使い勝手がいい。

 しかし、ムーブ後については、若干、課題がある。ムーブした番組は、当然、再生できないと意味がないが、この再生環境を結構選ぶのだ。

 もっとも手堅いのは、同社製のプレーヤー「sMedio TV Suite」だ。Android版(アプリ無料、DTCP-IP再生700円)とWindows版(1922円、DTCP-IP再生1000円)が提供されており、どちらもDTCP-IPでムーブしたコンテンツを再生するにはアプリ内課金が必要になるのだが、さすがに純正アプリだけあって大きな問題はない。

 MPEG2のコーデックの関係で、nasne側でDRで録画した番組を再生できない(映像が表示されない)場合があるが、標準(3倍)で録画した番組は問題なく再生できた。

 なので、標準(3倍)で録画した番組がほとんとで、再生もスマホやPCの標準アプリからで問題ないのであれば、悪くない選択肢と言える。

Android版のアプリ。赤で囲んだのがsMedio DTCP Moveのサーバー。同じ名前のサーバーはSynology NAS標準のDLNAサーバー
AndroidではDRで録画した番組は映像が再生されない。標準(3倍)の動画は問題なく再生可能

 しかし、そのほかの再生環境となると、どうにも相性がよろしくない。

 筆者が試した限りでは、Sony BRAVIA KDL24W600A(DTPC-IP対応テレビ)では、サーバーを認識し、ムーブした番組の一覧から再生を開始するところまではできるものの、いざ再生が開始されるとすぐに停止されてしまった(再度再生を開始しても同じ)。

 続いて、PS3を利用してみたところ、動作がまちまちだった。数本ムーブして試してみたのだが、BRAVIAと同様にすぐに停止する動画もあれば、再生エラーが表示される動画もあり、冒頭の数分は再生できるのだがしばらくすると停止してしまう動画などがあり、いずれにせよまともに再生できなかった。

 どの動画も、専用アプリを使えば問題なく再生できる(前述したDRは別)ので、単純に相性の問題という話になりそうだ。

 DLNA対応製品が登場した当初は、こういった相性の問題が結構あったのだが、最近はあまりトラブルを目にすることはなかっただけに、少々、残念だ。

 というわけで、筆者宅では、メインのBraviaとPS3で再生できなかったため、冒頭の払い戻しという結果になったことになる。

 基本的には、専用プレーヤーとの組み合わせで使うソリューションと考えた方がいいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。