清水理史の「イニシャルB」

QNAPやSynologyと真っ向勝負できるNAS アイ・オー・データ機器「HDL2-AA0/E」

 アイ・オー・データ機器から、実売2万円以下の低価格でありながら、最大116MB/sの転送速度を実現する高性能NAS「HDL2-AA」シリーズが発売された。同社製NASとしては久しぶりの新製品ということもあり、注目度の高い製品だ。その実力を検証してみた。

ライバルはSynology

 価格も、性能も、スペックも――。

 今やすっかりランキング上位を占められてしまった海外製NASに対抗するために、久しぶりにアイ・オー・データ機器が作り込んだ新製品が、今回取り上げる「HDL2-AA0/E」だ。

 「最大転送速度116MB/s」というスピードを前面に押し出しているだけでなく、価格も売れ筋の2万円以下を実現。海外製NASと同様の本体のみのHDDレスとなる「AA0/E」型番のモデルまでもラインナップしてきた。

アイ・オー・データ機器の「HDL2-AA0/E」

 これまで、国内メーカー製のNASと言えば、標準搭載されたHDDを含む長期保証が大きな特徴となっていたが、今回取り上げる「AA0/E」は、海外製NASのように本体のみで、HDDはユーザー自身が購入して装着するタイプとなっている。

 もちろん、今回のHDL2-AAシリーズにも、HDDを内蔵したモデル(2TB/4TB/6TB)が用意されるが、「AA0/E」では、HDDレスという提供形態によって、実売で2万円を切る価格も実現できており、最大116MB/sというスピードだけでなく、価格面でも海外製NASと真っ向勝負する形となっている。

 ズバリ、そのライバルはSynology、中でもホームユーザー向けの「DS216j」と言えるだろう。

 以下の表は、HDL2-AA0/EとDS216jのスぺックを比較したものだ。HDL2-AAシリーズのメモリ搭載量が公表されていないためそこは記載していないが、細かな違いはあるもののスペック的にもほぼ同等となっている。

HDL2-AA0/EDS216j
実売価格1万9800円1万9653円
CPUArmada 382 1.33GHzArmada 385 1.0GHz
RAM-512MB DDR3
ベイ2ベイ2ベイ
LAN1000Mbps×11000Mbps×1
USBUSB 2.0×2/USB 3.0×1USB 3.0×2
サイズ(高さ×幅×奥行mm)188×83×145165×100×225.5
重量1.1kg0.88kg
スループット(読み込み)116MB/s112.99MB/s

 これまで国内製NASは、販売ルートもターゲットとなるユーザー層も異なることから、海外製NASとあまり真正面から対決するようなことはなかったのだが、そろそろこの図式が崩れつつあると言える。

 今や初心者中心のホームユーザーや中小企業などの現場でも海外製NASの認知度は高まっており、後ろから猛烈に追い上げてくるライバルとして、国内メーカーも意識せざるを得ない状況になってきているわけだ。

 果たして、その実力はライバルに比べてどうなのか? 海外製NASとの比較も含めながら実際の製品をチェックしていこう。

シンプルで合理的なデザイン

 まずは、外観だが、アイ・オー・データらしいシンプルながら合理的なデザインだ。

 筐体は樹脂製ながら、表面にヘアライン加工がされたブラックのボディは、なかなか高級感を感じさせる印象がある。

 縦長の筐体も設置面積を考えると非常に合理的。海外製NASの多くは奥行が長いうえ、背面のLANケーブルや電源などの配線を考えると、設置場所がある程度限定されるが、本製品は設置面積が狭く済むため、オフィスのデスクの上などに設置しても邪魔にならない。

 LEDなども本体下部に目立たないように配置されており、点滅が目障りに感じられるようなことがないのもメリットだ。

正面
側面
背面

 インターフェイスは、前面にUSB 2.0×1、背面にUSB 2.0×1、USB 3.0×1、1000Mbps対応LAN×1、電源コネクタが用意される一般的な構成。このほか、背面には底面のスリットから吸い上げた空気で内部を冷却するためのファンも搭載されている。

 本体サイズが小型である影響から、ファンも7cmと小型だ。しかし冬の時期であることも影響していると思われるが、回転数は低く、動作音はほとんど気にならない印象だ(非常に静かな部屋で耳を澄ませばわずかに聞こえる程度)。

 HDDは、冒頭でも触れた通り、今回の「AA0/E」は標準では搭載されておらず、後からユーザー自身が装着するタイプ。

 本体上部後方にあるボタンを押しながら、カバーを取り外すと、上から垂直にHDDを差し込めるベイが2つ見える。

 取り出すときの取っ手にもなる付属の金具をHDDにねじ止めして、上から滑り込ませるように装着すれば、HDDの取り付けは完了だ。

 ネジを外して筐体を2分割し、内部のベイにHDDをねじ止めする海外製NASに比べると、かなりスマートな装着方法と言える。

 それにしても、内部をのぞき込むと狭いスペースに効率よく基盤が配置されている様子がわかる。十分なエアフロ―を確保しつつ、このスペースに配置するのは、相当苦労したのではないかと想像させられる。

上部のボタンを押すと、カバーを取り外し可能
付属の金具をHDDにねじ止め
HDDを装着すればハードウェアの組み立ては完了

USB経由でファームウェアを書き込み

 セットアップに関しては、HDDレスモデルならではの手間が少々必要となる。

 HDD搭載モデルなら、はじめからインストールされているファームウェアを、手動でインストールしなければならないのだ。

 海外製のNASも同様に、ファームウェアを自分でインストールする操作は必要だが、最近のNASは、このあたりのしくみがよくできていて、クラウド経由でLAN上のNASを発見し、自動的にファームウェアをインストールできるようになっている。

 これに対して、今回のHDL2-AA0/Eでは、USBメモリ経由でファームウェアをインストールする必要がある。同社のサポートページから、ファームウェアをダウンロードし(しかもシリアル番号の入力が必要)、自分で用意したUSBメモリに保存。これを本体前面のUSBポートに装着した状態で、電源を入れることで、ファームウェアが書き込まれて起動するというしくみだ。

 実際にやってみると非常に簡単なのだが、今後は、このひと手間をなくす工夫も必要だろう。

同社のwebサイトからファームウェアをダウンロード
USBメモリにファームウェアを保存後、前面のUSBポートに装着して起動すると書き込まれる

 国内メーカーNASのメインストリームがHDD内蔵モデルであることを考えれば、HDDレスのためだけに特別なしくみを用意するのは、まだ時期が早い。しかしながら、その一方で、海外メーカーはHDDレスを前提にクラウドセットアップなどの使いやすさを磨いてきた実績がある。

 同じHDDレスという土俵で見てしまうと、どうしても、この差を実感させられてしまう。今後、海外メーカーNASと真正面から対決するなら、価格や速度だけでなく、こういった部分のブラッシュアップも必要になっていくだろう。

UIは改善の余地あり

 実際の使い心地としては、悪くない印象だ。ファームのインストール後、はじめてWeb設定画面にアクセスすると初期設定が実行され、IPアドレスなどの初期設定をすると、ホーム画面が表示される。

 海外製のNASの多くが、デスクトップを模したマルチウィンドウのUIを採用するのに対して、本製品はクラシカルなwebデザインのUIだ。

大きなアイコンを使ったUIでわかりやすいが、各階層間の行き来が面倒

 デスクトップを模したUIは、はじめて使うとどこで何を設定すればいいのかにとまどうことがあるが、本製品の場合、大きなアイコンで「ネットワーク」や「共有」「ユーザー&グループ」といったように設定がカテゴライズされており、難しい印象はない。

 ただ、設定しやすいかと言われると意見が分かれるところだ。以前も指摘したと記憶があるが、目的の設定ページまでたどり着くまでのクリック数が多いため、別の設定に移動するためにいちいちホーム画面から階層をたどらなければならない。

 たとえば、新しく共有フォルダーを作成しようと、ホームから「共有」-「フォルダー」-「追加」をクリック。設定時に、アクセス権を与えたいユーザーを追加することを忘れていたことに気づいたとしよう。すると、「ホーム」から「ユーザー&グループ」-「ユーザー」-「追加」でユーザーを追加し、再び「ホーム」から「共有」-「フォルダー」……と、とにかくホームを何回も経由しなければならなくなる。

 左側にメニューを表示するとか、各ページの最後によく使う別のページへのリンクを追加するとか、回避策はいろいろありそうだが、とにかく初期設定時にユーザーや共有フォルダーなど、いろいろな項目を設定しようとすると、ひたすらに「行ってこい」を強いられる。

 また、機能がどこにあるのかもわかりづらい。たとえば、本製品はパッケージとして、リモート接続やウイルスチェックなどの機能を後から追加できるのだが、この機能は「システム」の「パッケージ」と、ホーム画面から1階層深い場所に配置されている。

 システムの配下にあることを一度理解すればいいのだが、初回、あるいは忘れてしまった場合は、やはりホームとの行き来を強いられる。

 パッケージとして追加された機能も、別の階層に格納されることがある。たとえば、リモート接続用の「Remote Link 3」は「共有」の配下に配置される。パッケージを追加後、どこに設定があるのか探してホームとの行き来をすると、このあたりで、このUIがイヤになってしまう。

 海外製のNASのようなデスクトップを模したUIが優れているとは思わないが、今のままのデザインでかまわないので、もう少し、改善した方がいいのではないかと思われる。

前評判通りの高いパフォーマンス

 注目のパフォーマンスについては、なかなか優秀だ。以下は、有線LANで接続したデスクトップPC(Core i7/16GB RAM)から、ネットワークドライブとして割り当てたHDL2-AA0/E上の共有フォルダーに対して、Crystal Disk Mark 5.1.2を実行した結果だ(HDDには、Western DigitalのWDRed 4TBを2本利用)。

CrystalDiskMark 5.1.2の結果。リードは100MB/s以上をマークしている

 シーケンシャルリード(Q32T1)で最大113.4MB/sをマークし、公表値の116MB/sに近い値を実現できていることが確認できた。海外製NASと横並びで勝負すると、書き込みで負ける可能性があるが、それでもわずかな差で済むだろう。実用性を考えれば、十分以上のパフォーマンスと言えそうだ。

 なお本製品は、データ保護の方式として、一般的なRAIDではなく、拡張ボリュームという方式を採用している。これは、ブロック単位でデータを複製するRAIDと異なり、ファイル単位でデータを複製し、2台のHDDに保存する方式だ。

 RAIDの場合、初期設定時やHDD交換時のリビルドに数時間単位の時間を要するが、拡張ボリュームではファイルの差分のみを処理すれば済むため、これらの時間が短くて済むのがメリットだ。

 HDDの交換や容量増加も簡単で、たとえば1TB×2のHDD構成から容量アップを狙う場合でも、4TBのHDDを1台交換し、データの同期が済んでから、もう1台交換するという方法で簡単にアップグレードできる。非常に柔軟なシステムと言えるだろう。

ソフトウェア面の今後にも期待

 おそらく、海外製NASとの違いで最も大きなポイントとなるのは、ソフトウェア面だろう。

 前述したように、本製品でもパッケージとして後から機能を追加することが可能となっており、2016年12月28日時点では、以下の機能を利用可能だ。

・クラウドストレージ連携(クラウドとのデータ同期)
・FTP(ファイル転送)
・レプリケーション(NAS間の共有フォルダー同期)
・Trend Micro NAS Security(ウイルスチェック)
・クローン(LANDISKまたはUSB HDDへのデータ複製)
・H/XR/XV移行(他モデルからのデータ移行)
・メディアサーバー(DLNAサーバー機能)
・Remote Link 3(外出先からのアクセス)

パッケージを追加することで機能強化できる

 数えきれないほどのパッケージが使える海外製NASと比べるとだいぶ少ないが、多いと言われる海外製NASでも、実際に家庭やオフィスで使う機能は限られており、単純に数が多ければいいというわけでもない。

 実際、現状で利用できる機能があれば、保存した動画をテレビで見たり、外出先からファイルにアクセスしたり、特定の共有フォルダーをクラウドストレージと同期させたりすることができる。

 Remote Link 3で、接続できるリモート端末を認証できたり、一時公開用のフォルダー(期限を限定して公開できる)にアクセスするためのQRコードを生成できる(スマホアプリからのみ利用可能な機能)あたりは、なかなか面白い。

外部のユーザーと期間限定でフォルダーを共有できるQRコードを生成可能

 また、「なすカメ」というアプリをダウンロードすることで、スマートフォンで撮影した写真を自動的にNASに保存することも可能となっている。ユーザーのニーズの高い機能から優先的に実装を進めている段階と言えそうだ。

撮影した写真を自動的にNASに保存できる「なすカメ」

 ただし、DTCP-IP対応も予定されているが、現時点では実装されておらず将来的な対応となっているうえ、クラウドストレージ連携で利用できるサービスがAmazon S3、Cloudn、Cloudian、Dropbox、Microsoft Azure、Boxとなっており、OneDriveやGoogle Driveなどを利用できない。

 ソフトウェア面も、がんばってはいるが、本格的に海外NASと対抗できるようになるまでには、もう少し時間が必要と言えそうだ。

同期アプリの完成度が今一つ

 最後に、個人的な要望も述べておこう。筆者がNASを使う用途の中でも重要度が高いのは、ファイル転送とクライアントのデータ同期の2つだ。

 ファイル転送は、前述したRemote Link 3の一時共有で使うこともできるのだが、現状はスマートフォン向けのアプリからしか設定できない。筆者のようにPCでの作業が主という人も多いはずなので、PCから共有できる機能が今後は欲しいところだ。

 もう1つのクライアントのデータ同期は、クライアントのバックアップやリモートアクセス、共同作業など、さまざまなシーンで便利な機能だ。DropboxやOneDriveのクライアント向けアプリのNAS版と言えばわかりやすいだろうか。

 今回の製品にもSyncWithというクライアント同期用のソフトウェアが提供されているのだが、このソフトウェアは同期のタイミングが、最短で日単位でしか設定できない(複数スケジュールを作成する手もあるが……)。

 海外製のNASの場合、この同期ソフトの完成度が高く、ほぼリアルタイムでデータを同期できるうえ、ファイルの履歴を保存したり、このソフトウェアからNAS上のファイルを転送するためのURLを生成したりすることができる。

 こういった使い方に関しては、まだまだ海外製NASに及ばない点と言えそうだ。

クライアントとの同期ソリューションは、バックアップやデータの持ち出し、転送などいろいろな用途に使えるため便利だが、本製品ではリアルタイム同期には対応しない

今後に期待したい

 以上、アイ・オー・データ機器の「HDL2-AA0/E」を実際に使ってみたが、ハードウェアとしての完成度はだいぶ上がったと言ってよさそうだ。

 価格とパフォーマンスという点であれば、十分に海外製NASと戦える実力を備えており、実際にお買い得感も高い。データを保存する、共有する、バックアップするといったNASの基本的な使い方をするのであれば、いい選択肢と言える。

 最近のNASは、アプリケーションの稼働など、プラットフォーム色が強くなりつつあるが、この使い方は万人向けではないため、ストレージとしての基本を追求する姿勢は評価したい。

 しかしながら、プラットフォームまで考え方を広げなくても、クラウドストレージとの同期やクライアントとの同期、データ転送など、ストレージとしの応用的な使い方は、もう少し、海外製NASと互角以上に戦えるだけの実力はほしいところ。まだまだ、このあたりの実力差は大きい印象だ。

 設定画面の使いやすさの向上も期待しつつ、今後の進化を見守りたいところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。