第159回:新11a利用時にもユーザーへの細やかな配慮が
NECアクセステクニカの新11a対応ルータ「AtermWR7850S」
NECアクセステクニカから、IEEE 802.11a/b/gの同時通信に対応した無線LANルータ「AtermWR7850S」が新たに登場した。電波法の改正に伴ってチャネルが変更された「W52」および新たに追加された「W53」に対応した製品だ。早速その実力を検証してみよう。
●設定から利用までは非常に手軽
新11aに対応したNECアクセステクニカのルータとカードのセット「AtermWR7850S」 |
電波法の改正に伴って、各メーカーから新11aに対応した製品が続々と登場している。今回、NECアクセステクニカから発売された「AtermWR7850S」もその1つだ。見た目は従来モデルの「AtermWR7800H」とほとんど変わりなく、ロゴやLED周辺の文字の色が変わった程度だが、従来のJ52(34/38/42/46)からW52(36/40/44/48)へと5.2GHz帯のチャネルが変更され、さらに新たに追加された5.3GHz帯のW53(52/56/60/64)の利用が可能になったのが最大の特徴だ。
今回、実際に試用した製品は、J52/W52/W53のすべてに対応したPCカードタイプの子機(AtermWL54SC)が付属したセットモデルであったが、この組み合わせで利用する限りは、新11aを特に意識させられることはなかった。
親機を回線に接続後、クライアントPCにユーティリティをインストール。その後、「らくらく無線スタート」を利用すれば親機側のボタンを2回ほど押すだけでセキュリティを含めた無線LANの設定が完了する。標準設定では、「らくらく無線スタート」がIEEE 802.11b/gでの利用向けに設定されているため、通常はIEEE 802.11gで接続され、新11aに関してはまったく意識させられることはない。
しかも、付属の「らくらく無線スタートEX」を利用することで、ノートPCに内蔵の無線LANや他社製の無線LANカードでも同様に手軽な設定が可能な上に、最新の2.0のファームウェアにアップデートしたPSPからも「らくらく無線スタート」から設定できる。使いやすさという点では、現時点で1、2を争う完成度の高さと言って良いだろう。
●新11a利用時には細やかな配慮が
では、肝心の新11aの機能に関して見ていこう。IEEE 802.11aの対応状況だが、他社製品と同様に、クライアント側(WL54SC)はJ52/W52/W53のフル対応、アクセスポイント側はW52/W53のみの対応となっている。
このため、セットモデルで利用する場合は何の問題もないが、旧11a対応のクライアントを利用する場合、現状はWR7850Sに接続できないことになる。旧11a製品のアップデートは9月以降に予定されているので、アップデートを待つか、IEEE 802.11gで接続する必要があるだろう。
このように旧11a製品との併用に関しては多少の注意が必要だが、そのほかの部分での完成度は非常に高い。特に感心させられたのは新11aを利用する際のユーザーへの配慮の細かさだ。Aterm WR7850SのIEEE 802.11aのチャネルは、出荷時設定で「40(W52)」に設定されているが、これをW53のチャネルに変更しようとすると、以下のような注意メッセージがポップアップ表示される。
W53のチャネルを選択しようとすると、注意点が記載されたメッセージがポップアップ表示される。新11aについてあまりよく知らないユーザーでも安心して利用できる |
要するに、W53を利用する場合、起動時のスキャンのため1分間通信できないこと、そして通信中にレーダーの干渉を検知した場合にチャネルの変更が発生すると通信が途切れる可能性があることをきちんとユーザーに通知している。
以前、本コラムでレポートした通り、地域やアクセスポイントの設置場所によっては、レーダーの干渉を受ける可能性がある。無線LANに関しての知識をある程度持っているユーザーであれば、それを承知でW53のチャネルを利用することもあるだろうが、実際にはそうでないユーザーの方が圧倒的に多い。そういったユーザーに対しても、きちんとリスクを説明しているのは非常に親切だ。
また、万が一レーダーの干渉を検出した場合に、どのチャネルに変更するかもユーザーが指定できる。干渉を検出した場合に、アクセスポイントが自動的にほかのチャネルを選択するのも悪くはないが、この場合はレーダーの干渉こそ避けられても、変更後のチャネルが他のアクセスポイントと干渉してしまう可能性がある(もちろん、それも避けるような仕組みで自動選択してくれる製品なら問題ないのだが……)。
W53選択時は、セカンダリチャネルとしてどこを割り当てるかを手動で設定可能。オフィスなど、複数アクセスポイントを設置する場合に便利だろう |
しかし、WR7850Sの場合、あらかじめ空いているチャネルを調べ、それをセカンダリに設定しておくことで、万が一レーダーの干渉が発生したとしても、他のアクセスポイントとの干渉を避けられるようなチャネルに変更できる。オフィスなど、1つのフロアにいくつものアクセスポイントを設置する必要がある場合などでは、チャネルの配置設計がしやすいだろう。
●すべてのチャネルを調査できるサテライトマネージャ
このほか、クライアント向けのユーティリティである「サテライトマネージャ」の機能も強化された。従来のサテライトマネージャでも周辺で利用されているチャネルを検出し、その利用状況をグラフ表示することができたが、これが11g、11aのJ52/W52/W53、すべてのチャネルに対応している。
この機能は非常に便利だ。無線LANで高速な通信を行なうためには、周辺のアクセスポイントからの干渉を避けるように適切にチャネルを設定する必要があるが、このグラフを参照すれば、どのチャネルが混雑していて、どこが空いているのかがひと目でわかる。
J52/W52/W53のすべてのチャネル状況を調査できる新サテライトマネージャ。グラフの高さで電波の強度なども表示される |
家庭での無線LANの利用率の向上や公衆無線LANサービスの普及を考えると、今後、無線LANを利用する上でチャネルの利用状況を調査することは重要になってくるだろう。また、今回のJ52からW52へのチャネル変更によって、J52のみに対応したクライアントからW52のチャネルを確認できないため(アップデート後のW52クライアントからJ52も検出できない)、実際に干渉が発生していてもその干渉源を特定することが難しいというケースも考えられる。しかし、WL54SCと新しいサテライトマネージャを利用すれば、すべてのチャネル状況を把握できるため、こういった心配もない。
PCカードタイプのクライアントである「WL54SC」は、アンテナ部分がスリムになるなど、細かな改良もなされているので、これだけでも買っておいて損はないだろう。なお、速度なども一通りテストしてみたので購入時の参考にして欲しい。
100BASE-TX | IEEE802.11g | IEEE802.11a | |
下り | 85.9Mbps | 31.21Mbps | 30.8Mbps |
上り | 82.8Mbps | 27.71Mbps | 29.31Mbps |
※クライアントにはPentiumM740、RAM1GB、HDD100GB、Windows XP Home Edition搭載のノートPCを利用 ※回線にはTEPCOひかりを利用し、RBBTODAYにて3回測定した平均を掲載 ※アクセスポイント側では、SuperAGを「使用する(圧縮なし)」に設定 |
●もうひと工夫あれば完璧
このように、Aterm WR7850Sは、全体的な完成度が非常に高く、特に使いやすさという面では文句の付け所のない製品と言える。ただ、個人的には、もう少し工夫が欲しいと感じる部分が2点ほどあった。
まずは、チャネルの自動選択機能の搭載を検討してほしいところだ。確かにサテライトマネージャを利用すれば、チャネルの状況を簡単に把握できるのだが、ユーザー、特に初心者層のユーザーでは、それすらしない場合も考えられる。そういったユーザー向けに、空いているチャネルを自動的に選択する機能が搭載されれば、さらに便利になることだろう。
もう1つは、アクセスポイントモードへの切替え方法を見直して欲しいと感じた。現状、アクセスポイントモードへの切り替えは、初回のウィザードでのみ設定可能で、ルータモードでの設定後は簡単にアクセスポイントモードに切り替える手段が提供されていない。もちろん、手動でルーティングやDHCPサーバー機能をオフにしたり、ウィザードのURLを直に入力するという手もあるが、基本的には初期化して再設定するという方法になっている。できれば、無線LANの設定など、既存の設定を保持したまま、アクセスポイントモードとルータモードを簡単に切替えられるような設定を用意してほしいところだ。
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2005/8/9 11:09
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