第452回:振り込めサギ対策に効果アリ NTT西日本「Photoplus」
離れて暮らす両親へのプレゼントとして、コレはなかなか面白い製品だ。NTT西日本から発売された「Photoplus(フォトプラス)」は、フォトフレームとして使いながら、三者通話の仕組みを使って、いざというときに振り込めサギを撃退できる心強い味方だ。
●リサーチを重ねてきちんと作り込まれた商品
振り込めサギ? フォトフレーム? 「興味がない……」と言われてしまうかもしれないので、先に結論を言っておこう。
NTT西日本から発売されたデジタルフォトフレーム型電話アダプタ「Photoplus(フォトプラス)」は、ちょっと感動するくらいに、よく作り込まれた製品だ。
見た目は普通のフォトフレームのようだが、電話回線を接続できるようになっており、既存の電話と連動して動作するタッチパネル式の電話アダプタになっている。これを利用することで、振り込めサギなどの電話がかかってきたときに、音声を録音したり、三者通話のしくみを利用して犯罪者がなりすました家族や第三者に電話をかけることが可能となっている。
NTT西日本の「Photoplus」。普段は、7インチのフォトフレームとして使いながら、三者通話のしくみを利用して振り込めサギを撃退できる |
もちろん、最終的に振り込めサギの被害を防げるかどうかは、利用者次第といった部分もあるが、それを防ぐための二重三重のしくみ(詳しくは後述)が、「これでもか!」というくらいに詰め込まれており、開発に際して、被害状況の分析や利用者の声を相当反映したことがうかがえる製品に仕上がっている。
三者通話のしくみを使うため、利用環境は選ぶものの、振り込めサギだけでなく、強引なセールス、しつこい勧誘などにも効果が期待できる。ひとり暮らしの女性や両親が帰ってくるまで子供だけで留守番する機会が多い家庭にもオススメの製品だ。具体的に、どこがスゴイのか、その実態に迫ってみよう。
●フォトフレームにプラスして電話機能を強化するアダプタ
NTT西日本から発売された「Photoplus」は、既存の電話機に接続することで、さまざまな機能をプラスすることができる電話アダプタだ。
冒頭でも触れたように、外観は、7インチ(800×480)のタッチパネル液晶を搭載したフォトフレームそのものとなっており、実際、SDメモリーカードなどから内部メモリーへと転送した写真を一定時間おきに表示することができるが、背面に電話回線用のLINE端子(RJ11)×2と電話機接続用のTEL端子×1を備えており、電話に接続して利用するようになっている。
背面の端子を利用して電話回線を2回線と電話機を接続する |
電話に接続することで何ができるのかというと、以下のように主に「振り込めサギ」への対策だ。これらの機能の組み合わせによって、悪意を持った電話や迷惑電話を撃退することができる。
・未登録番号着信時の注意喚起
・通話録音と録音することの相手への通知
・三者通話による本人確認や第三者を交えた電話対応
・三者通話時の通話中などに信頼できる相手に自動でリレーダイヤル
実際、仮に、自分が電話をかける側であったとしたら、早々にターゲットを切り替えることを検討するだろう。
「Photoplus」が接続されている環境では、未登録の番号からの着信を受けたときに、相手に対して「お客様の都合によりこの通話を録音します」というメッセージを自動的に流すことができるようになっている(メッセージなしや「おつなぎしています。しばらくお待ちください」というメッセージも選択可能)。
録音されても関係無いという手練れの相手もいるかもしれないが、この際、電話を受けた側には「未登録者からの着信です。注意してください」というメッセージが同時に流すようになっており、相手をけん制しつつ、受信側に注意を喚起できるようになっている。これだけでも、電話をかけた側に、手間がかかりそうだと思わせるには十分だろう。
未登録の番号から着信すると、文字と音声のメッセージで注意が喚起される。同時に、かけてきた側には、録音していることが通知される |
それでも、相手がひるまなかった場合、三者通話の機能を利用すればいい。「Photoplus」には、2つのLINE端子が用意されており、相手の電話を保留した状態のまま、さらに電話をかけることができるようになっている。
しかも、この流れが非常にスムーズにできるように工夫されている。サギなどの電話の場合、考えさせる間を与えずにまくし立てられる場合があるが、未登録の番号からかかかってきた時点で、画面右半分にあらかじめ登録済みの3件の宛先が表示される。
このため、事故などを装った電話で混乱している場合でも、画面を見ればそこに家族の連絡先が表示されているため、画面をタッチするだけで、電話をかけることができるわけだ。
通話が開始されると自動的に内容が録音される。と、同時に右側にあらかじめ登録しておいた家族の連絡先が3件表示される | リストから連絡先を選ぶと、三者通話のしくみを利用して、家族に電話をかけることができる。最初の通話は保留中になるうえ、電話先が話し中の場合は、リストの次の人へと自動的に電話がかけられる |
「あやしい電話がかかってきたら、冷静に本人に連絡を……」と言われても、実際に冷静になったり、電話をかけるだけの時間的な余裕がないことが被害につながっているが、これなら振り込めサギの電話などで、半ばパニックになっていたとしても、画面に触れるだけで本人に確認の電話を入れることができるわけだ。
しかも、この際、リレーダイヤルと呼ばれる機能を利用可能で、リストから選んだ相手が話し中などで電話に出なかった場合に、自動的にリストの次の人に電話をかけてくれるようになっている。このため、本人に確認の電話ができなかったとしても、自動的に他の家族や親類、友人などに連絡を取ることができるわけだ。
最終的に本人や他の家族に連絡が取れれば、そのまま電話をかけてきた側と三者通話を開始することができるため、「本人ですが……」などというように家族に撃退してもらうことができる。
三者通話を開始すると、本人からかかってきた電話に対応してもらうことが可能。悪質なセールスや勧誘などにも効果が期待できる |
振り込めサギの場合であれば、三者通話で電話をかけた時点で、切られる可能性が高く、本人に撃退してもらうまでもなさそうだが、しつこい勧誘や悪質なセールスなどでも活用できるだろう。
もちろん、この間の通話は録音されるようになっており、1通話最大30分、最大60分分の通話が常に記録されるようになっている(オーバーした場合は古いものから削除)。内部メモリーのみに保存されるため、ファイルを取り出すことはできないが、録音を証拠などとして保存しておくことができるのも大きなメリットだ。
つまり、電話をかけた時点でメッセージを流して録音を開始し、あやしいと思った時点で本人確認ができ、さらに三者通話で撃退と、複数の方法で防御できるというわけだ。ここまでできれば、少なくとも自宅の固定電話にかかってきた振り込めサギや迷惑電話の撃退に大きな効果が期待できるだろう。
●徹底的に追求された手軽さ
このように、数々の工夫で振り込めサギの魔の手を防ぐことができる「Photoplus」だが、この製品で特筆すべきなのは、あらゆる点で考慮されたその手軽さだ。
画面の文字やボタンが大きく操作しやすいうえ、タッチパネルになっているため、画面を見ながら直接操作をすることができる。しかも、前述したリレーダイヤルなど、どうすればパニック時でも操作ができるかが徹底的に追求されているため、とにかく操作に迷うことがない。
もちろん、電話帳への登録や着信時のメッセージ設定、フォトフレームの写真表示間隔など、場合によっては高齢者には難しく感じられる設定もあるが、この製品の場合、高齢者本人が購入するというよりは、心配した家族が購入してプレゼントするというケースが多いと考えられる。
アイコンやわかりやすい表現で、誰でも操作ができるように工夫されている | 回線や応答時間、メッセージの種類など、多少の設定は必要なので、これは家族があらかじめセットアップしておくのが無難 | 電話帳への顔写真の登録なども可能。登録の有無によって、最初のメッセージが変わるうえ、リレーダイヤルなどの機能とも関係するので、この設定は必須 |
三者通話やリレーダイヤルなど、電話を受ける家族側も、この機器の存在や効果を理解してないと意味がないので、細かな設定は家族が代理で行なうのが一般的だろう。
普段電話をかけるときも、画面上で電話帳を確認してかけることができるので、電話そのものの操作性を向上させることもできる。リレーダイヤルの機能などは、病気などで、とにかく誰かに電話で助けを呼びたいときなどにも活用できるので、振り込めサギ対策だけでなく、普段の電話用や緊急連絡用としても活用できる。場合によっては、高齢者だけでなく、子供の連絡用としても活用できそうだ。
●三者通話用の回線をいかに用意するか
以上、NTT西日本のデジタルフォトフレーム型電話アダプタ「Photoplus」を実際に使って見たが、これは思った以上に効果がありそうなうえ、その用途や利用者層も以外に広いのではないかと感じさせる製品になっている。
NTTのいわゆる純正のデバイスは、機能的に面白くても価格が高いという場合が多かったのだが、今回の製品は販売価格が20790円とリーズナブルだ。一般的なデジタルフォトフレームと同等の価格で購入できるので、写真表示用として設置するつもりで手軽に購入できるだろう。電話帳として使ったり、録音も手軽にできるので、既存の電話を便利にするアダプタとして考えてもリーズナブルだ。
SDメモリカーカードの写真をそのまま表示できるようにして欲しいなど、個人的に改善して欲しいポイントもあるが、やはり導入の最大のネックとなるのは回線だ。前述したように三者通話を実現するには、同時に2回線の通話が可能な回線が必須となる。
電話帳も使いやすく、電話を楽にかけることができる。細かな操作が難しくなってきた高齢者などでも安心 | 録音したメッセージを聴くことも簡単にできる。自動的に録音されるので、悪質なセールスや意図せず契約してしまうようなサギの記録などにも活用できる | 写真はSDメモリカードから取り込んでおく必要がある。直接再生できるとよりうれしい |
光ファイバーを利用している場合であればひかり電話の追加番号で対応できるが、アナログ回線を使っている場合は、光ファイバーへの移行、もしくはアナログ回線など、もう1回線が必要になる。
高齢者の場合、インターネットは必ずしも必要ではないため、従量制の「フレッツ光ライト」を導入するのがよさそうだが、申し込みや工事が必要になってしまう。この問題をどうクリアするかが、この製品の課題になるだろう。
なお、今回、NTT東日本のひかり電話に加えて、auひかりの電話サービスでもテストしてみたが、問題なく利用できた。IP電話アダプタを利用して050番号を利用するなど、意外に柔軟な情報で接続できるので、いろいろな構成での利用を検討してみるといいだろう。
ちなみに、現状、iOSやAndroidなどを搭載した携帯端末をスマートフォンと呼ぶが、本製品を使うと、「スマート」という意味をあらためて考えさせられる印象だ。ユーザーが難しいことを意識せずに使えることをスマートと呼ぶのであれば、個人的には、よほど本製品の方がスマートな印象を受けた。
現状のスマートフォンブームと対極にあるような製品だが、環境によっては非常に便利に利用できる。ぜひ利用を検討してみて欲しい製品だ。
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2011/8/9 06:00
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