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第453回:低価格モデルだからとあなどれない高機能NAS
アイ・オー・データ機器「HDL-CE1.0」


 アイ・オー・データ機器から、スタンダードモデルとして位置づけられているNAS「HDL-CE」シリーズが新たに登場した。シングルドライブの低価格モデルだが、パフォーマンスが改善され、スマートフォン対応などの機能も豊富な製品だ。その実力を検証してみよう。

低価格モデルでもココまでできる

 1TBで1万4600円。しかも、LAN&USBのハイブリッドモデルで、リモートアクセス、USBデバイスサーバー機能も搭載。パフォーマンスも50MB/s前後というのだから、お買い得感は相当に高い。

 アイ・オー・データ機器から新たに登場した「HDL-CE」シリーズは、現状のNASの中では、かなり高いコストパフォーマンスを誇るNASと言って良さそうだ。

アイ・オー・データ機器の「HDL-CE1.0」。低価格ながら多機能、高性能なNASとなっている

 もちろん、ハイエンドの製品に比べると、RAIDによる冗長性を確保できなかったり、DLNAサーバー機能を搭載していなかったりと、機能的に物足りない点はいくつかある。しかしながら、本製品には、ファイル共有、iTunesサーバー、リモートリンク2(リモートアクセス)、net.USB(USBデバイスサーバー)、USBクイックコピー(デジカメなどからのデータコピー)、スケジュールバックアップなどの機能が搭載されており、上位モデルとさほど遜色のない機能を備えている。

 SSDの普及によってPCのローカルストレージ容量が少なくなったり、タブレットやスマートフォンなどの利用シーンが増えてきたことを考えると、写真や映像、ドキュメントなどのデータを保存しておく場所として、家庭内にNASが1台あると便利だが、そういったニーズに手軽に答えることができる製品となっている。はじめてNASを利用する入門用として、不満なく使える一台と言えそうだ。

 

静かな動作音

 それでは、製品を見ていこう。まず、外観だが、従来モデルから若干デザインが変更された。

 シンプルなホワイトをベースにした筐体である点は同じだが、縦長のサイズに変更され(横置きも可能)、全面底部にブラックのLED点灯部と吸気口が備えられている。シンプルながら、安っぽさがなく、好印象なデザインだ。

正面 側面
背面 ファンは小型だが非常に静か。動作音はHDDのアクセス音も含め、ほとんど聞こえない

 背面には、電源ボタン、1000BASE-T、USB(機器接続用)、ミニUSB(PC接続用)、電源ジャック、これらに加えて排気ファンが搭載されているが、このファンは非常に静かだ。小型のファンが採用されている製品の場合、回転数が高くなりがちで、音が気になる場合があるのだが、本製品はファンの音はまったくと言って良いほど気にならない。こういった点も、低価格モデルだからという妥協が見られない高評価なポイントだ。

 セットアップも非常に簡単だ。同社の製品は、従来モデルから「Easy Setup」と呼ばれる簡単設定機能が搭載されているのだが、本製品でもUSBでPCに接続後、セットアップ用ソフトの指示に従ってセットアップを進めるだけで、LANでの接続設置が完了する。

 もちろん、リモートアクセスやnet.USBなどの機能は設定ページからセットアップする必要があるのだが、初回設定の敷居が低いので、NASの利用がはじめての人でも安心して使えるだろう。

初期設定以外の設定は通常のWeb画面からセットアップする。シンプルでわかりやすく、レスポンスもいいい

 

実用性十分なパフォーマンスに

 本製品で、個人的に最も高く評価したいのは、パフォーマンスの向上だ。これまで、同社のNASの低価格モデルは、10MB/s前後のアクセス速度しか実現できなかったが、本製品では、このアクセス速度が大幅に向上している。

 実際に、筆者宅の環境でテストしてみたのが、以下の画面の結果だ。本製品では、通常、HDDがNTFSでフォーマットされているが、これをXFSでフォーマットすることで若干パフォーマンスを向上させることができるようになっている。左側が通常モードで、右側がXFSフォーマット時の高速読み取りモードだ。

ThinkPad X201s(Core i7-620LM 2.0GHz、RAM8GB、Intel 320 160GB、82577LM、Windows 7 Professional 64bit)を利用し、CrystalDiskMarkを利用して計測

 XFSでフォーマットした場合の方が若干パフォーマンスが高いが、XFSの場合、USB接続での利用ができなくなってしまうので、この程度の速度差であれば、標準設定のまま使った方が利便性が高そうだ。

 いずれにせよ、今回のHDL-CEは、低価格モデル=遅いというイメージが払拭されており、大量のファイルやサイズの大きなファイルのコピーなどでも、ストレスを感じることがない。これなら、PCに保存されているデータをNAS上に移行する場合でも、手間や時間を軽減できるだろう。

スマートフォンからも利用可能なリモートリンク2

 HDL-CEで注目となるもう1つの機能は、外出先などから自宅のNASにアクセスできる「リモートリンク2」だ。

 リモートリンクは、同社製の他のモデルにも搭載されていた機能だが、設定が簡単になり、使い勝手も向上した。従来モデルでは、外出先からアクセスするときに利用する「iobb.net」への登録にシリアル番号の入力などが必要だったり、UPnPでの設定がうまくできないことがあったが、本製品では希望するホスト名を入力するだけと設定が簡略化された。また、筆者が試した限りではルーターの設定も自動的に行なわれ、設定が非常に楽になった。

 接続側に関しても、PC用のブラウザのUIが改善され、プレビューで画像の内容を確認できるようになったり、操作ボタンでわかりやすく配置されるようになり、使いやすさが向上した。

 個人的には、メールなどを利用した第三者へのファイル転送機能、ドラッグによるファイルアップロード機能などが欲しかったが、このあたりは今後の機能強化を期待したいところだ。

リモートリンク2の設定画面。接続名とパスワードを入力するだけで設定できるようになった。UPnPでの設定も問題なく可能だった PC向けのユーザーインターフェイスも改良され、サムネイル表示などが可能になった

 また、Android用のアプリ(無償)が提供されており、これを利用することでスマートフォンから自宅のNASにアクセスできるようになった。これまでの同社製のNASでも、「ホームメディアリンク」と呼ばれる機能により、iPhoneから自宅のNASの画像・音楽・映像メディアを再生することができたが、これはDLNAの機能を拡張したものであった。

 これに対して、リモートリンク2は、前述したブラウザベースのリモートリンク2のAndroid版となっており、ファイルの種類を問わず、自由にNAS上のファイルにアクセスできるようになっている。

 リモートリンク2の設定さえ済んでいれば、端末側の設定は簡単で、単にiobb.netに登録したホスト名を登録すればいい。これで接続時にNASに登録してあるアカウントを入力すれば、NAS上の共有フォルダーにアクセスできる(LANでの接続も可能なようだが、筆者宅の環境ではLAN側に接続先を登録できなかった)。

Android用のアプリ「Remote Link2 for CE」。iobb.netの名前を指定して外出先からアクセスできる 自宅のNASにアクセスして、写真や映像、文書などを再生できる

 基本的なしくみとして、ファイルをダウンロードして、プレーヤーアプリに渡すという方式になるため、画像や文書程度であれば気にならないが、動画などの場合、3G回線を利用するとダウンロードまでそれなりの待ち時間が必要になる。

 もちろん、ファイルをダウンロードしてスマートフォンのメモリーカードなどに保存することもできるので、サイズの大きなファイルや繰り返しアクセスする可能性があるファイルは事前にダウンロードしておくといいだろう。

 なお、再生できるファイル形式や文書ファイルの互換性などは、アプリ次第となる。たとえば、ドキュメントファイルの対応は同社のWebサイトによるとdoc/xls/pdf/txtとなっているが、QuickOfficeなどがインストールされていれば、xlsxやpptxなどのファイルも表示できる。

3G回線では大きなサイズのファイルの再生には時間がかかる場合もある 端末に各ファイルの再生用アプリがインストールされている場合は、そのアプリで表示される NAS上のファイルのコピーや削除なども可能

 アップロードに関しては、アプリ上からの操作のみとなる。たとえば、写真をアップロードしたい場合は、RemorteLink2を起動後、アップロード先のフォルダをNASタブで選択後、ローカルタブからメモリーカード上のファイルを選択し、アップロードするという手順になる。

 個人的には、カメラでの撮影後やギャラリーからの共有操作で、自宅のNASにアップロードできるなど、他のアプリからもシームレスにアップロードできるようにしたり、特定のフォルダを監視して自動的にスマートフォン上とNAS上で同期するなどできるようになってくれるとありがたい印象だ。

 このほか、Facebookへのアップロード機能も搭載しており、NAS上の写真をFacebookのアルバムに次々にアップロードすることができる。過去に撮影した写真を外出先からFacebookにアップロードしたいという場合に使えるだろう。

 このあたりの使い勝手については、各メーカーともまだ手探りの状況で、どういった使い方が便利なのかが判断しきれていない印象だ。この点についても、今後の機能強化を期待したいところだ。

端末ローカルに保存されているファイルをNASにアップロードすることも可能 Facebookへのアップロードにも対応。アップロードした写真は「Remote Link 2 for CE Photos」というアルバムに保存され、承認すると公開される

 

今後のさらなる進化に期待

 以上、アイ・オー・データ機器の新型NAS「HDL-CE1.0」を試してみたが、実売で1万円強の製品と考えると、機能、パフォーマンスともにバランスよく、おすすめできる製品だ。

 今回は、詳しく取り上げなかったが、net.USBの機能も搭載されており、プリンタや光学ドライブなどのUSB機器を共有する目的でも利用できる。プリンタ共有の環境としては、実は低コストなうえ、複合機のスキャン機能なども利用できるなど、地味に便利なので、ファイル共有+net.USBとしてだけでも買う価値はありそうだ。

 とは言え、スマートフォン対応については、かなり便利になったが、まだ改善の余地はあるのではないかと思える。個人的には、PCの周辺機器ではなく、スマートフォンの周辺機器としいうジャンルをNASで確率して欲しいと思っているので、今後のさらなる発展を期待したいところだ。


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2011/8/16 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ