第467回:IEEE802.11n/a/b/gに対応したUSBデバイスサーバー
サイレックス・テクノロジー「SX-DS-3000WAN」


 サイレックス・テクノロジーから、IEEE802.11n/a/b/gの無線LANに対応したUSBデバイスサーバー「SX-DS-3000WAN」が発売された。USB接続のプリンター/スキャナ、光学ドライブなどをワイヤレスで接続できる製品だ。その実力を検証してみた。


PCだけでなくデバイスもワイヤレスに

 USB機器をネットワーク経由で利用できることから、意外に高いニーズがあるUSBデバイスサーバー。最近では、無線LANルーターやNASなどにも同様の機能が搭載されるようになり、そのバリエーションも徐々に増えつつある状況だ。

 そんな中、USBデバイスサーバーの本家とも言えるサイレックス・テクノロジー(以下サイレックス)から発売されたのが、この「SX-DS-3000WAN」だ。型番の末尾からも想像できる通り、今回のモデルでは無線LANに対応しており、本体に接続したUSB機器をIEEE802.11n/a/b/g経由でネットワークに接続できるようになっている。

サイレックスのIEEE802.11n/a/b/g対応USBデバイスサーバー「SX-DS-3000WAN

 これまでのUSBデバイスサーバーは、基本的に有線LANでの接続となっていたため、USB機器およびUSBデバイスサーバーを設置する場所が、有線LANのケーブルが届く範囲内に限られていたが、今回のモデルの登場で、PC側だけでなく、デバイス側もワイヤレス化が可能なり、機器設置の自由度がグッと広がったことになる。

 プリンターなどは、比較的リーズナブルな普及帯のモデルであっても、本体に無線LANが内蔵されるようになりつつあるが、それでも数年前に購入した製品などではUSBでしか接続できない場合が珍しくない。

 スマートフォンや携帯ゲーム機の普及で、Wi-Fiの利用が一般化し、さまざまな機器をワイヤレスで接続できることが当たり前になりつつある中、PCを中心とした世界では、まだUSBによる接続に頼るシーンも珍しくない。このような古いワイヤードの世界を完全にワイヤレス化してしまうことができるのが、今回のSX-DS-3000WANの魅力というわけだ。


WPSでカンタン接続

 それでは、実機を見ていこう。まずは外観だが、これまでの製品と比べて、丸みを帯びたデザインに変更され、サイズも幅126.4×奥行き71.5×高さ24.2mmと幅と奥行きが若干大きくなった。

 高さが低くなったことで、印象としてはスリムになった感があるが、これまでに比べると若干、設置場所が余計に必要だ。

 インターフェイスは側面にUSB2.0×2、各種LEDが配置されており、背面側に10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T対応の有線LANポート、電源コネクタ、WPS設定に使うプッシュボタンが搭載されている。

側面背面

 注目は、やはり、このボタンを利用する無線LAN機能だろう。冒頭でも触れたように本製品はIEEE802.11n/a/b/gの無線LANに対応しており、最大300Mbpsの高速ワイヤレス通信でネットワークに接続できるようになっている。

 使い方は非常に簡単だ。本製品では、有線LANの有無によって動作モードが自動的に切り替わるようになっており、有線LANを接続せずに電源を入れると、無線LANでの接続が試みられる。

 もちろん、最初は接続先の情報が登録されていないため接続できないが、背面のボタンを長押ししてWPSによる接続モードへと移行後、アクセスポイント側の設定ボタンを押せば、自動的に無線LANの設定が完了する。今回は、NECアクセステクニカのAtermWR9500Nで試したが、他の製品でもWPSに対応してれば、手間なくつなぐことができるだろう。

本体のボタンによって無線LANの設定も手軽に可能

 なお、WPSに対応していない製品を利用している場合は、2つの方法で無線LANの設定を行なうことができる。1つは有線LAN経由での設定だ。有線LAN接続で起動後、付属のユーティリティ、もしくはブラウザからSX-DS-3000WANに接続し、接続先のアクセスポイントの情報を登録する。

 もう1つはUSBメモリーを使った設定だ。同じくユーティリティを使って接続先のアクセスポイントの情報をUSBメモリーに保存し、それをSX-DS-3000WANに接続して読み込ませる。いずれの場合でも、設定はさほど難しくはないが、USBメモリーを使う場合、SSDなどもすべて手動で設定する必要があるので、WPSが使えない場合は、有線LAN経由で設定した方が手間がかからないだろう。

有線経由、USBメモリ、ボタン設定の3方法で設定可能有線LAN経由の場合は専用のユーティリティを使って設定する
ブラウザを使って設定画面にアクセスすることも可能。ステータス画面から無線LANの接続状況や速度も確認できる


IEEE802.11n対応の実力を探る

 このように無線LANでの接続もさほど手間がかからないSX-DS-3000WANだが、気になるのはやはりパフォーマンスだろう。

 以下は、SX-DS-3000WANに、Intel X25-M 160GBを入れた外付けUSBディスクケースを接続し、PC(Intel Core2Duo P8600/RAM8GB/OCZ Vertex 120GB/Windows 7 Professional 64bit)からCrystalDiskMark3.0.1を実行したときの値だ。

SX-DS-3000WANとPCの両方を有線LANで接続した場合SX-DS-3000WANをIEEE802.11a/nで、PCを有線LANで接続した場合SX-DS-3000WANとPCの両方をIEEE802.11a/nで接続した場合

 全体的に、PCに直接USB機器を接続した場合よりもパフォーマンスは落ちる傾向にあるが、やはり無線LAN経由だと、この速度は低下する傾向が見られた。

 ファイルのコピーなど、日常的な使い方であれば全く問題ないが、ハイビジョンの映像再生などに使いたい場合は注意が必用だ。

 実際、SX-DS-3000WANにUSB接続のブルーレイディスクドライブを接続し、ブルーレイのタイトルを再生してみたが、有線LAN同士、PCを有線LANでSX-DS-3000WANを無線で接続した場合であれば、映像をスムーズに再生できたが、無線LAN同士の場合は、数秒おきに映像が途切れる現象が見られ、実用性が難があった。

 離れた部屋で使うなど、無線LANの電波状況によっては、片方だけを有線LANで接続した場合でも、同様の状況が起こる可能性はある。 今回は試していないが、同様の現象はUSB接続の地デジチューナーユニットなどでも発生する可能性がある。映像のように、連続的に多くのデータを伝送しなければならない用途では、有線LANでの利用をおすすめしたいところだ。

 ちなみに、本製品はMac OSにも対応しているため、Mac用のブルーレイプレーヤー(Mac Blu-ray Player)の体験版を使って、MacBook Airから同様にブルーレイのタイトルを再生することも可能だ。実際に試してみたが、やはりこちらも無線LAN同士の場合は、スムーズさに欠ける印象があった。

 MacBook Airの場合、PC側を有線LANで使うのはあまり現実的ではないので、SX-DS-3000WANを有線LANでつなぐことをおすすめしたいが、であれば有線LAN対応のハイスピードモデル「SX-DS-4000U2」を使う手もあるので、このあたりは慎重に検討したいところだ。

Mac版のクライアントも利用可能。プレーヤーを用意し、ネットワーク環境に注意すればブルーレイを再生することもできる


幅広い機器に対応

 以上、サイレックスから発売された「SX-DS-3000WAN」を試してみたが、やはりUSB機器をワイヤレスで使えるメリットは大きいと感じた。わざわざ接続する手間がかからないうえ、同時利用はできないものの複数のPCで切り替えて手軽に利用することができる。

 最近では、薄型のノートPCが主流になりつつあるが、こういった拡張性があまり高くないPCには、必須の製品と言えそうだ。

 対応機器も幅広く、プリンターやスキャナ、ストレージに加え、iPhone4、Webカメラ、キーボード/マウス、スピーカーなど、TVチューナーなど、さまざまな機器を利用することができるのも魅力で、このあたりはさすが多くのノウハウを持っているサイレックスならではと言えそうだ。

 個人的には、ネットワーク経由でUSB機器を使えるのであれば、PCだけでなく、スマートフォンやタレットからも活用できるようになると、より面白いのではないかと感じる。プリンタなどはすでに使えるようになっているが、ストレージや光学ドライブ、TVチューナーなどが使えれば、スマートフォンやタブレットの世界も広がりそうだ。このあたりは、USB機器を提供しているメーカーにもぜひ検討してみて欲しいところだ。



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2011/11/29 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。