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IPカメラを使った監視環境も手軽に構築可能 モバイルアプリも刷新されたQNAP「TS-469 Pro」


 QNAPから中小企業/SOHO向けのミドルレンジNAS「TS-469 Pro」が発売された。従来モデルに比べてパフォーマンスが向上したうえ、IPカメラ対応やモバイルアプリの強化が図られているのが特長だ。その実力をチェックしてみた。

海外で人気のIPカメラ需要

 NASというと、国内ではファイルサーバーの用途が真っ先に思い浮かぶかもしれないが、海外ではどうやら状況が少しずつ変化しつつあるようだ。

 今回のQNAPの製品もそうだが、海外製のNASを使ってみると、IPカメラ機能が必ずと言っていいほど搭載されている。海外では、この機能を目的としてNASを導入するケースが増えているのだ。

 店舗や事務所、倉庫などでは、防犯などの目的で映像を監視、記録したいというニーズは高いが、これまでのソリューションではその費用が大きな壁になっていた。高価なカメラと、その制御装置や記録装置、配線などの導入費用を考えると、とても中小規模の企業や個人事業主では導入することが難しかったからだ。

 しかし、詳しくは後述するが、NASを使えば、このソリューションが安価に、しかも市販のIPカメラを組み合わせるだけで、簡単に構築できてしまう。

QNAP TS-469 Pro。IPカメラと組み合わせて監視ソリューションを手軽に構築可能

 もちろん、NASなので、ファイル共有やバックアップ、リモートアクセスなどのさまざまなソリューションに活用しつつ、監視目的でも利用できるのだから、そのニーズの高さも納得だろう。

 このようなIPカメラへのNASの利用は、国内では、まだ一般的ではないが、海外と同様に中小規模の企業の監視ソリューションとして、今後、普及が見込まれる機能となっている。一体、どのような機能で、どうやって使えばいいのかを検証していこう。

 と、同時に、スマートフォン向けのNASソリューションも、いよいよ実用期を迎えそうだ。今回のTS-469 Proの登場に合わせ、同社製のNAS向けのアプリとして、新たに「Qfile」と「Qmanager」が追加され、かなり使いやすくなった。

 単にパフォーマンスが向上しただけでなく、さまざまなソリューションに活用可能になった「TS-469 Pro」の実力に迫ってみよう。

正面 側面 背面


カメラの機種とIPアドレスを選ぶだけ

 対応IPカメラさえ用意できれば、おそらくものの30分もあれば、すぐに監視映像の録画を開始できるだろう。それくらいTS-469 ProのIPカメラ機能は手軽に利用できる。

 前述したように、IPカメラ機能は、ネットワーク対応のカメラを使った監視ソリューションだ。IPカメラで撮影した映像を一定期間常に録画し続けることが可能なだけでなく、複数台のカメラの映像を一画面で確認できるようにしたり、パン/チルト対応のカメラを遠隔操作することなどが可能となっている。

 カメラの映像を確かめたり、FTPサーバーなどに映像を録画する機能はIPカメラ側にも搭載されているが、複数カメラをTS-469 Proから簡単に、しかも統合的に管理できるのがメリットだ。

 実際の使い方を見てみよう。まずは、対応カメラを用意する。TS-469 Proに新たに搭載された監視ソリューション「Surveillance Station Pro」では、高性能モデルから廉価モデルまで1000以上のIPカメラをサポートしている(対応機種一覧はこちら)。パナソニックなど、国内でも入手しやすい製品も含まれているので、このリストを参考にカメラを用意しよう。

 今回は、少々古い製品だが、コレガのIEEE802.11b/g対応カメラ「CG-WLNCM4G」を利用した。この製品は、前述した対応機種には含まれていないが、ICS1013というOEM元の製品が対応機種となっているため、問題なく利用可能だ。

Surveillance Station Proの利用には対応カメラが必要。今回はOEM元が対応しているコレガ製のIPカメラ(CG-WLNCM4G)を利用

 カメラの準備ができたら、これをTS-469 Proに登録する。ブラウザでTS-469 Proの管理画面にアクセスし、「アプリケーション」の項目にある「Surveillance Station Pro」の設定ページを開き、監視ステーションの機能を有効化する。

 ちなみに、Surveillance Station Proは、監視可能なカメラの台数(レコーディングチャンネル)ごとにライセンスが必要になるが、TS-469 Proでは標準で1台分のライセンスが付属している。同ページのリンクから会員登録をすれば、最大で12チャンネルまで増やすことが可能だ。

 監視ステーションを有効化したら、Surveillance Station Proの設定画面にアクセスし、監視対象として利用するIPカメラの情報を登録する。カメラブランドとカメラ機種の一覧から利用している製品を選び、IPカメラのIPアドレスと管理用IDとパスワードを入力する。

Surveillance Station Proで1台分のライセンスを無償で利用可能。最大12まで増やすことができる IPカメラの設定画面。メーカーと機種、IPアドレスなどを設定するだけでカメラの映像を即座に録画可能

 これで、利用しているIPカメラに合わせた設定が自動的に適用され、映像の録画が即座に開始される。Surveillance Station Proのトップページに戻ると、大小10に分割された画面の左上にCamera 1として登録したIPカメラの映像が表示される。

 このレイアウトは変更可能で、メインのIPカメラを大きく表示し、右側と下側に他のカメラを並べるなど、カメラの台数や監視したい対象に合わせて切り替えることができる。

 また、右側に表示されているコントローラを利用することで、写真のスナップショットを撮影したり、パン・チルト対応のIPカメラの場合は方向を変更することもできる。残念ながら1台しか接続していないが、複数のIPカメラを接続すれば、まるで映画かドラマのような気分も味わえる。

映像の監視画面。複数のカメラを接続すると、分割して表示可能。対応機種は右側のコントローラーでパン、チルトも可能 画像ファイルを組み合わせてカメラの位置を確認することもできる

 フロアマップなどの画像データと組み合わせてカメラの位置を管理したり、複数台のNASに映像を録画している場合は、それぞれを統合管理することもできる。非常に本格的なソリューションで、中小企業や店舗などでは十分すぎるほどの機能と言えそうだ。

 録画した映像は、NASの「Recordings」共有フォルダに、カメラごと、日付ごとのフォルダが自動的に作成され、5分ごとにファイルが分割されたaviファイルとして保存される。ただし、特殊なコーデック(qMP4)を利用しているため、そのままではファイルを開いてもPCでは再生できない。

 録画した映像を確認したいときは、Surveillance Station Proの設定画面から再生ページを開き、ここからコーデックをインストールし、ブラウザ上で再生する。複数カメラの映像を同時に表示することはもちろん、1/16から16倍速まで指定して映像を再生したり、デジタルズーム機能を使って映像を拡大したり、モーション検知機能を利用して、映像に変化があった部分を高速でサーチするといったことも可能だ。

 単に監視するだけでなく、いざというときの映像解析まで手軽にできるのは非常に大きな魅力だ。実際に使ってみると、監視ソリューションとしてNASが重宝される理由がよくわかる。

ファイルはNASのRecordingsフォルダに5分ごとに分割されて格納される
録画した映像はブラウザから確認する モーション検知を利用して録画した映像を解析可能

 なお、現在この監視ステーション機能Surveillance Station Proに対応しているのはTX-X69シリーズのみとなっているが、今後ファームウェアのアップデートにより他機種でも対応予定だそうだ。既存機種のユーザーはファームウェアの対応を待つとよいだろう。


使いやすくなったスマートフォン用アプリ

 TS-469 Proで、もう1つ特長と言えるのが、スマートフォン向けの新アプリだ。QNAPのNAS向けには、これまでQmobileというアプリがiOS/Android向けに提供されてきたが、今回、これに加えてQfile、Qmanagerというアプリが新たに追加された。

 Qfileは、文字通り、NASに保存されているファイルをスマートフォンから利用するためのアプリだ。従来のQmobileは、音楽、写真、動画を扱うためのメディアプレーヤーだったが、Qfileでは種別を問わずNAS上のファイルを扱うことができる。

 具体的に何ができるのかというと、ファイルの参照、ダウンロード、アップロードというった基本機能に加え、ダウンロード用リンクを作成しメールなどで送信できるファイルの共有機能、NAS上のファイルを移動、コピー、削除などができる管理機能などを搭載している。

NAS上のファイルにスマートフォンからアクセスできるQfile(画面はAndroid版)

 使い方は簡単だ。ローカルのNASにアクセスする場合であれば、アプリをダウンロードしてネットワーク上のTS-469 Proを検索するだけでかまわない。外出先からも利用する場合は、ルーターの構成などが必要だが、TS-469 Proには外部からNASに手軽にアクセスすることができるMyCloudNASという機能が搭載されている。

 この機能を利用すれば、ウィザードの指示に従って設定するだけで、「xxxx.mycloudnas.com」というホスト名が割り当てられる。この名前をアプリに登録すれば、前述した機能を外出先からも利用可能になる。

 同様のアプリは他のNASベンダーでも提供しているが、リンクの作成やファイル操作までできるのは、QNAPならではの特長と言えるだろう。

MyCloudNASを利用することで外出先からのアクセスが手軽に可能 MyCloudNASで取得したホスト名を設定すれば外出先でもアプリを利用可能
Qfileでのファイル一覧画面 ファイルを開いたり、ダウンロードする以外に共有も可能 リンクを作成してNASのファイルを送信することができる

 なお、QNAPのNASは、外出先からの利用時のセキュリティについて、他製品にはない独自の工夫を導入している。具体的には、Accss Codeを利用したサービスの利用制限だ。

 MyCloudNASでは、外部に公開するサービスを選択できるようになっており、たとえば、Web管理など、重要なサービスはプライベートとして利用できるユーザーを限った状態で公開できる。

 MyCloudNASの設定画面で、サービスをプライベートに設定後、アクセスできるユーザーとAccess Codeを設定する。これで、MyCloudNAS経由でアクセスした際に、ユーザーとAccess Codeで認証しない限り、プライベートに設定したサービスが表示されなくなる。

 また、マルチメディアステーションなど、通常のNASのユーザーアカウントに加えて、アプリケーション側でもアカウントを別に管理できるようになっているなど、ユーザーごとに利用できるサービスやアクセスできるフォルダを個別に管理できるようになっている。

 リモートアクセスを使いたいが、社員全員がNASのすべてのリソースにアクセスできてしまうのは避けたいという場合に便利だろう。

サービスをプライベートに設定することで、ユーザーごとに利用可能なサービスを区別可能 許可したユーザーとAccess Codeの組み合わせで認証された場合のみ利用可能なサービスが表示される

 もう1つのアプリであるQmanagerは、TS-469 Proを管理するためのアプリだ。改めて考えてみると、今までのNAS用アプリになぜ管理用アプリが無かったのか不思議だが、このQmanagerを利用することで、外出先からNASを停止したり、再起動したり、サービスを有効化/無効化したり、CPUやメモリ使用率、ログをチェックすることができる。

 残念ながら停止したNASを起動することはできないが、これで移動中などに急にNASの状態を確認しなければならなくなったときでも安心だ。

 このほか、新アプリではないが、前述したSuveillance Station Pro用のモバイルアプリ「VMobile」も利用可能だ。このアプリを利用することで、スマートフォンからTS-469 Proで管理しているカメラの映像を確認したり、録画したファイルを再生することも可能だ。

Qmanager。NASのCPUやメモリ、ログの確認、再起動やシャットダウンが可能 Vmobileを利用すると、IPカメラの映像や録画も確認できる


かゆいところに手が届くNAS

 以上、QNAPの新型NAS「TS-469 Pro」の機能をIPカメラとモバイルアプリを中心に紹介したが、単なるスペックの向上だけでなく、かゆいところに手が届く細かな改善がなされており、かなり実用性が向上したという印象だ。

 特に監視ソリューションとしての利用は、かなり便利で、店舗や事務所の監視用に非常にオススメできる機能となっている。この機能だけを目当てに購入しても損のない製品と言って良いだろう。

 もちろん、Atom D2700(2.13GHz)、1GBメモリを搭載した実力も高く。以下のようにCrystalDiskMark 3.0.1cでシーケンシャルライトが94MB/s、FTPではGET/PUTともに100MB/s越えを達成している。

 カタログスペックでは、2つあるLANポートを両方とも利用したポートとランキング利用時で200MB/s越えも可能と紹介されているので、パフォーマンスについても心配する必要は無いだろう。いろいろな用途に使えるので、単純なファイルサーバーからのリプレイスをぜひ検討して欲しい製品だ。

CrystalDiskMark 3.0.1cの結果
PC(Core i7-860/RAM12GB/2GB RAMDISK/Intel Desktop CT 1000BASE-T)からFTPで1GBのファイルを転送したときの結果



関連情報



2012/7/17 00:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ