清水理史の「イニシャルB」

クラウド的な使い方がより手軽に
QTS4.0で強化されたQNAP「Turbo NAS TS-221」その2

 QNAPから、TurboNASシリーズの新製品「Turbo NAS TS-221」が発売された。前回、一新されたUIを中心に基本機能を紹介したが、今回はパーソナルクラウド的な使い方を実現可能なリモートアクセス機能やスマートフォン対応について詳しく紹介する。

 なお、前回の記事公開後にHDDをWD Redを入手したので、ベンチを再計測した。再京速の結果は前回の記事に追記したので、興味がある方は合わせて参照していただきたい。

VPNまでシームレスに設定可能

 設定画面からmyQNAPcloudの利用を開始し、ユーザーアカウントやデバイス名を登録するだけ。

 これで、ルーターの構成からサービスごとのアクセス許可、VPNのセットアップまで、すべての設定が自動的に構成され、ローカルに設置した「Turbo NAS TS-221」が、インターネットに直結されたパーソナルクラウドとして機能するようになる。

 これまで、NASを自分、もしくは自社のクラウドストレージとして利用するためのソリューションはいくつか存在したが、このmyQNAPcloudのしくみは、その中でもトップレベルの手軽さと言っていいだろう。

ルーターの設定などが自動化され、リモートアクセス環境を非常に簡単に構築できるようになった

 基本的な仕組みとしては、従来通り、ファイルアクセスや設定画面へのアクセス、VPNのポートなどを開放し、外部からアクセスできるようにする機能だが、myQNAPcloudと呼ばれるインターネット上のサイトを用意することで、ドメイン名の管理を簡易化したり、外出先からアクセスする際のポータルとして利用することを可能にしたうえ、これらの設定や利用を初期設定ウィザードによって、一発で、しかもシームレスに済ませることができるようにしている。

 従来のNASの作法から考えれば、ルーターとDNSの設定くらいはウィザードで済んだとしても、VPNを使うために、サービスを有効化したり、ユーザーに権限を与えたりと、設定画面の中を迷いながら、個別に設定を変更する必要があったが、本製品では、使いそうな機能は初期設定でまとめて有効化してしまうというアプローチが取られている。

 ある意味、大胆とも言えるが、NASやネットワークの設定に慣れていないユーザーでも、一発で、かなり多機能なパーソナルクラウド環境が構築できるのは、大きなメリットと言えるだろう。

myQNAPcloudを利用する

 もう少し、具体的に設定方法を解説していこう。

1)設定開始

 LAN上にTS-221を設置後、QTS4.0の設定画面へとアクセスし、トップページに配置されたアイコンから「myQNAPcloud」をクリックして起動する。

2)myQNAPcloudの初期設定

 myQNAPcloudの簡単な説明と管理用の画面が表示されるが、標準では、もちろん有効になっていないので、「使用開始」ボタンをクリックして設定を開始する。

3)アカウント作成

 ウィザードが起動するので、設定を開始する。まずは、myQNAPcloudを利用するためのアカウントを作成する。サインイン後にIDとして使うメールアドレスとパスワードを入力しておこう。

4)デバイス名を設定

 続いて、myQNAPcloud経由で自宅のTS-221にアクセスするためのデバイス名を設定する。「[デバイス名].myqnapcloud.com」というDynamicDNS名としても使えるようになるので、わかりやすい値を設定しておこう。

5)ルーターの設定

 アカウントの作成が完了すると、続けてルーターの設定が自動的に実行される。外部からアクセス可能にするためにUPnPを利用してポートフォワードの設定が自動的に行なわれる。今回、NTT東日本のフレッツ光ネクストの環境(PR-300SE)を利用したが、問題なく、すべての設定を自動的に完了させることができた。

6)設定完了

 最後に設定項目の概要が報告される。ルーター構成やデバイス名、myQNAPcloudに公開する内部サービス、VPNサーバーの有効化状況などが表示されるので、どのような設定が行なわれ、エラーが発生していないかを確認すれば環境だ。

 myQNAPcloudの設定は、基本的にこれだけとなる。この状態で、たとえば外出先のPCから、「http://www.myQNAPcloud.com」にアクセスし、画面上部のテキストボックスにウィザードで登録したデバイス名を指定すると、ポータル画面が表示され、外部からのアクセスが可能に設定されたサービスのアイコンが表示される。

 具体的には、設定画面の「QTS4.0」、ブラウザ上でNASのファイルにアクセスできる「Web File Manager」、NAS上のメディアファイルを参照・再生できる「Multimedia Station」、写真を扱うことができる「Photo Station」、音楽を扱える「Music Station」が利用可能で、ここから各アイコンをクリックし、NASに登録したユーザーでもう一度ログインすることで、LAN上からアクセスしたときと同様にブラウザ経由で各機能を利用することができる。

外出先のPCからmyQNAPcloud.comにアクセスし、デバイス名を指定することで自宅のNASに簡単にアクセスできるようになる

 なお、一点注意が必要なのは公開サービスの設定だ。デバイス名までわかれば、第三者でも、myQNAPcloudからポータル経由で公開されているサービスのアイコンを表示することができてしまう。もちろん、その先にアクセスするためには、NAS上に登録されたアカウントが必要だが、サービスが見えてしまうことに不安を覚える人も少なくないだろう。

 このため、myQNAPcloudでは、設定したサービスをアクセスコードを入力したときのみ表示できるようなっている。

 TS-221のmyQNAPcloudの設定を表示し、サービス一覧で非表示にしたいものをプライベートと設定し、アクセスコードを設定すればいい。これで、以後、www.myQNAPcloud.com上で、アクセスコードを入力した場合のみ、公開したサービスのアイコンが表示されるようになる。基本的には、この設定を有効にしておくことをおすすめしたいところだ。

アクセスコードを設定することで、特定のサービスをプライベートに設定。認証されたユーザーのみがサービスを参照できるように設定できる

スマートフォンからのアクセスも可能

 利用できるクライアントは、PCだけでなく、スマートフォンも対象になっている。ブラウザを利用してアクセスしてもかまわないが、PlayストアやAppStoreに「Qfile」などのアプリが提供されており、これらのアプリで、アクセス先を設定した「[デバイス名].myqnapcloud.com」にしておけばいい。

 Qfileに関しては、スマートフォンでNAS上のファイルをダウンロードしたり、アップロードするのはもちろんのこと、写真の自動同期機能も搭載されている。標準では、Wi-Fi接続時のみ同期される設定になっているが、これにより、スマートフォンで撮影した写真を意識せずにNAS上にバックアップすることができるようになる(標準では後述するQsyncのフォルダに保存するが変更可能)。

スマートフォンからもアクセス可能
スマートフォンからNAS上のファイルをダウンロード・アップロードすることが可能
自動アップロード機能を使って、写真をNASに自動的に同期させることもできる

 また、初期設定でVPNが自動的に有効になることから、VPNを利用してアクセスすることも可能だ。スマートフォンやタブレットの場合は、接続先を[デバイス名].myqnapcloud.com」に設定し、プロトコルにPPTP、暗号化を有効(自動)に設定しておけば、接続が可能になる。

 なお、myQNAPcloud.com上で、VPN接続用のPC向けツール「myQNAPcloud接続」も配布されているが、標準では接続先のドメイン名が「mycloudnas.com」となってしまうことがあるので、「myqnapcloud.com」に修正しないと接続できないので注意が必要だ。

VPN接続用のツールも用意されるが接続先の設定に注意。myQNAPcloudに変更する必要がある。もちろん、このツールを使わずに、WindowsのPPTPを直接構成したり、スマートフォンやタブレットのPPTP接続を利用する事もできる

QsyncでPC上のデータをリアルタイム同期

 新しくなったQNAP TS-221のクラウド的な機能で、もう1つ注目したいのは「Qsync」と呼ばれる同期機能だ。文字通り、PC上のファイルを自動的にNAS上に同期させることができる機能となっており、クライアントに同期用のアプリケーションをインストールするだけで利用可能となっている。

 Dropboxのような機能と言えばわかりやすいと思われるが、LAN上のNASに同期するため、同期がほぼリアルタイムで行なわれるうえ、ファイル容量の制限もない(4GBオーバーのファイルまでは確認済み)。

 www.myQNAPcloud.comのサイトからQsyncのPC用アプリケーションをダウンロード後、ウィザード上で、NASのアドレス(同一LAN上からであれば自動検出可能)、ユーザー名、同期させるフォルダを選択すれば準備は完了だ。後は、Windowsのエクスプローラーの「お気に入り」に追加された「Qsync」フォルダー(もしくは\Users\ユーザー名\Qsyc)にファイルを保存することで、自動的に同期が実行される。

Qsyncのセットアップ。PCにアプリをインストールすることで指定したフォルダのデータをリアルタイムにNASと同期させることができる
Qsyncで同期されたフォルダ。PC上からは通常のフォルダとして扱える

 標準設定では、NAS側のフォルダーがユーザーのホームフォルダ上の「.Qsyc」という隠しフォルダになるため、同期されたデータにはファイル共有などから直接アクセスすることはできず、ブラウザから「File Station」経由でアクセスするか、スマートフォンの「Qfile」経由でないとアクセスできないが、意識せずにPC上のファイルがNAS上に同期され、myQNAPcloudやアプリ経由で外出先からアクセスできるようになるのは非常に便利だ。

 バックアップ的な意味でも使いやすく、万が一のPCのクラッシュした場合でも、いつでもNAS上で同期したデータにアクセスできる。NAS上のQsyncフォルダは、ゴミ箱機能も標準で有効になっているため、万が一、ファイルを削除したとしても救済可能となっている。

 また、PC上の同期フォルダに保存したファイルは、右クリックのコンテクストメニューから、ダウンロード用のURLも生成可能となっている。もちろん、ローカルPCのファイルではなく、同期されたNAS上のファイルへのリンク先となっているため、データを第三者と共有するのが非常に楽になっている。

 他社製のNASでも、共有のためのリンクを生成することはできるが、NAS上にファイルを保存してから、NASのUI上で共有リンクを作成する必要があり、2度手間だった。これに対して、Qsyncであればローカル上にファイルを保存したまま、しかもPC上から直接リンクを作成できる。この使い勝手の良さには感心した。

同期先のフォルダはFile Stationから参照可能。ゴミ箱も利用可能で削除したファイルも復旧できる
PC上の同期フォルダから共有リンクを作成してメールで通知することも可能。手数が少なくて済むので非常に便利

ハードもソフトもトップレベルに

 以上、QNAPのTS-221を例に、QTS4.0の新機能を紹介したが、かなり使いやすくなった印象だ。正直、これまでQNAPのNASは、ハードウェアの性能と拡張性には定評があったものの、中上級者向けというイメージが強く、使い安さという点では譲る面も少なからず存在した。

 しかしながら、今回のQTS4.0の登場で、難しいというイメージが完全に払拭され、初期設定だけでなく、リモートアクセスや同期といった高度な機能であっても、ユーザーのレベルを問わず、簡単に扱えるようになった。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアでもトップレベルのNASに成長したと言っても過言ではないだろう。

 おそらく、従来の3.8系のOSを搭載した旧シリーズもしばらくの間は入手可能と思われるが、個人的には、多少、価格が高かったとしても、このQTS4.0対応製品をおすすめしたいところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ