清水理史の「イニシャルB」

Haswell搭載の新MacBook Air登場
AirMac Time CapsuleでDraft11acの実力を検証する

 アップルから、新世代のMacBook Airが発売された。Haswellを搭載したことが大きなトピックだが、無線LANがDraft11acに対応している点も見逃せないポイントだ。同じく、Draft11ac対応で刷新されたAirMac Time Capsuleとともに高速無線LANの実力を検証してみた。

最大速度は867Mbps

 Draft11ac対応と、「3倍速い」いうことは明記されているものの、果たして、その実力はどれほどのものなのだろうか?

 そんな疑問を晴らすため、アップルから新たに登場した新MacBook Air 11インチとAirMac Time Capsuleを購入し、実際に無線LAN環境をテストしてみた。

Draft11acに対応した新MacBook Air 11インチモデルとAirMac Time Capsule(2TB版)

 まずは、仕様から確認していこう。比較的、仕様が明確なのは、アクセスポイント兼NASとなる「AirMac Time Capsule」だ。こちらは、製品情報ページに、最大1.3Gbpsと速度が明記されており、アンテナも2.4GHz用に3本、5GHz用に3本の計6本を上部に搭載していると記載されている、現状発売されているバッファローのWZR-1750DHPやNECアクセステクニカのAtermWG1800HPと同等のスペックを誇っている。

 AirMac Time Capsuleの分解写真が掲載された海外サイトの「iFixit」の情報によると、3ストリームMIMOに対応し、最大1.3GbpsまでサポートするBroadcom BCM4360を搭載しているとの情報と、ビームフォーミングに対応しているという公式サイトの情報から考えると、バッファローのWZR-1750DHPに近い仕様と言えそうだ。

正面
背面
底面

 一方、MacBook Air 11の方だが、こちらは仕様があまり明確にされていない。メーカーサイトでは、Draft11acに対応していること、従来のMacBook Airに比べて3倍速いことが謳われているのみとなる。

 このため、推測するしかないのだが、同じく、分解写真が掲載されたiFixitの情報によると、チップはAirMac Time Capusuleと同じBroadcom BCM 4360となっている。

 このチップは、Broadcomの製品情報ページにも記載されている通り、1.3Gbps、3ストリームMIMO、80MHz幅、256-QAM、ビームフォーミングなど、現状のDraft11acの機能をフルにサポートした製品だが、残念ながら今回のMacBook Air 11では1.3Gbpsでの通信はできない。

 iFixitの写真をよく見ると、アンテナが2本しか接続されていないことで分かるとおり、MIMOは2ストリームまでとなっている。つまり、最大速度は867Mbpsということになる。

新型MacBook Air 11。1.3Gbps対応のBroadcomのBCM4360が搭載されているものの、アンテナが2本しか接続されていないため2ストリームMIMOの867Mbpsが最高速度となる
AirMac Time Capsuleに接続したときのシステムレポート。11ac接続で転送レートは867Mbpsとなっている

 AirMac Time Capsuleも「3倍」、MacBook Airも「3倍」と、表記されるので、紛らわしいのだが、あくまでも、それぞれの従来機種と比較した場合の「3倍」という意味のようで、MacBook Airに関しては、従来モデルのIEEE802.11n(5GHz、300Mbps対応)と比較した場合の速度ということになる。300×3=900なので、867Mbpsであれば、約3倍というのも納得できるところだ。

2.4GHzは20MHz幅、5GHzの有効化も必要

 実際の使い勝手は、さすが純正オプションだけあって、簡単に設定できるように工夫されている。

 一般的な無線LAN製品であれば、WPSなどのボタン設定、スマートフォンであればQRコードを利用して接続することになるが、AirMac Time CapsuleとMacBook Airの場合は、「AirMacユーティリティ」を利用して、ネットワーク上のAirMac Time Capsuleを発見し、ユーティリティからウィザード形式で設定するという流れになる。

初期設定には、AirMacユーティリティを利用する。出荷時状態で起動すると、「Apple Network xxxxxx」という暗号化なしのネットワークとして見えるが、この設定で、SSIDと暗号化キーを設定できる

 Windowsの世界、いや、Wi-Fi Allianceの世界に慣れていると、標準で暗号化が設定されている状態で、WPSやQRコードで接続するため、ユーティリティを使うという方式にちょっと戸惑うが、設定自体は簡単なので、手元にMac OS X搭載機かiOS搭載機があれば、初期設定に迷うことはないだろう。

 ただ、問題は初期設定のままでは、まったくと言って良いほど、AirMac Time Capsuleの実力が発揮されない点だ。

 具体的には、標準設定では肝心のDraft11acの5GHz帯が無効化されており、接続可能な2.4GHz帯も、どうやら20MHz幅固定、もしくは20MHz幅を優先する設定となっているため、無線LANの速度がかなり押さえ込まれてしまうのだ。

 実際、筆者宅でテストしたところ、初期設定後、MacBook Airから何も考えずに無線LANで接続し、「このMacについて」-「詳しい情報」-「システムレポート」を起動し、「Wi-Fi」の項目を確認してみたところ、PHYモードがIEEE802.11n、リンク速度が145Mbps(144.4Mbps)、MCS Indexが15と表示された。20MHz幅、GI(ガードインターバル)=400nsの時の144.4Mbpsと同一の値となるため、40MHz幅で接続されていないことは明確だ。

標準では5GHz帯が無効になっているため、2.4GHzの20MHz幅でしか接続できない。このため、最大速度は145Mbpsとなる

 さすがにDraft11acの1.3Gbps、もしくは867Mbpsを期待して購入したのに、2.4GHz帯で、しかも145Mbpsでしか接続できないとなると、ユーザとしては落胆してしまう。環境によっては、2.4GHz帯でも40MHz幅の300Mbpsで接続できるのかもしれないが、こういった情報が、ユーティリティ、もしくは取扱説明書で、詳しく触れられていないため、ユーザーとしては、現在の速度で、機器の性能をフルに発揮できているのかを判断しにくい状況だ。

 もちろん、帯域幅が狭く混雑している2.4GHz自体を20MHzで利用させることに関しては、決して珍しいことではない。最近の無線LANアクセスポイントでも、標準で2.4GHz帯が20MHz幅固定、もしくは優先に設定される例が多く、40MHz幅を利用したい場合はユーザーが自分で変更するしくみを採用している機種が多い。

 しかしながら、本製品では、2.4GHz帯の20MHz/40MHz設定項目が見当たらないうえ、5GHzを手動で有効にしなければならないことに関しても、知らなければ、気づかない仕様になっている。こういったあたりは、シンプルを通り越して、不親切とさえ言いたくなるほどだ。

 よって、初期設定のままで利用するのは実にもったいないので、すぐに設定を変更することを推奨する。具体的には、前述したAirMacユーティリティを起動し、AirMac Time Capsuleの設定にある「ワイヤレス」タブで「ワイヤレスオプション」をクリックし、「5GHzネットワーク名」にチェックを付けて有効化しておけばいい。

 この状態で、試しに、MacBook Air 11から接続してみたところ、やはり2ストリームの上限となる867Mbpsでリンクした。これが最大速度と考えて問題ないだろう。

Draft11acで接続するには、AirMacユーティリティで5GHzを有効にする必要がある

実効で最大500Mbpsオーバーも

 このように、MacBook Air側の制限で最大速度は867Mbpsとなるため、「結局、1.3Gbpsでは通信できないのか・・・・・・」、と落胆する人もいるかもしれないが、実際のパフォーマンスについては、あまり心配する必要はない。867Mbpsでも十分に速い通信が可能となっている。

 以下のグラフは、木造三階建の筆者宅で、1階にAirMac Time Capsuleを設定し、1階、2階、3階の各フロアから、iPerfによる速度を計測した値だ。比較として、アクセスポイントにNECアクセステクニカのAtermWG1800HPを利用した場合の値を掲載している。

 また、1スレッド転送の場合と、-P3オプションを付けて3スレッド転送した場合の速度を計測したが、1スレッド転送の方には参考として、システムレポートで表示されたWi-Fiのリンク速度とMCS Indexの値も掲載している。

 結果を見ると、-P3オプションで3スレッド計測時に、1階で500Mbpsを越える値を計測できており、最大867Mbpsでもかなり速い結果が得られている。1スレッドでも、1階で300Mbpsオーバー、3階でも100Mbpsは確実に越えているので、なかなか優秀な結果と言えそうだ。実効速度で見ても、現状のIEEE802.11nの3倍速いというのは、決して言い過ぎではないだろう。

   

【表1】iPerf速度(TCP Window Size 256K)
子機 親機 使用周波数帯・速度
UP DOWN LINK MCS index 変調方式 コーディング
レート
MacBook Air 11 Aterm
WG1800HP
5GHz
(867Mbps)
1F 225 365 867 9 256-QAM 5/6
2F 143 296 351 4 16-QAM 3/4
3F 109 205 176 2 QPSK 1/2
TimeCapsle 5GHz
(867Mbps)
1F 262 363 867 9 256-QAM 5/6
2F 155 222 351 4 16-QAM 3/4
3F 117 162 176 2 QPSK 1/2
  • サーバー:Synology DS1512+
  • サーバー側:iperf -s -w256k、クライアント側:iperf -c [IP] -w256k -t60 -i1
  • サーバーとクライアントを変更してUPとDOWNを計測
【表2】iPerf速度(TCP Windows Size 256K,Parallel 3)
子機 親機 使用周波数帯・速度
UP DOWN
MacBook Air 11 AtermWG1800HP 5GHz(867Mbps) 1F 367 406
2F 179 383
3F 132 227
TimeCapsle 5GHz(867Mbps) 1F 488 512
2F 176 257
3F 131 180
  • サーバー:Synology DS1512+
  • サーバー側:iperf -s -w256k、クライアント側:iperf -c [IP] -w256k -t60 -i1 -P3
  • サーバーとクライアントを変更してUPとDOWNを計測

ストレージとしての利用

 ストレージとしては、製品名通り、TimeMachineのバックアップ先として利用することができる。TimeMachineを起動すると、ストレージとして選択可能になるので、有効にしておくといいだろう。

 ちなみに、867Mbpsリンク時と、2.4GHzの145Mbps接続時で、Time Machineによる初回のフルバックアップの時間を計測してみたのが以下のグラフだ。13.05GBとバックアップする容量が少なかったものの、ほぼ半分程度の時間でバックアップを終了させることができた。若干物足りない印象もあるが、バックアップの前後処理やディスクへの書き込みなどを考慮すると十分な効果と言えるだろう。

   

【表3】TimeMachine比較


所用時間(分)
2.4GHz 145Mbps 38
5GHz 867Mbps 23

 もちろん、NASとしても利用できる。ファインダーから初期設定で設定した名前を指定してアクセスすれば、ファイルの読み書きが可能となる。今回利用したMacBook Air 11もそうだが、最近はPCのストレージとしてSSDが採用されることが一般的になってきたので、大きなデータの保存先として利用するといいだろう。

 なお、WindowsからAirMac Time Capsuleの利用に関しては、エクスプローラーから「\\IPアドレス」とIPアドレスを指定してアクセスすれば共有フォルダーを利用することができる。Windows版のAirMacユーティリティも利用可能だが、単にネットワークドライブに割り当てるだけなので、無理に使う必要はないだろう。

 パフォーマンスは、Mac OS Xからの利用は十分な速度が得られるが、Windowsからは、あまり速くない印象だ。以下は、MacBook Air 11にThunderboltの有線LANアダプタ(1000BASE-T)を接続して「Blackmagic Disk Speed Test」を実行した結果と、WindowsからCrystalDiskMark3.0.2fを実行した結果だ。

 プロトコルやテストに使ったツールが全く異なるため比較しにくいが、Mac OS Xからは十分なパフォーマンスが確保できているものの、Windowsからはあまり実用的とは言えないパフォーマンスとなった。基本的には、やはりMacで使うことを前提と考えた方がよさそうだ。

MacBook Air 11にThunderboltの1000BASE-Tアダプタを装着し、BlackMagic Disk Speed Testで、AirMac Time Capsuleのフォルダを指定して実行した結果(サイズは5GB)
有線LAN(1000BASE-T)接続のWindows機からCrystalDiskMark3.0.2fを実行した結果

新型Macユーザーは検討する価値あり

 以上、アップルから登場したDraft11ac対応のMacBook AirとAirMac Time Capsuleを実際にテストしてみたが、5GHz帯の有効化など、注意すべき点はあるものの、Draft11ac対応の無線LANアクセスポイントとして十分なパフォーマンスを備えていると言える。

 IEEE802.11n対応の製品で使うメリットは小さいうえ、WindowsやAndroid端末を接続するとなると、WPSやQRコードなどの接続ができないうえ、ストレージとしてのパフォーマンスが気になるが、アップル製品同士であれば、このような不満を感じることはない。Draft11ac対応のMacBook Airを購入した場合の組み合わせとして、検討すべき製品と言えるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ