第118回:新型DIGA「DMR-E500H」のAVネットワーク機能を徹底活用



 松下電器産業から発売された新型DIGA「DMR-E500H」には、LAN経由で映像を再生できるAVネットワーク機能が搭載されている。このネットワーク機能を応用して、DMR-E500HをAVサーバーとして利用してみた。





DMR-E500HのAVネットワーク機能とは

DMR-E500H

 9月8日、松下電器産業から、新型のHDD搭載DVDレコーダ「DMR-E500H」が発表された。DVD-R最大8倍速、DVD-RAM最大5倍速という新開発のドライブや400GBのHDDを搭載したハイエンド製品だが、この機種の最大の特徴は、何と言ってもAVネットワーク機能だ。

 DMR-E500Hは10BASE-T/100BASE-TXのLANインターフェイスを搭載しており、本体に保存されているMPEG-4映像やJPEG画像をLAN上のPCから再生できる。また、ネットワーク上にもう1台DMR-E500Hが存在する場合は、2台目のDMR-E500Hで1台目のDMR-E500Hのファイルを再生することも可能だ。(こちらはMPEG-2対応)。ネットワーク機能自体は以前の機種(DMR-E200Hなど)にも搭載されていたが、ネットワーク経由での映像再生にまで対応したのは、同社としては初となる。

 具体的にどのように使うのかというと、DMR-E500Hをネットワークに接続した状態で、同一LAN上のPCから、DMR-E500HのIPアドレスを指定して本体にアクセスする。すると、「DIGA MANAGER」と呼ばれるコントロール画面が表示されるので、メニューから「MPEG4」再生を選択する。すると、DIGAに録画されているMPEG-4映像が一覧表示されるので、ここから再生したい映像を選べば、ブラウザ内で再生できるというわけだ。


DIGA MANAGERのMPEG-4再生機能。ブラウザでDMR-E500Hに接続し、一覧から再生したい映像を選ぶとブラウザ内で映像が再生される

 実際に使ってみたところ、この機能は思ったほど便利ではなかった。そもそもMPEG-4映像を再生するには、本体の設定で録画時にMPEG-4を生成するように設定しておかなければならないうえ、DIGA MANAGER自体の画面切替え速度も遅めに感じられた。しかも、MPEG-4を再生するための音声コーデック(G.726)や映像コーデック(XFモードで録画された映像の再生に必須)をインストールしておかなければならないなど、事前の準備も多い。

 ネットワーク経由で再生できる映像は、XFでも320×240(QVGA)の1.5Mbpsだ。携帯電話や携帯プレーヤーに転送して再生するなら何の問題もないが、PCで再生して楽しむには少々物足りなさを感じた。





注目は複数台のDMR-E500Hを接続する仕組み

 しかし、個人的には、MPEG-4再生そのものよりも、複数台接続時にMPEG-2再生が可能な点が興味深い。と言っても、この機能自体に興味を持ったわけではない。DMR-E500Hは実売でも13万円前後もする高価な機器だ。そんな高い製品を2台も買うわけにはいかないだろう。

 興味を持ったのは、この機能を実現している「仕組み」の方だ。複数台接続時のMPEG-2再生は、「Digital Living Network Alliance(DLNA)」のガイドラインに沿っている。ということは、他の機器やPCからDMR-E500Hに接続してMPEG-2を再生したり、その逆にDMR-E500HからUPnP AV対応のサーバーソフトを搭載したPCなどに接続して映像を再生できるのではないかと予想したからだ。

 結論から言えば、この予想は半分ほど的中した。現状は、まだDMR-E500Hをクライアントとして使うことには成功していないのだが、DMR-E500Hをサーバーとして動作させ、PCやネットワークAVプレーヤーなどからMPEG2映像を再生できることが確認できた。





MPEG-2再生方法は2通り

 PCからDMR-E500HのMPEG-2映像を再生する方法は大きくわけて2つある。ひとつはUPnP AVに対応したクライアントソフトを利用する方法、もうひとつはブラウザからDMR-E500Hの映像フォルダに直接アクセスする方法だ。

 まずは、UPnP AVを利用する方法だが、これはデジオンから発売されているDiXiMのクライアントソフト「DiXiM Media Client」などを利用した。この製品は、現状はまだ発売されていないのだが、近日中にパッケージ版が発売される予定だという。今回はデジオンからお借りした開発中のベータ版を利用して検証した。

※編集部注:本記事の掲載日と同日の9月28日に、デジオンよりパッケージ版を11月中旬に発売するとの発表がありました。
関連記事:デジオン、家庭内LANで映像や音楽コンテンツを共有するソフト「DiXiM」
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/6830.html

 この方法で接続する場合、まずDMR-E500Hにクライアントとして利用するPCのMACアドレスを登録し、接続を許可しておく。この設定を忘れると、クライアントからDMR-E500Hに接続してもフォルダやファイルを参照できないので注意しよう。


DMR-E500HにMACアドレスを登録しておかないとファイルを参照できない。MACアドレスの入力後、「決定」ボタンを押して登録する(登録すると左側に○が付く)

 DMR-E500Hの設定が済んだら、ネットワークで接続されたPCで、DiXiM Media Clientを起動する。すると、ネットワーク上のUPnP AV対応サーバーが一覧表示されるので、ここからDMR-E500H(標準では「DVD Recorder」という名前だが、ここでは「DIGA」に変更してある)を選択すると、DMR-E500Hのフォルダを参照できる。「HDD」-「DVD_RTAV」とフォルダをたどっていけば、録画された映像が一覧表示されるので、これを選択すれば、見事に再生が可能だ。


DiXiM Media Client(ベータ版)を利用して、ネットワーク上のAVサーバーを表示。「DIGA(標準ではDVD Recorderとなる)」と表示されているのがDMR-E500Hだ「HDD」-「DVD_RTAV」とフォルダをたどっていくと録画したMPEG-2ファイルを発見できる。ファイルを選択してから若干時間がかかるが、問題なく映像再生が可能だ

 映像を選択してから再生されるまでに若干時間がかかるのが難点だが、DMR-E500Hで録画したMPEG-2映像をそのまま再生できるため、MPEG-4再生のときのような面倒はなく、映像の品質も高い。こちらの方法を使えば、PCでの再生にはMPEG-4を使う必要はないかもしれない。


インテルが開発者向けに提供しているUPnP AV用のMedia ControllerソフトでDMR-E500Hを参照した画面。フォルダの構造などがよくわかる。ダウンロードはこちら

 なお、今回は検証できなかったが、DiXiMのクライアントソフトウェアは、NEC(Media Garage)や富士通(My Media)のPCにもOEM供給されている。また、ソニーのPCに搭載されている「VAIO Media」も同様にUPnP AVに対応しているため、これらのクライアントでも接続できる可能性があるかもしれない。ちなみに、同じくソニーのルームリンクもUPnP AVに対応しているが、試しにルームリンクからDMR-E500Hに接続してみたところ、問題なくMPEG-2映像を再生することができた。


ソニーのルームリンクからDMR-E500Hに接続。こちらでも問題なく接続でき、映像を再生できた

 ただし、それぞれ細かな仕様が異なる場合もあるため、DiXiM Media Clientやルームリンクのようにうまく接続できるとは限らない。たとえば、DiXiM Media ServerやDiXiM Media Clientは、アイ・オー・データ機器のXVDエンコーダー搭載TVキャプチャカード「GV-MVP/XVD」にもバンドルされているが、こちらを利用した場合、DMR-E500Hに接続してフォルダを参照するまでは可能だったが、映像ファイルを参照することができなかった。





ブラウザを使ってフォルダに直接アクセス

 上記のように、UPnP AVクライアントを使うことで、DMR-E500HのMPEG2映像を再生することができるが、この方法の場合、現状はクライアントソフトの入手環境が限られるため、少々敷居が高い。また、映像の再生はできても転送ができない。そこで紹介するのが、ブラウザを利用したもう1つの方法だ。

 まずは事前の準備を行なう。ブラウザを起動し、通常通り、DMR-E500HのIPアドレスを指定して「DIGA MANAGER」にアクセスし、「ビデオタイトル編集」を選ぶ。これで、DMR-E500HがAVネットワークモードに移行し、加えてDMR-E500Hに保存されているMPEG-2ファイルのタイトルと番号(この番号が重要)を参照することができる。


DIGA MANAGERからアクセスし、あらかじめDMR-E500HをAVネットワークモードに移行させる。同時に映像の番号を確認しておこう

 ここまでの準備ができたら、実際にDMR-E500Hのフォルダにアクセスするだけだ。ブラウザのアドレスに、「http://[IPアドレス]:49182/ROOT/HDD/DVD_RTAV/00001_PG.MPG」と入力し、アクセスするとWindows Media Playerなどが起動し、MPEG-2の映像が再生される。


ブラウザで「http://[IPアドレス]:49182/ROOT/HDD/DVD_RTAV/00001_PG.MPG」にアクセス。DMR-E500HのMPEG2に直接アクセスできる

 アドレスを見ればわかるとおり、「49182」が通信に利用するポート番号で、「ROOT/HDD/DVD_RTAV」が映像が保存されているフォルダ、「00001_PG.MPG」が映像のファイル名となる。ただし、このアドレスをそのまま使った場合、再生されるのは最初に録画した映像だけだ。

 そこで重要になるのが、準備のところで参照した「DIGA MANAGER」の「ビデオタイトル編集」の番号だ。この番号は映像のファイル名とリンクしているため、前述したアドレスの「00001」の部分を見たいタイトルの番号に置き換えれば、その映像が再生できることになる。

 もちろん、映像をPCに転送することも可能だ。ブラウザにアドレスを指定した場合、そのままでは再生されてしまうので、別途、ダウンロードソフトなどを利用すればいい。Web上の画像などをダウンロードするためのソフトウェアを利用し、上記のアドレスを指定すれば、MPEG-2映像が無事にPCに転送される。

 なお、ダウンロードソフトを利用する際には、同時ダウンロードや分割ダウンロードを無効にしておく必要がある。DMR-E500Hは同時接続数が1に限られているため、同時ダウンロードなどを実行しようとすると、エラーが発生し、ダウンロードが中断されてしまう。必ず無効に設定しておこう。


ダウンローダーを利用すれば、アドレスを指定して、MPEG2ファイルをPCに転送することもできるダウンロードしたファイルは通常のMPEG-2。再生はもちろんのこと、編集ソフトなどでもそのまま読み込むことができる

 なお、この方法は、筆者宅のDMR-E500Hで成功しただけで、他のDMR-E500Hでも同様に成功するかどうかは保証できない。場合によっては、ポート番号が異なる可能性も考えられるので(おそらく同じだと思われるが…)、必ず成功するとは考えない方がいいかもしれない。

 また、これは余談だが、この方法を見つけるまでには非常に苦労した。フォルダ名はまではDiXiMの利用である程度予想できたのだが、ポート番号とファイル名を探し出すために、UPnPの動作を細かく検証しなければならなかった。具体的には、「UPC」というUPnPのコントロールポイントソフトウェアを利用し、UPnP AVのコマンドを実行しながらの作業となった。上記の方法で、うまく再生できないときは、UPCなどで解析してみる必要があるだろう。


UPCというオンラインソフトを利用して、DMR-E500Hの動作を解析。Browseにパラメーターを与えて実行すると、MPEG2のアドレスがわかるUPCでBrowseを実行した結果画面。DMR-E500Hから返ってきた値からMPEG2へのアクセスURLを確認できる




仕様変更されないことを望みたい

DMR-E500Hからネットワーク上のAVサーバーを検索したところ。VAIO MediaサーバーやDiXiM Media Serverを検出できるが、残念ながら接続することができない

 このようにDMR-E500Hでは、標準でサポートされているMPEG-4再生に加えて、イレギュラーながらもMPEG-2の映像も再生できる。これが可能であるならば、AVサーバーとして十分利用できるので、買って損はないだろう。

 ただし、重ねて記載しておくが、この情報はあくまでも筆者宅での検証結果であり、他の環境でも同様の結果が得られるとは限らない。また、現状の仕様で可能であっても、今後、仕様が変更されれば不可能になる可能性もある。個人的には、仕様が変更されないことを強く望みたいところだ。

 なお、今回はDMR-E500Hをサーバーとして利用する方法を紹介したが、利用するUPnP AVサーバーソフトによっては、DMR-E500Hをクライアントとして利用することも可能だろう。今回はクライアントとして利用することはできなかったが、おそらく対応するソフトウェアや機器なども今後登場のではないだろうか。クライアントとしても動作するようになれば、AV機器のネットワーク機能としては、ほぼ最強と言えるかもしれない。(さらにダブルチューナー搭載なら言うことはないが……)。今後の動向が注目されるところだ。


関連情報

2004/9/28 10:54


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。