第162回:DLNAガイドラインに対応したLAN接続型HDDの実力は?
アイ・オー・データ機器とバッファローの新型NASを比較(前編)
アイ・オー・データ機器とバッファローから、DLNAガイドラインに対応したLAN接続型のハードディスクが登場した(バッファローは対応予定)。実際に両製品を試用できたので、比較を交えつつ、その実力を検証してみよう。
●DLNAに対応したNASが登場
アイ・オー・データ機器の「HDL-AV250(左)」とバッファローの「HS-D300GL(右)」。いずれもDLNAガイドラインに対応したLAN接続型ハードディスクだ |
以前、本コラムで「NASがDLNAガイドラインに対応すれば面白い」という旨の記事を書いたことがあったが、これがついに現実のものとなった。
アイ・オー・データ機器から「HDL-AVシリーズ」、バッファローから「HS-DGLシリーズ」というDLNAガイドライン(Home Network Device Interoperability Guidelines v1.0)対応のLAN接続型ハードディスクが相次いで登場してきた。アイ・オー・データ機器の製品はまだ店頭には並んでおらず、バッファローの製品はDLNAガイドラインの認証がまだ取得できていない状態だが(2005年9月時点)、いずれも近日中に発売、もしくは対応予定だ。
まずは、両製品の概要から見ていこう。アイ・オー・データ機器のHDL-AVシリーズは、すでに発売されているLANDISK HDLシリーズをベースにした製品だ。今回試用した「HDL-AV250」は、250GBのハードディスクを搭載したモデルだが、HDLシリーズ同様にファンレス設計の筐体が採用されており、対応するインターフェイスも100BASE-TXとなっている。カタログ上の転送速度などもHDLシリーズと共通の値となっているので、本体前面のロゴが赤色となる点、およびDLNA対応のメディアサーバー機能が追加されている以外は、従来モデルと同じと考えてよさそうだ。
一方、バッファローのHS-D300GLも基本的には従来モデルをベースにした製品だ。ギガビットイーサ対応のLAN接続型ハードディスク「HD-HGLANシリーズ」をベースとして、本体を銀色に変更、DLNA対応のメディアサーバー機能を追加した製品となっている。今回、試用したモデルは、300GBのハードディスクを搭載したHS-D300GLだ。
HDL-AV250とHS-D300GLの背面。USBポートはHDL-AV250が背面に2ポート、HS-D300GLが前面と背面に1ポートずつ搭載 |
大きさの比較。本体幅はHDL-AV250が薄いが、そのぶん奥行きが長い |
この段階で両製品を比較した際、印象的だったのはアイ・オー・データ機器のHDL-AV250の静かさだ。さすがにファンレスだけあって、ハードディスクのアクセス音以外の音はほぼ聞こえてこない。設置場所によっては、ハードディスクの回転によって振動による音が発生する場合があったが、本体の下に段ボールや防振シートなどを敷くことで改善できた。
同社では1000BASE-T対応のLAN接続型ハードディスク「Giga LANDISK(HDL-Gシリーズ)」も発売しているが、この製品は放熱のためにファンが搭載されている。HDL-Gシリーズではなく、100BASE-TX対応のHDLシリーズベースとしたのは、ホームサーバーとして常時稼働させたときの騒音を押さえたかったからという理由もあるのではないかと感じた。
これに対して、バッファロー「HS-D300GL」は、若干ファンの音が気になった。さほどうるさいわけではないのだが、静かな部屋の場合ではファンの風切り音が聞こえてきたため、実際に利用する際は設置場所を気にする必要がありそうだ。
ただし、HS-D300GLはHDL-AVシリーズと異なり、1000BASE-Tに対応している。ファイルを転送する際の速度が高いのは大きなメリットと言えるだろう。
●転送速度はギガビットイーサ対応のHS-D300GLが有利
続いて、性能面について見ていこう。両製品とも最大の特徴はメディアサーバーとして利用できる点だが、ファイル共有など通常のNASとして利用する場合、その機能や転送速度なども大いに気になるところだ。
結論から言うと、速度に関しては、やはり1000BASE-T対応のHS-D300GLが有利だ。FTPとWindowsのファイルコピーの両方でテストしてみたが、以下のグラフのようにいずれもHDL-AV250を上回る結果となった。特にWindowsのファイルコピーでは、半分近い時間でコピーが完了している。今回のテストでは、メディアサーバーとして利用した場合を想定し、2GB近いMPEG2ファイルをコピーするというテストを実施したが、このようなケースではやはり転送速度の速さが大きなアドバンテージだろう。
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表1:FTP転送テスト |
表1のグラフ |
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表2:Windowsファイルコピーテスト |
表2のグラフ |
ただし、テスト中に1つ気になった点があった。バッファローのHS-D300GLの場合、メディアサーバーで公開設定しているフォルダに対してファイルを転送すると、極端に書き込みが遅くなるケースが見られたのだ。メディアサーバーで公開する設定にしたフォルダに対して、先ほどと同様のテストを行なうと、FTPのPUTで50Mbps前後まで速度が落ち込み、Windowsのファイルコピーに至っては1.9GBのファイル書き込みで17分前後と、通常の5倍以上の時間がかかってしまった。
試しにメディアサーバー機能を無効にしたり、メディアサーバーで公開設定していないフォルダに対して転送を行なってみたが、これらの場合は速度が低下することはなかった。このことから考えると、メディアサーバー機能が何らかの影響を与えていることは明らかだ。
この現象が、今回試用した製品だけで発生するのか、他の製品でも発生するのかまでは未確認だが、詳しく動作を観察してみると、ファイルのコピー後、それをメディアサーバー機能で公開するためのデータベースを作成しているように見受けられ、この作業がボトルネックになっているのではないかと推測できる。
この問題が改善可能なものであれば、ぜひ改善を望みたいが、仕様上避けられないのであれば、通常のファイル共有で利用する際はメディアサーバーとして公開設定していないフォルダを利用するようにしたり、メディアサーバーとして公開したい映像ファイルなどをコピーする際は、一時的にメディアサーバー機能を無効にするなど、運用上の工夫をした方が良さそうだ。
●機能的には一長一短
一方、機能面ではほぼ互角といったところだろうか。両製品とも設定方法に若干の違いはあるが、ユーザーやグループによる管理、共有フォルダのアクセス制御、バックアップ設定、USBプリンタの共有など、基本的な機能に大きな違いはない。
個人的には、バックアップの設定が曜日ごとに細かく設定できるHDL-AV250の機能に感心したが、その反面、HDL-AV250では先にユーザーを登録しないとグループを作成できないなど、ユーザー管理に若干のクセがあるのが気になった。
HDL-AV250のバックアップ設定画面。曜日を指定して、細かなバックアップスケジュールを設定することが可能 |
また、HDL-AV250では、共有フォルダのアクセス制御が、「ユーザー」「グループ」、「全てのユーザー」という3種類の排他設定となっている。このため、特定のグループと特定のユーザーといったように、ユーザーとグループの組み合わせでアクセス制御を行なうことはできない。さらに、共有フォルダのアクセス制御設定も共有フォルダの新規追加時のみ可能で、後から変更することができず、改めて設定を作成する必要がある。製品の性格を考えれば家庭での利用が主となるため、さほど複雑なアクセス制御を行なう必要はないが、オフィスなどで利用するには少々物足りないところだ。
共有フォルダのアクセス制御設定が3パターンに限定されるHDL-AV250。グループとユーザーを組み合わせた複雑なアクセス制御には不向き |
一方、HS-D300GLでは、ユーザーとグループの設定が柔軟で、共有フォルダのアクセス制御もユーザーとグループを組み合わせて設定できる。もちろん、後から共有フォルダのアクセス制御を変更することも可能だ。さらに、HDL-AV250にない機能として、共有フォルダの「ごみ箱」機能も搭載されている。これにより、間違って削除してしまったデータを復旧させることも可能となっている。NASとして複数ユーザーでファイルを共有する場合、ある意味オペレーションミスは避けられないため、ごみ箱機能を利用できるのは大きなメリットだ。
ユーザーとグループを柔軟に組み合わせてアクセス制御を設定できるHS-D300GL。オフィスなどでの利用に便利だ | ごみ箱機能を有効にすると、共有フォルダ上で削除されたファイルが、すぐに削除されず、別フォルダに待避されるようになる。オペレーションミスなどでもファイルの復旧が可能だ |
このほか、HDL-AV250では背面のUSBポートに接続したメディアから自動的にファイルを転送する機能が搭載されていたり、Wake On LANにも対応するが、これらは付加的な機能と言えるだろう。個人的なイメージとしては、家庭向きのHDL-AV250、オフィス向きのHS-D300GLといったイメージだ。
今回は両製品の主な機能や転送速度について比較した。次回はDLNAに準拠したメディアサーバー機能を比較する。
関連情報
2005/9/6 11:03
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