第165回:無線LAN内蔵ノートPCの新11aアップデートが開始
新11aへのアップデートによるメリットを探る



 いわゆる「新IEEE 802.11a」の登場から約4カ月。ようやく既存製品の新11a対応アップデートが開始された。Web上で提供されているアップデートモジュールを利用して、富士通のノートPC(FMV-BIBLO MG 70LN)を実際に新11aへとアップデートした。





ようやく開始された新11aへのアップデート

 2005年5月に周波数帯が変更されたIEEE 802.11a(新11a)。新11aに対応した無線LAN製品も数多く発売されており、すでに利用しているというユーザーも少なくないだろう。

 しかし、新11aには、既存のIEEE 802.11a(旧11a)との互換性という課題が残されていた。新11a対応製品のうち、無線LANアダプタなどのクライアントはJ52/W52/W53とすべてのチャネルに対応しているが、アクセスポイント側はW52/W53対応の製品であり、J52(旧11aのチャネル)には対応していない。このため、無線LAN内蔵ノートPCといったJ52にしか対応していない製品は、新11a対応アクセスポイントに接続することができなかった。

 しかし、この問題もようやく解消されそうだ。9月20日前後から、一部のPCメーカーでPC内蔵の無線LANを新11aへと対応させるためのアップデートプログラムの提供が開始され(原稿執筆時点で筆者が確認したのはNECと富士通の2社)、これを利用することで旧11a対応の無線LAN機能を新11a対応へと変更することが可能となった。

 新11a対応と言っても、J52のみの対応からJ52/W52対応へと変更するのみで、新たに追加されたW53に対応させることはできないが、これでようやく新11a対応アクセスポイントと既存無線LAN製品の互換性が確保されたことになる。





ファームウェアの更新で対応

 まずは、アップデートプログラムの入手だが、これはメーカーのホームページからダウンロードできる。ただし、本コラム執筆時点では、機種ごとのダウンロードページに情報は掲載されておらず、またPCにプリインストールされているアップデート確認ツール「アップデートナビ」でも新11a用のアップデートプログラムが検出できなかったため、「FMWORLD.NET」から手動でダウンロードを行なう必要があった。単に情報の掲載が間に合わなかった可能性もあるが、もしかすると、すべてのユーザーに必要なアップデートモジュールではないため、別ページでの情報提供となっているのかもしれない。

 なお、富士通製のPCには、アセロス社製チップを搭載した製品とインテル社製チップを搭載した製品の2種類が存在するが(IEEE 802.11a対応の場合)、それぞれ個別にアップデートプログラムが提供されている。「J52/W52対応無線LANアップグレードツール(A)」がアセロスチップ用で、「J52/W52対応無線LANアップグレードツール(I)」がインテルチップ用だ。同社のホームページから、それぞれ対応機種を参照できるので、事前に対象機種を確認し、所有する機種に合ったアップデートプログラムをダウンロードしておくといいだろう。

 また、新11aのアップデートに関しては、いったんファームウェアをアップデートすると元に戻すことはできない、アドホック通信がW52のチャネルのみに制限される、W53には対応できないといった注意点がある。これらの注意事項もダウンロードページに記載されているので、ダウンロード前によく確認しておくことも大切だ。


「J52/W52対応無線LANアップグレードツール(I)」のダウンロードページ。事前にアップデートに際しての注意点が記載されているのでよく読んでおこう

 ダウンロード後のアップデート作業は非常に簡単だ。展開したファイルの中から「SETW52.EXE」を実行し、ウィザードの指示に従ってアップデートを進めればいい。これで無線LANモジュールのファームウェアがアップデートされる。

 筆者の環境では、最新のドライバがすでにインストールされていたためか、ドライバの更新は不要で、以前のドライバをそのまま利用できた。場合によっては、ドライバの更新も同時に行なわれる可能性もあるので、このあたりは画面の指示をよく確認して慎重に作業すべきだろう。


展開したプログラムを実行することでファームウェアがアップデートされる。作業イメージとしてはドライバの更新とほぼ同じで、非常に簡単だ




W52への接続も問題なく可能に

 アップデートが完了したら、まずはW52に対応できているかを確認しよう。富士通では、アップデートプログラムに加えて、「J52/W52対応確認ツール」というユーティリティプログラムも配布している。これをダウンロードして実行すれば、以下の画面のように、対応する周波数帯をアイコンで確認できる。


「J52/W52対応確認ツール」を利用して対応周波数を確認可能。左側がアップデート前の状態で、右側がアップデート後の状態。アップデート後はJ52/W52が利用可能になっている

 試しに、筆者宅でJ52/W52/W53のすべてのアクセスポイントを可動させ、その接続状況を確認したが、当然のことながらW53のアクセスポイントは見えなかったものの、J52とW52のアクセスポイントは問題なく検出でき、インターネットへの接続も可能だった。


FMVに付属の無線LANユーティリティ「Mr.WLANner」を利用してアクセスポイントに実際に接続。アップデート前(左画面)はJ52とIEEE 802.11gのみしか接続できなかったが、アップデート後(右画面)はW52のアクセスポイントも認識されている。ただし、W53には対応しないため、W53のアクセスポイントは表示されていない

 筆者宅では、すでにIEEE 802.11aのチャネルをW52で運用していたため、今回の無線LAN内蔵ノートPCをしかたなくIEEE 802.11gで接続していたが、これでようやくIEEE 802.11aで接続することが可能になった。もちろん、IEEE 802.11gでの接続でも問題はないのだが、近所で運用されるアクセスポイントが少なくなく、最近ではせっかく干渉を避けるように設定していたチャネルが、いつのまにか設置されたアクセスポイントと重複しているというケースもたびたびあった。新11aが利用可能になったおかげで、この問題から開放されたのはうれしい限りだ。

 また、新たにW52の検出が可能になったおかげで、IEEE 802.11aで空いているチャネルを確実に探せるようになったのもメリットだろう。J52のみの対応の場合、例えば近隣でJ52の34チャネルとW52の36チャネルが運用されていた場合、J52は検出できてもW52は検出できなかった。もちろん、J52/W52/W53すべてに対応した無線LANカードがあれば調査は可能だが、そのためだけに新11a対応無線LANカードを用意するというユーザーは少ないだろう。しかし、今回のアップデートで、少なくともJ52/W52のチャネルについては手軽に調査できるようになった。

 新11a対応アクセスポイントをすでに利用しているユーザーはもちろんだが、現在、旧11a対応アクセスポイントを利用しているユーザーでも、上記の理由から、PC側だけでもアップデートしておく価値はあるだろう。もちろん、従来通りJ52で利用することもできるので、アップデートによるメリットはあっても、デメリットはほとんどない(アドホックの制限程度)と思われるので、この機会にアップデートしておくことをお勧めしておきたい。


関連情報

2005/9/27 10:58


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。