第166回:Yahoo! BBモバイルとモバイルポイントの統合サービス開始
「BBモバイルポイント」を実際に利用してみる



 これまでYahoo! BBが試験サービスとして運営していた公衆無線LANサービス「Yahoo! BBモバイル」と日本テレコムが運営していた「モバイルポイント」が統合され、10月3日から、新たに「BBモバイルポイント」としてサービスを開始した。さっそく利用してみたので、その詳細をレポートしていこう。





日本テレコムがサービスを運営

日本テレコムの「BBモバイルポイント」サービス情報ページ
http://www.japan-telecom.co.jp/business/wlan/

 2002年春から3年以上という長期間に渡って続けられていたYahoo! BBモバイルの試験サービスが終了した。と言っても、完全になくなってしまったわけではなく、インフラの管理やサービスの運営を日本テレコムに移管。同時に日本テレコムが運営してきた「モバイルポイント」とサービスを統合し、「BBモバイルポイント」という新たなサービスとして再出発したことになる。

 公衆無線LANサービスは、撤退や新規参入が激しく、サービスの統合も相次いで進められている分野であるが、今回のサービス統合で、マクドナルドやデニーズなどの飲食店で利用可能だったYahoo! BBモバイルのエリア660カ所、JR駅構内や周辺施設で利用可能だったモバイルポイントのアクセスポイント120カ所が統合され、約820カ所という広いエリアをカバーする公衆無線LANサービスが登場したわけだ。

 と言っても、BBモバイルポイントは一般的な公衆無線LANサービスとは少々提供形態が異なる。一般的な公衆無線LANサービスは、サービスへの加入申し込みを行なうことで誰もが利用できるサービスとなっているが、BBモバイルポイントはホールセール型のサービスとなっており、現状は基本的にはISPのオプションサービスとして提供されている。

 このため、提携ISP以外を利用しているユーザーは現状は利用できない。また、料金などもISPによって異なる。たとえば、Yahoo! BBの会員の場合、月額304円(無線LANパック利用者は無料)で利用可能となっているが、ぷららの場合は日額315円での提供となっており、So-netの場合は月額1,470円となっている。Yahoo! BB会員向けの月額304円というのは、8月に試験サービスが開始され、低料金で話題となったライブドアの「livedoor Wireless」よりもさらに安い破格の価格設定と言えるが、そのほかのISPの料金はケースバイケースだ。

 なお、新たなBBモバイルポイントで採用されている無線の規格は基本的に従来と同じとなっており(基本的にIEEE 802.11b)、今回のサービス統合に伴ってインフラ的に大きな変更は受けていない。





BBモバイルポイントを利用するには?

 続いて、BBモバイルポイントの利用方法について見ていこう。BBモバイルポイントを利用するには、以下の3種類の方法が存在する。

(1)ISPにてオプションサービスを申し込む
(2)時間、日付単位の従量課金で利用する(対応ISP/コースの契約が必要)
(3)おためしID/PWサービスを利用する

 (1)は、Yahoo! BBやSo-netなどで提供されているサービス形態だ。ISPの会員向けページなどから、オプションサービスの申し込みを行なうことで、ESS-IDやWEPキーなどの情報が配布される。ISPのユーザーアカウントから、配布されたESS-IDやWEPキーを設定してBBモバイルポイントが利用可能になる。

 (2)は、ODNやぷららなどで提供されているサービス形態だ。BBモバイルポイントに対応した接続コースに加入していれば、特別な手続きなどは必要はなく、BBモバイルポイントを利用できる(ESS-IDとWEPキーの確認作業は必要)。料金はISPによって異なるが、たとえばODNの場合20分ごと157.5円(上限2,100円)で、ぷららの場合は1日(ログインした当日の24時まで)315円となっている。

 (3)は、日本テレコムが提供する無料のお試しサービスだ。携帯電話やPHSから「t@bbmp.jp」に空メールを送信するか、「http://www.bbmp.jp」にアクセスすることで、接続に必要なESS-IDとWEPキー、10分間の利用が可能なIDとパスワードが発行される。これを利用することで、短時間だがBBモバイルポイントの利用も可能だ。

 ただし、これらのうちどの方法を使うか、実際にはユーザーが選ぶことはできない(ISPを変更すれば可能だが)。前述したように、BBモバイルポイントはホールセール型のサービスとなるため、どの方法が利用可能かは、現在契約しているISPに左右されてしまう。本来であれば、頻繁に使うなら(1)、たまにしか使わないなら(2)、一時的な利用は(3)といったように、ユーザー側でサービスを選びたいところだが、そうできないのは少々残念なところだ。

 なお、以前のYahoo! BBモバイルでは、携帯電話からサービスに加入することができたが、今回のBBモバイルポイントでは、前述した「おためしID/PWサービス」を除いて、携帯電話やPHSからサービス利用申し込みを済ませ、すぐに使うことは原則的にできないと思った方がいい。ISPによっては、事前の登録などが不要なケースもあるが、ESS-IDやWEPキーの確認は必要なので、事前に何らかの準備が必要と考えておくべきだろう。





実際の使い心地は?

従来までモバイルポイントのサービスエリアだった駅で接続をテスト。間に合わなかったのかウィンドウのロゴステッカーはモバイルポイントのままだ

 それでは、実際に使った感想をレポートしていこう。まず接続を試したのは、これまで日本テレコムのモバイルポイントがサービスを提供していたJRの駅周辺(新宿駅南口)だ。

 サービス開始に間に合わなかったのか、ウィンドウに貼られていたロゴステッカーがモバイルポイントのままであったが、事前に入手したESS-IDとWEPキーを利用してアクセスポイントに接続。その後、ブラウザを起動してISPのユーザーIDとパスワードを入力することで、問題なくインターネットを利用することができた。


富士通製PCにプリインストールされている無線LANユーティリティを利用してアクセスポイントを参照したところ。BBモバイルポイント用のESS-IDとWEPキーを設定することで接続できる

接続後、ブラウザを起動するとユーザー認証ページが表示されるISPのIDとパスワードを入力すればBBモバイルポイントのようこそページが表示され、以後、インターネットに接続可能となる

 念のためスループットも計測してみたが、以下の表のように下りが2.7Mbps、上りが770kbps前後と少々遅めの結果となった。上りの速度からおそらくバックボーンにADSLが使われていると予想できるが、何人かPCを利用している人も見かけたため、複数ユーザーでの利用だと考えると妥当なところだろう。

表1:スループットテスト(駅)
1回目2回目3回目4回目5回目
下り(ISP→PC)2.72Mbps2.53Mbps2.68Mbps2.71Mbps2.74Mbps
上り(PC→ISP)643kbps776kbps776kbps595kbps776kbps
※クライアントには富士通 FMV-Biblo MG(PentiumM740、RAM1GB、HDD100GB、Windows XP Home Edition)を使用
※測定にはRBB Todayを使用

先ほどの駅から徒歩1分以内と近い場所にあるマクドナルドでテスト。こちらはBBモバイルポイントのロゴステッカーに貼り替えられていた

 続いて、先ほど利用したJRの駅から徒歩1分以内という非常に近い場所にあるマクドナルドでテストしてみた。マクドナルドは、従来、Yahoo! BBモバイルがサービスを提供していたが、今回のサービス統合で、Yahoo! BBモバイルのアクセスポイントのESS-IDとWEPキーはすべて廃止され、BBモバイルポイントのものに変更されていた。

 Yahoo! BBモバイルからBBモバイルに移行するユーザーは、このあたりもきちんと事前に確認しておくべきだろう。なお、スループットは先ほどの結果より若干速い結果となった。

表2:スループットテスト(店舗)
1回目2回目3回目4回目5回目
下り(ISP→PC)4.09Mbps4.17Mbps2.93Mbps2.24Mbps4.23Mbps
上り(PC→ISP)867kbps883kbps884kbps883kbps883kbps
※クライアントには富士通 FMV-Biblo MG(PentiumM740、RAM1GB、HDD100GB、Windows XP Home Edition)を使用 ※測定にはRBB Todayを使用

PSPでの接続も問題なく可能だった。また、店舗によってはBBモバイルポイントのパンフレットが設置されているケースもあった

 さらに、筆者宅の近所にある店舗を2カ所ほど訪れてみたが、このうち一軒で接続がうまくできないケースがあった。不具合があった店舗も、これまでYahoo! BBモバイルのサービスが提供されていた場所だが、こちらは先ほどのマクドナルドの例と異なり、ESS-IDが変更されておらず、Yahoo! BBモバイルのままとなっていた。さすがにサービス開始初日ということもあり、ESS-IDの変更が間に合っていないケースもあったようだ。

 このほか、各場所でPSPでの接続もテストしてみたが、PCの場合と同様に問題なく接続できることを確認できた。SSLでの認証が可能なブラウザであれば、PDAなどでも問題なく利用できるだろう。

 またエリアによっては、BBモバイルのパンフレットが設置されている場合もあり、これによってサービス内容や「おためしID/PWサービス」の利用方法などを確認することもできるようになっていた。


サービス開始直後ということもあり、本来、すでに存在しないはずのYahoo! BBモバイルのESS-IDのままになっている場所もあった




利用するかどうかはISP次第

 以上、サービスが開始されたばかりのBBモバイルを実際にテストしてみたが、使用感に関しては以前のYahoo! BBモバイルやモバイルポイントと変わらず、快適に利用できた。個人的には、VPNで自宅にアクセスしたり、ソニーのロケーションフリーテレビを利用したいため、もう少しスループットが出て欲しいと感じたが、一般的なWeb閲覧やメール送受信といった利用なら必要十分だろう。

 ただし、以前の試験サービスだったYahoo! BBモバイルと比べると、敷居は高くなった印象だ。もちろん、無料の試験サービスと有料のBBモバイルポイントを対等に比べるわけにはいかないが、ISPによっては月額1,500円前後の料金がかかってしまう点が悩ましい。

 Yahoo! BB会員であれば格安で利用可能だが、他のISPユーザーは加入に躊躇してしまうだろう。ISPによって従量課金、月額課金制の違いがあるのも統一感に欠ける印象だ。

 サービスエリア的には、今回の統合で駅やレストランなど、主要な場所を網羅することになったので、今後は、ライブドアのサービスとまではいかないものの、もう少し料金的な見直しを図って欲しいところだ。


関連情報

2005/10/4 11:13


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。