第172回:LAN対応で共有やスキャン原稿のメール送信が可能
シャープのFAX複合機「見楽る UX-MF30CL」



 シャープからLAN対応のFAX複合機「見楽る UX-MF30CL(子機1台付属モデル)」が発売された。ネットワークに接続することで、プリンタやスキャナなどをPCから利用できる製品だ。早速、その実力を検証してみよう。





頻度は減ったが手放せないFAX環境

子機が2台付属した「UX-MF30CW」。子機1台の「UX-MF30CL」の価格は48,000円程度

 FAXの利用頻度は、数年前に比べると格段に減った。筆者は仕事柄、FAXを受信する機会が少なくない方だが、それでもニュースリリースなど、これまでFAXで送られてきたもののほとんどがメールへと移行してしまった。

 とは言え、FAX環境が完全にいらないというわけにもいかない。月に1~2回程度、雑誌の手書きラフレイアウトなどがFAXで送られてくることもあるし、実家や親類など、PCは持っていてもほとんど使わない人たちとの連絡に使うこともある。個人的にはあまりFAXを使いたくないのだが、完全に無くしてしまうわけにもいかないのが実情だ。

 そんな中、シャープから発売されたのが、今回取り上げる「UX-MF30CL」だ。ダイレクトプリント、コピー、FAX、プリンタ、スキャナ、コードレス電話の6機能を備えた複合機だが、背面に10BASE-T/100BASE-TX対応のLAN端子を搭載しており、ネットワークでの利用が可能になっている。

 前述したように、FAXの利用頻度が少なくなっていることを考えると、FAXだけの機能を持った製品というのは、今後ニーズが多いとは言えない。しかし、本製品のように複合機として多数の機能を備え、さらにネットワークに対応しているとなれば、プリンタ代わり、スキャナ代わりとして利用したいというニーズがありそうだ。


子機1台が付属した「UX-MF30CL」背面にはLANポートを搭載

前面にはメモリカードスロット付属の子機




ネットワーク対応で何ができるのか?

 では、UX-MF30CLで何ができるのだろうか? UX-MF30CLは非常に多機能な製品で、しかもUSBでPCと接続した場合とネットワークで接続した場合で利用できる機能に一部違いがあるのだが、ここでは主にネットワーク関連の機能について見ていくことにしよう。UX-MF30CLに搭載されているネットワーク機能は、主に以下の4つだ。

  • プリンタの共有
  • メモリカードへのアクセス
  • 電話帳の編集
  • ネットワーク経由でのスキャン
 まずはプリンタの共有だが、これは一般的なインクジェットプリンタをネットワークで共有するのとまったく同じイメージだ。UX-MF30CLをネットワークに接続後、PCにドライバをインストールすると、ネットワークプリンタとして登録される。後はアプリケーションから普通に印刷すればUX-MF30CLから原稿を出力できる。

 UX-MF30CLのインクジェットプリンタ機能はカラー対応で、最大4,800×1,200dpiの解像度での印刷、フチなし印刷にも対応しているため、デジタルカメラ写真などの印刷にも十分利用できる。HP製のインクが使われていたことから、おそらくプリンタとしてのエンジン部分はHP製だろう。品質は十分と考えて良さそうだ。

 UX-MF30CLではこのほか、本体に搭載されたスロットに装着したメモリカードのデータをネットワーク経由で参照することも可能だ。プロトコルにFTPを利用するため、Windowsのファイル共有と同じようには使えないが、ユーティリティのインストール後にデスクトップに作成されたショートカットを利用して、ブラウザから手軽にメモリカードのデータにアクセスできる。デジタルカメラで撮影したデータをダイレクトプリントするついでに、PCにも転送したいなどといった場合に便利だろう。


本体前面のスロットに装着したメモリカードにネットワーク経由でアクセス可能。プロトコルはFTPだが、ブラウザを利用すればGUIで操作できる

 ただし、この機能には一部制限がある。UX-MF30CLでは受信したFAXの保存先としてスロットに装着した外部メモリーを指定できるが、この設定とネットワーク経由でのメモリカードのデータ参照は排他となっており、FAX受信先に設定するとPCからはフォルダが参照できなくなる。個人的には、メモリーカードにFAXを受信して、それをネットワーク経由でPCから参照できれば便利だと考えていたので、この仕様は残念なところだ。

 続いて、電話帳の編集だが、これはブラウザを利用して行なう。URLにUX-MF30CLのアドレス(または「http://uxmf30-1f3f77b6/」のような名前)を指定してアクセスすると、電話帳リストを参照でき、そこからアドレス登録や編集が可能だ。地味な機能ではあるが、電話帳を最新の状態に保つには非常に便利な機能と言えるだろう。


ブラウザを利用してアクセスすることで、本体の電話帳を手軽に編集できる

 最後にスキャナ関連の機能だが、これはスキャンした原稿をネットワーク経由でPCに保存する機能だ。UX-MF30CLに原稿をセットし、スキャンを実行すると、保存先を選択する画面が表示される。ここで、「ネットワークPCへ送る」を選択すると、スキャンされた原稿(JPG、PDF、TIFFを指定可能)がネットワーク経由でPC(ユーティリティをインストールしたPC)に自動的に保存される。


スキャンした原稿は、ローカルPC(USB)、ネットワークPC、外部メモリー、メールと4種類の方法で保存できる

 他社製のネットワーク対応複合機では、PCからユーティリティを使ってスキャンを開始することが可能だが、残念ながらUX-MF30CLではこのような使い方はできない。あくまでも主体はUC-MF30CLで、本体側での操作が必須だ。ただ、実際に使う場合には原稿をセットするために本体のところまで移動するのだから、本体側でしか操作できないという仕様も問題ないだろう。





スキャン原稿のFTP転送やメール送信も可能

 このように豊富なネットワーク機能を備えたUX-MF30CLだが、前述した機能はごく基本的な使い方に過ぎない。面白いのは、ネットワークスキャン機能でスキャンした原稿の転送先を、PC以外にも設定できる点だ。

 ブラウザを利用してUX-MF30CLの設定画面にアクセスすると、接続先PCのリストを編集できる。ここでは、ドライバをインストールしたPC以外に、FTPサーバーも転送先として登録することが可能だ。試しに、バッファローの「Linkstation HS-D250GL」を指定してみたが、スキャンした原稿を問題なくFTPでNASに保存できた。


スキャンした原稿はFTPでNASなどに保存することも可能。バッファロー製のNASを利用したところ問題なくFTPで転送することができた

 これはなかなか便利な機能だ。転送先をPCに指定する場合、あらかじめPCを起動しておく必要があるが、NASであれば基本的には常に起動しているし、スキャンしたデータもPCから手軽に参照できる。今回利用したモデルはADF(自動原稿送り装置)なしのモデルであったが、ADF付きの「UX-MF40CL」などを利用すれば、大量の原稿をNASに保存するのも簡単だ。紙のデータを一気にデジタル化してしまいたいなどといったときに便利だろう。

 また、スキャンした原稿をメールで送信できる「スキャン to E-mail」機能も便利だ。事前に設定画面でSMTP設定やPOP before SMTP設定を済ませ、電話帳に送信先のメールアドレスを登録しておくと、スキャン時に転送先としてメールアドレスを指定できる。

 筆者も紙媒体をスキャンしてメールするという使い方をする場合があるが、通常はスキャナで原稿を読み込んでから、PCを使ってメールで添付して送るという2ステップが必要になる。これがUX-MF30CLであれば、1ステップでできるというわけだ。


スキャン to E-mailの設定画面。あらかじめメールサーバーの情報などを登録しておく必要がある。POP before SMTPに対応しているほか、SMTPのポート番号も指定できるのでOutbound Port 25 blockingの対策も可能スキャン時にメールアドレスを指定すると、スキャンした原稿がPDFなどの形式で添付され、メールが自動的に送信される

 ここまで手軽にFAXをメール送信できると、スキャンした原稿をメールで送るというスタイルが、FAXに変わる新しい紙媒体の送信方法として定着しても良さそうな印象を受けた。個人的には、現在、FAXで筆者宅に情報を送っている編集部が購入してくれると実にありがたい。





FAX受信機能の強化を望みたい

 このように、UX-MF30CLは、プリンタやスキャナをネットワークで活用したいというユーザーには、非常におすすめできる製品だ。デザインも一般的な複合機と違ってビジネス機的な雰囲気を感じさせないスタイリッシュなイメージとなっており、本体に搭載された4.3型ASVカラー液晶を見ながら手軽に操作ができたり、受信したFAXを確認してからプリントするといった使い方ができるのも非常に便利だ。

 ただし、個人的にはFAXの受信機能をもう少し充実させて欲しい。現状、UX-MF30CLで受信したFAXを見るには、本体の液晶で確認する、印刷する、メモリカードに受信後(本体メモリで受信後にコピーすることも可能)、PCにメモリカードを装着して参照するといった方法だが、どれもいまひとつ便利さに欠ける。

 筆者宅では、自宅で余ったPCにFAXソフトをインストールし、Wake Up on RINGの機能を使ってFAXの電話がかかってきたときだけPCを起動してFAXを受信。受信後のFAXデータをNASにコピーすると同時に、メールで普段利用しているメールアドレスに転送するという使い方をしている。

 これとまったく同じ使い方ができるといいのだが、せめてFAXの受信先にメモリカードを指定していた場合でも同時にネットワーク経由でPCからメモリカードを参照できるようにするか、FAXを受信したら、それをメールで自分のメールアドレスに自動的に転送できるようにして欲しいところだ。

 UX-MF30CLにはすでにメールの送信機能などが備えられているので、このような使い方もさほど難しいことではないと思われる。次のモデルと言わず、ファームウェアのアップデートなどで、受信したFAXのメール転送に対応してもらえるならば、個人的にも購入を検討したいと感じた。


関連情報

2005/11/15 10:55


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。