第192回:Windows XP MCE普及のカギとなるか
コンテンツ追加で強化されたメディアオンライン



 2006年4月12日、マイクロソフトは「Windows XP Media Center Edition 2005(以下Windows XP MCE)」向けのコンテンツサービス「メディアオンライン」の拡充を発表した。すでに提供済みのコンテンツに加えて、新たに7つの新サービスが追加されたことになる。現時点で利用可能な3つのサービスについて検証してみよう。





コンテンツポータルとしてのメディアオンライン

 今回のメディアオンラインの拡充によって、オンラインでのコンテンツ配信サービスがさらに身近な存在になりそうだ。Windows XP MCEのメディアオンライン自体は従来から提供されていたサービスだが、新たに7つ(現時点では3つ)のコンテンツが追加され、ようやく本格的に楽しめるようになった。

 今回のコンテンツの拡充は、コンテンツプロバイダーにとっても非常に歓迎すべきことだろう。インターネット上での映像配信サービスでは、GyaOに代表される広告モデルの勢いが加速しつつあるが、このようなモデルのサービスではいかに視聴者(それもアクティブな視聴者)を確保するかがビジネスモデルを成功させるための重要なポイントだ。

 もちろん、USENとライブドアの関係のように、インターネット上のWebサイトをポータルとして視聴者を集めるというのも1つの手段だが、今回のメディアセンターの拡充では、OSがコンテンツポータルとなりうる可能性が示唆されている。

 Windows XP MCEというOSの普及状況を考えると、まだ前途は多難という印象はあるが、2007年の登場が予定されている次世代OSのWindows Vistaでは一部のエディション(Home Premium Edition、Ultimate Edition)にMedia Centerが標準搭載されることを考えると、コンテンツポータルとしてメディアオンラインの重要度は今後向上する可能性は十分にある。正直なところ、これまでのメディアオンラインはコンテンツが不足気味だったが、これによって将来的な発展のめどが立ち、普及への足がかりができたと言えそうだ。





7コンテンツのうち3コンテンツがすでに稼働

 早速、追加されたコンテンツを見ていこう。今回メディアオンラインに追加されたコンテンツは全部で7つ。4月12日の時点では、air impressの「インプレスTV」、大和証券グループの「大和インターネットTV」、クラビットの「Gクラスタ」の提供が開始されており、今後はCinemaNow Japanの「CinemaNow」、Yahoo! JAPANの「Yahoo!動画」、オンキヨーの「e-onkyo」、住商オットーの「Otto」が4月中にサービス開始予定だ。従来から提供が開始されていたコンテンツを含め、合計で13のサービスがラインナップしたことになる(Viivには専用コンテンツがさらに追加されている)。


コンテンツが拡充されたメディアオンライン。4月12日時点で3つのコンテンツが新たに追加されている

 まずは、筆者も以前に出演したことがあるair impressの「インプレスTV」だが、筆者がアクセス時点では、「NEW PRODUCTS REVIEW」「おんらいんゲーマーズ」「スタパトロニクスTV」「高橋敏也の動く!改造バカ一台」「 法林岳之のケータイならオレに聞け!」「クルマ情報 AUTO-PRESS.tv」「高橋敏也の ROBOT.TV」「週刊★ロマン鉄道」の8番組が提供されており、それぞれ3~4回分の放送を視聴できた。

 メディアセンターの画面で見ると、「マニアックな番組が多いなあ」という感想をあらためて感じたが、PCのブラウザで視聴していたときと異なり、リモコンで番組を選んでサッと再生できるのは快適だった。インターフェイスが変更され、リモコンで操作できるようになっただけでもだいぶ視聴するための敷居が下がった印象だ。前述した通り、映像配信サービスではアクティブな視聴者を多く得ることが重要だが、ことインプレスTVに関しては、今回のメディアオンラインでのサービス開始によって、将来的に従来のWebサイトとは違った層の視聴者を獲得できそうだ。

 続いて、大和証券グループの「大和インターネットTV」だが、こちらもこれまでインターネット上のWebサイトで提供されていたサービスだ。東京マーケットの開始前(毎日9:00更新)、前引(毎日12:30更新)、大引(毎日17:00更新)などの情報がタイムリーに提供されるようになっているので、投資家にはなかなか使い勝手のあるサービスだろう。日中、会社で情報を得る機会が少ないサラリーマンを考えると、こういった情報番組を自宅からオンデマンドで手軽に楽しめるのは便利そうだ。


air impressの「インプレスTV」(左画面)と大和証券グループの「大和インターネットTV」(右画面)

 従来からサービスが提供されていたBIGLOBEニュースもそうだが、ニュース系の情報番組というのはオンデマンドで再生できることならではのメリットというのが存在する。今後はこういった情報系のサービスがさらに拡充されると、メディアオンラインの価値も向上するだろう。





リモコンで手軽にゲームを楽しめる

 クラビットの「Gクラスタ」は、なかなか画期的なサービスだ。これまでのメディアオンラインは映像や音楽などの配信を目的としたコンテンツが主だったが、Gクラスタではアクションやパズル、テーブルゲーム、ゴルフなど、リモコンで手軽にプレイできるゲームが配信されている。

 現状のところ提供されているゲームは10本で、定番とも言える将棋や囲碁、リバーシ、カードゲームなどはもちろんのこと、ペンギンを主人公としたスラロールゲームの「Tux RACER」、アクションゲームの「SUPER MUNKEY BOOM2」、さらには「G-cluster Golf」などもプレイ可能だ。


リモコンでプレイできるゲームが配信されているGクラスタ。現時点で10種類のゲームをプレイできる

左から「SUPER MUNKEY BOOM2」「Tux RACER」「G-cluster Golf」。将棋やカードゲームなどの定番的なゲームなどに加えて、これらのような本格的なゲームも楽しめる

 なお、Windows XP MCEはXbox 360からネットワーク経由で接続して利用することが可能で、前述した映像配信サービスに関してはXbox 360からも利用可能だが、唯一、このGクラスタだけは利用できない。Gクラスタのコンテンツに関しては、Media Centerから外部プログラム(Gクラスタビューワー)を起動してゲームを動作させるという仕様となっているため、ビューワーを持たないXbox 360では動作しないというわけだ。

 ネットワーク経由でWindows XP MCEに接続するという現状のXbox 360のスタイルもなかなか面白いが、ここまでメディアオンラインのコンテンツを充実させたのであれば、思い切ってXbox 360にメディアオンラインの機能自体を搭載してしまってもいいのではないかと感じた。





Vistaで本格的に普及するか

 今回のメディアオンラインの拡充は単純なコンテンツの追加だけでなく、映像配信サービスの将来を感じさせてくれるものであった。今後、どのようなコンテンツプロバイダーが参加してくるかはわからないが、さらに参加事業者が増え、コンテンツが追加されれば、利用者も次第に増えてくるだろう。

 正直なところ、現状のWindows XP MCEにおけるテレビ機能に関しては、特に国内のメーカー製PCと比較すると若干機能が劣る印象がある。さらにHDD&DVDレコーダなどの家電製品と比較しても、アドバンテージがあるとは言い難い。

 ただし、こういったオンラインコンテンツが利用できるとなれば話は別だ。少なくとも家電製品との差別化は図れるだろう。今後Windows Vistaが登場し、誰もが当たり前のように使える時代になれば、面白い存在となりそうだ。


関連情報

2006/4/18 11:07


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。