第256回:DSもWiiもPSPも手軽に接続できる無線LANアクセスポイント
ゲーム機に特化したバッファローの「Wi-Fi Gamers WCA-G」



 バッファローからゲーム機向けの無線LANアクセスポイント「Wi-Fi Gamers WCA-G」が発売された。最大の特徴は何と言ってもその手軽さだ。つなぐだけ、ボタンを押すだけで、すぐにDSやWii、PS3、PSPなどをインターネットに接続できる。早速、その実力を検証した。





無線LANの世界の「コンパクトカー」

Wi-Fi Gamers WCA-G

 前回、本コラムで取り上げたバッファローの「WZR-AMPG300NH」が無線LAN製品の頂点に位置する製品だとすれば、今回取り上げる「WCA-G」は、まさにその対極にある製品と言えるだろう。

 IEEE 802.11n ドラフト、40MHz幅の倍速モード、巨大なアンテナ、IEEE 802.11a/g同時通信などなど、最新の技術が惜しみなく投入された、まるでスポーツカーのような「WZR-AMPG300NH」に対して、「WCA-G」は例えるならばコンパクトカー。IEEE 802.11b/gのみに対応したアクセスポイントというシンプルな構成ながら、普段の使い勝手の良さがとことん追求されている。

 それもそのはずで、WCA-Gは、「Wi-Fi Gamers」という製品名が付けられている通り、利用者層が非常に幅広いであろうゲーム機での利用を想定した無線LANアクセスポイントとなっている。


バッファローのゲーム機向け無線LANアクセスポイント「Wi-Fi Gamers WCA-G」。ニンテンドーDSやPSP、Wii、PS3などを手軽に接続できる

 PC向けのアクセスポイントであれば、利用者のスキルレベルをある程度想定できるが、ゲーム機が対象となるとそうはいかない。小学生から高齢者といった幅広い年齢層の利用者が想定され、そのスキルレベルもさまざまだ。Wi-Fi Gamersは、このような利用者層を想定し、つなぐだけ、ボタンを押すだけと、誰でも簡単にゲーム機を無線LANにつなげられるようにした製品になっている。





接続状況を確認できる液晶モニター搭載

 実際の製品について見ていこう。本体のサイズは非常にコンパクトだ(W20×H101×D100mm)。例えとしては適当ではないかもしれないが、幅や高さ、奥行きなどは、ちょうど「はんぺん」を立てたようなイメージで、手のひらサイズと言っても過言ではないコンパクトさだ。


Wi-Fi Gamersの正面と側面。手のひらサイズと言っても良いコンパクトなサイズ。インターフェイスも最小限となっている

 インターフェイスはシンプルで、側面に100BASE-TXのLANポートが1つと電源コネクタが用意されているだけだ。このことからもわかるとおり、本製品はルータ機能を搭載しないアクセスポイントであり、インターネット接続には別途ルーターが必要になる。

 そしてもっとも目を惹くのが、本体前面の液晶モニターと、まさにゲーム機用と呼ぶにふさわしい十字キーだ。

 「あんしん小窓」と名付けられた液晶モニターには、さまざまな情報が表示されるようになっている。たとえば接続設定を実行したときの状況や、子機として接続されているゲーム機の種類、さらには本体に設定されているIPアドレスの確認などが「あんしん小窓」で確認できるのだ。

 ファームウェアのバージョンアップや無線LANのチャネル変更といった設定なども可能となっており、本体の十字キーを使えばPCレスで設定を行なうこともできる。かつてISDNのTAなどは液晶モニターが標準的に搭載されていたが、それを彷彿とさせる仕様だ。これは一般的な無線LANルータに搭載されても便利に使えるだろう。





つないでボタンを押すだけの簡単設定

 実際の利用方法だが、これも非常にシンプルかつ簡単になっている。

 まずは物理的な接続としてLANケーブルを接続。ルータではなくアクセスポイントなので、家の中のルータなど既存のネットワークに本体をつないで、電源を入れればすぐに利用可能だ。

 続いて、ゲーム機の接続にはAOSSを利用する。たとえば、ニンテンドーDSであれば、ゲームの設定画面で無線LANの接続設定を開始し、接続方法でAOSSを選択する(対応ゲームが必要)。その後、Wi-Fi Gamersの本体上部に用意されているAOSSボタンを押すと、暗号化の設定を含めた接続設定が自動的に行なわれる。


ゲーム機で無線LANの設定開始。接続方法でAOSSを選択して設定を開始するWi-Fi Gamers上部にあるAOSSボタンを一定時間長押しして設定を開始

クライアントを認識すると「あんしん小窓」に設定中のメッセージが表示される接続が完了するとゲーム機からインターネットの利用が可能に。接続中の端末も確認できる

 前述したように、このときの状況は、「AOSS設定中」などといったように本体前面の「あんしん小窓」に表示されるようになっている。このメッセージを見ながら設定すれば、つながったのかどうかも確実にわかるというわけだ。

 なお、Wi-Fi Gamersの設定は、標準ではSSIDがMACアドレス、暗号化なしとなっている。このため、ネットワークに接続して電源を入れれば、AOSSを使わなくても、すぐにゲーム機から接続可能となる。この場合、PCなどからも自由に接続できてしまうため、第三者による不正アクセスの危険性が高くなる。AOSSを使えば家庭内で最も高いセキュリティ設定を自動で行なうため、必ずAOSSを利用して設定することをお勧めしたい。

 このほか、PCを利用してWi-Fi Gamersの設定画面を表示すれば、セキュリティ設定などを細かく変更することなども可能となっている。無線クライアント同士の通信を禁止するプライバシーセパレータなども搭載されているので、ゲーム機専用のアクセスポイントとして使うなら、有効に設定しておくのも良いだろう。


PCから設定画面を利用して設定することも可能。もちろん、PCを接続することもできる




見事な「コンセプト」設計

 このように、Wi-Fi Gamersを実際に使ってみたが、確かに手軽でゲーム機を接続するのに最適な製品と言えそうだ。これなら、PC用にすでに無線LAN環境がある場合でも、さらにゲーム用のアクセスポイントとして追加しても良いと実感した。

 もちろん、これまでの無線LAN製品でもゲーム機を接続することはできた。また、PC経由でゲーム機を接続できるUSB接続の無線LAN機器も存在した。しかし、前者はゲーム機を接続できることがあまり訴求されておらず、一方、後者はわざわざPCを起動するという使い勝手が悪かった。そう考えると、今回のWi-Fi Gamersは、既存の製品ラインナップの隙間を狙った非常に巧みな製品と言える。

 以前に本コラムで取り上げた「つなぐだけ無線LANセット WHR-HP-G54/EK」もそうだが、最近のバッファロー製品は製品のコンセプト設計と言うか、マーケティングが見事だ。

 これまでの無線LAN製品は、スペック重視の訴求が行なわれていたが、最近のバッファロー製品は、その製品で何ができるのかがわかりやすく単純なコピーとともに、パッケージなどで明確に訴求されている。製品の購入前、そして購入後ともに、ユーザーが「迷わない」ような工夫をしているのは非常に高く評価したい。

 あとは販売の工夫さえすれば、本製品が家庭に浸透するのはそう難しくないだろう。家電量販店のネットワーク機器コーナーではなく、ゲーム機コーナーに棚を確保したり、郊外型の大型ショッピングセンターなどのゲーム売り場に棚を確保できれば、ユーザーに存在を認知してもらうことができ、実際に手にとってもらうことができることだろう。

 理想を言えば、価格がもう少し下がると良さそうだ。Wi-Fi Gamersの標準価格は9,135円で、液晶モニターが搭載されていることを考えれば妥当な価格と言えるが、前述したショッピングセンターなどで気軽に購入してもらうには、5,000円がひとつの目安になると考えられる。

 逆に言うと、他メーカーが同じコンセプトで勝負するなら、このあたりの戦略がポイントになりそうだ。あえて液晶を排除した同様の製品を5,000円以下で、同じ市場、同じ売り場に投入できれば、後発でも十分に勝負になるだろう。冒頭で、Wi-Fi Gamersをコンパクトカーに例えたが、同じコンパクトカーのジャンルでもリッターカーと軽自動車の戦いがある。後発メーカーはここを狙うと面白いのではないだろうか。


関連情報

2007/8/7 11:01


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。