第255回:「倍速モード」で最大300Mbpsを実現
バッファローの無線LANルータ「WZR-AMPG300NH」
バッファローから、IEEE 802.11n ドラフト 1.0対応の無線LANルータ「WZR-AMPG300NH」が発売された。40MHz幅を利用する「倍速モード」を搭載することで、最大300Mbpsを実現した新製品の実力を検証した。
●まさにハイエンド
セットモデルの「WZR-AMPG300NH」 |
従来の「WZR-AMPG144NH」を初めて見たときもそうだったが、毎回のことながら、バッファローのハイエンド製品のデザインとサイズには圧倒される。本体も大きいが、脱着式の巨大なアンテナは、まさにヘリコプター。ハイエンド機種らしいと言えばその通りだが、これを家に常設するとなると、家族からの反対意見に悩まされそうだ。
しかしながら、機能的に見ると、まさに現時点の最強無線LANルータと言うにふさわしい存在だ。IEEE 802.11n ドラフト1.0に準拠しており、2.4GHz帯と5GHz帯の同時通信対応、LANポートはギガビットイーサネットに対応、そして40MHz幅通信を可能にする「倍速モード」搭載と、現状の最新機能がほぼすべて搭載されている。
唯一、今年1月に開放されたW56(5.6GHz帯)には対応しておらず、高機能なだけに価格も高いが(28,000円前後)、同社のフラッグシップとして堂々たる機能を備えた製品と言えるだろう。
無線LANルータ「WZR-AMPG300NH」と無線LANカード「WLI-CB-AMG300N」 | AOSSボタンを用意 |
背面。ルータ機能のオン・オフスイッチも搭載 | 縦置き時 |
●300Mbpsでの通信には倍速モードとカード側の設定が必要
それでは早速使ってみよう。まずは設定だが、無線LAN、およびインターネット接続の初期設定は非常に簡単だ。無線LANの接続に関してはAOSSを利用してボタン一発で設定できるうえ、インターネット接続も無線接続後、ブラウザを起動すると自動的に設定画面が表示され、回線種別などが自動判別される。このあたりは、同社製の他の製品と共通で、使いやすさが十分に考慮されている印象だ。
ただし、標準設定のまま接続した場合、その速度は144.5Mbpsのままとなる。AOSSでの接続は標準では2.4GHz帯が選ばれるが、300Mbpsを実現する倍速モードは標準では5GHz側でしか有効に設定されていない。このため300Mbpsでリンクさせるためには、いくつかの設定が必要となる。
まず標準の設定で接続した後、アクセスポイントの設定画面を表示する。そこで無線LANの設定から2.4GHz帯(11g)の設定を表示し、倍速モードを「40MHz」に変更しておこう。
続いて、カード側の設定を行なう。現段階の製品ではカード側の設定が20MHz幅固定になっているため、ドライバのプロパティ画面で「BandWidth」を「Auto」に変更しておく必要がある。付属品に含まれる注意書きの用紙に設定方法が記載されているので、忘れずに設定しておこう。
300Mbpsでの通信には設定が必要。2.4GHz側の倍速モードを必要に応じて有効にし、カードのドライバのプロパティでBandwidthを「Auto」に設定する |
これらの設定を行なうことで、はじめて2.4GHz/5GHzの両方で300MHzでの通信が可能となる。もしかすると、この設定をし忘れたために、せっかくの300Mbps対応製品を144.5Mbpsで利用している人もいるかもしれないので、一度はリンク速度を確認することをお勧めしたい。
ユーティリティを利用することで現在のリンク速度を確認可能。アクセスポイントの近くで300Mbpsと表示されることを確認しておこう |
●実効100Mbpsも夢ではない
気になる速度だが、木造3階建ての筆者宅の1階にアクセスポイントを設置し、1階、2階、3階の各フロアで計測した結果が以下のグラフだ。
周波数帯 | チャネル形式 | GET/PUT | 1F | 2F | 3F |
5GHz(11n) | デュアルチャネル(36+40) | GET | 99.2Mbps | 76.2Mbps | 14.0Mbps |
PUT | 93.2Mbps | 72.5Mbps | 28.7Mbps | ||
2.4GHz(11n) | デュアルチャネル(7+11) | GET | 99.2Mbps | 78.6Mbps | 48.3Mbps |
PUT | 85.7Mbps | 67.4Mbps | 49.6Mbps | ||
2.4GHz(11g) | シングルチャネル(PC内蔵11g) | GET | 23.0Mbps | 21.1Mbps | 5.1Mbps |
PUT | 24.2Mbps | 23.2Mbps | 4.8Mbps | ||
※サーバーにはAthlon64 X2 3800+/RAM1GB/HDD160GB搭載PCを利用。OSはFedoraCore5、vsFTPd使用 ※クライアントにはLenovo ThinkPad T60(CoreDuo T400/RAM1.5GB/HDD160GB)、Windows XP SP2 ※コマンドプロンプトからFTPによるPUT/GETを実行し、極端に高い値と低い値を除いた5回の平均を計測 ※PC内蔵11gはIntel PRO/Wireless3945ABG |
結果を見ると、1階のGETの速度が最大で「99.2Mbps」と、惜しくも100Mbpsに届かなかったものの、非常に優秀な速度をマークした。プロトコルのボトルネックなどを考慮すると、100BASE-TXの有線LANを凌ぐ値と考えて良いだろう。環境によっては100Mbpsを超える実効速度が得られる可能性もある。
巨大なアンテナの恩恵だろうか、長距離の伝送効率も高く、2階で70Mbpsオーバー、3階でも50Mbps弱の速度を実現できている(2.4GHz)。ここまで速いと、もはや普通のIEEE 802.11gを使う気になれないほどで、わざわざPCにカードを挿す手間も補ってあまりあるほどだ。
ただし、1点注意したいのが5GHz側のパフォーマンスだ。近距離の結果は問題ないものの、筆者宅の3階で利用するとなぜか極端にパフォーマンスが低下する傾向が見られた。リンク速度を観察してみたが常に50Mbps以下でしかリンクせず、その速度も常に変化していた。いくつかのチャネルでテストしても同じ結果だったので、外部からの干渉が影響しているのか、製品自体の特性がそうなのかのどちらかと考えられる。このあたりは、原因をはっきり追求することができなかったので、あくまでも参考と考えていただきたい。
●W53でも倍速モードの利用が可能
このように、2.4GHz側のパフォーマンスは文句なしだったが、2.4GHz帯は干渉せずに利用できるチャネルに限りがあるため、倍速モードでどこまで干渉を避けてパフォーマンスを得られるかは環境によって異なる。おそらく本製品で2.4GHz帯の倍速モードが標準で無効になっているのも、チャネルを占拠してしまわないための配慮だと思われるが、いずれにせよ2.4GHz帯の利用はもはや限界だろう。
というわけで、個人的には5GHz帯の利用をお勧めしたい。本製品の場合、5GHz帯の倍速モードは、W52、W53の両方で利用可能となっているため、周囲のチャネル利用状況を把握しておけば、干渉を避けつつ倍速モードを利用することも可能だ。筆者宅のテストで長距離の5GHz帯の結果が芳しくなかったのが気になるところではあるが、今後、2.4GHz帯の状況がさらに悪くなったときでも、W52とW53の両方で倍速モードが使えるのは大きなアドバンテージと言えるだろう。
W53のチャネルでも倍速モードを利用可能。つくづくW56に対応していないのが惜しまれる |
関連情報
2007/7/31 10:58
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