第254回:ルータ内蔵のPLCアダプタとコンセント直結子機
つなぐだけで使えるNECアクセテクニカ「Aterm CR2500P PLCルータセット」



 NECアクセステクニカから、HD-PLCに準拠したPLCアダプタが発売された。ルータ機能を内蔵した「Aterm CR2500P」とコンセント直結型の「Aterm CA2100P」の2製品を実際にテストした。





HD-PLCに準拠したNECオリジナルのPLCアダプタ

Aterm CR2500P PLCルータセット

 今回、NECアクセステクニカから登場したPLCアダプタは、規格としてはHD-PLCに準拠しているが、これまでのHD-PLCと比べるとかなり個性的な製品だ。

 従来のHD-PLC製品は、デザインが多少違う程度で、どのメーカーの製品も事実上は同じ製品であった。これに対して、今回登場したAterm CR2500PとAterm CA2100Pは、ひと目見ただけでもわかるとおり、NECアクセステクニカならではのオリジナル製品である。

 もちろん、HD-PLCに準拠している以上、基本的な仕様は同じで、理論上の最大速度も190Mbpsとなっているが、製品に対しての付加価値がきちんと提供されているのが特徴だ。


「Aterm CR2500P」(左)と「Aterm CA2100P」(右)Aterm CR2500Pの背面。WAN側に1ポート、LAN側に3ポート

「Aterm CA2100P」。側面に設定ボタン底面にLANポート




ルータ内蔵+コンセント直結型

 この新製品の特徴を具体的に見ていこう。まずはAterm CR2500Pだが、この製品は単なるPLCアダプタではなく、ルータ機能が搭載されているのが特徴だ。本体背面にはWANポート×1、LANポート×3(いずれも10BASE-T/100BASE-TX)が搭載されており、別途ルータを設置することなく、1台でPLCによるLAN環境とルータによるインターネット接続環境を実現できるようになっている。

 搭載されるルータ機能は、同社が発売している「Aterm WR8400N」の有線部と同等で、PPPoEマルチセッションやフィルタリングなどの基本的な機能を搭載しているだけでなく、有害サイトへのアクセスをルータ側で遮断する「インターネット悪質サイトブロックサービス for BBルータ」にも対応している。

 現状、ADSLではモデム+ルータ、光ファイバでもIP電話環境ではルータがレンタルされることを考えると、必ずしもルータ機能が必要か? という議論はあるのだが、PLC製品にルータタイプというカテゴリが新たに誕生し、ユーザーの選択肢が広がったことは素直に歓迎すべきだろう。

 一方、もう1つの製品であるAterm CA2100Pの特徴は、何といってもそのデザインだ。黒の配色も今時の製品としは珍しいが、サイズが非常にコンパクトで、何よりコンセント直結型となっている。


コンセント直結型のAterm CA2100P。写真のようにコネクタの位置が工夫されているため、直結しても、もう一方のコンセントへの接続の邪魔にならない

 コンセント直結式にどんなメリットがあるのか疑問に思うかもしれないが、電源ケーブルでコンセントにつなげるタイプと比較すると、ケーブルでの信号損失を防ぐことができ、より高いパフォーマンスが期待できる。

 コンセント直結式というと、ほかのコンセントをつなげるのに邪魔になるイメージがあるかもしれないが、Aterm CA2100Pでは本体の右上ギリギリの位置に接続部分が配置されており、直結してもほかのコンセントの邪魔にならない。実用性を兼ね備えた、なかなか凝ったデザインと言えるだろう。





つなぐだけで利用できる

 実際の使い方は非常に簡単だ。今回は前述したAterm CR2500PとAterm CA2100Pがセットになったルータセット、そしてAterm CA2100Pが2個セットになったPLCアダプタセットの2タイプのセットモデルを試用したが、いずれも親機と子機が初期出荷状態でペアリングされているため(暗号化方式はAES)、PLCの設定は一切不要で使えるようになっている。


ルータ内蔵のAterm CR2500P(右)とコンセント直結型の子機Aterm CA2100P(左)。セットモデルならつなぐだけですぐに利用できる

 もちろん、Aterm CR2500Pでインターネットに接続するにはルータに接続先の登録が必要だが、本体のWANポートにONUやADSLモデムを接続し、子機となるAterm CA2100Pを接続したPCから「http://web.setup」を開くと設定ページが表示され、ウィザード形式でインターネット接続の設定ができる。回線種別を選び、IDやパスワードなどを登録すれば設定は完了だ。はじめての場合でも、それほど迷わず設定できるだろう。


インターネットの接続設定もウェブ画面から接続方式やID、パスワードなどを設定するだけと簡単。悪質サイトをブロックする機能も利用できる

 一方、Aterm CA2100Pは純粋なアダプタであるため、設定は一切不要だ。親機をルータなどの既存のネットワーク、子機をPCに接続すれば、電力線を使ったネットワークで即座にPCを接続できる。この手軽さは、やはりPLCの大きな魅力だ。

 なお、ルータ内蔵のAterm CR2500Pでは前述した「http://web.setup」でルータ側の詳細設定が可能なだけでなく、「http://192.168.0.249」にアクセスすることでPLCの設定画面も表示できる。ただし、PLCの設定項目はほとんど用意されておらず、状態の確認と子機の解除、ファームウェアのアップデートができる程度となっている。


Aterm CR2500P、Aterm CA2100Pともに「http://192.168.0.249」にアクセスすると、PLCの設定画面を表示できる。ただし、設定可能な項目はほとんどない。なお、192.168.0.249は親機、子機共通のアドレスだが、PLC側には流れないため同一IPでも問題ない

 では、PLCの接続設定はどうするのかというと、これは他のHD-PLC製品と同様にボタン式の設定となっている。最初に子機(Aterm CR2500Pは親機子機をスイッチで切り替え可能)のボタンを一定時間(10秒)押し、その後、親機の前面に配置されているボタンを押す。この後、5秒以内に子機のボタンをもう一度押すと、自動的に設定情報が交換され、PLCでの接続が確立される。最初にボタンを長押しするのが他のHD-PLC製品と異なるが、基本的な手順は同じだ。

 ちなみに、他のHD-PLC製品との互換性も筆者がテストした限りでは問題なかった。松下電器産業のBL-PA100を子機として登録してみたところ、前述した接続手順の最初の子機側の10秒長押しの代わりに事前に初期化しておくことで、あとは親機のボタンを押した後に子機側のボタンを押すことで無事に接続できた。


Aterm CR2500Pに松下電器産業のBL-PA100を子機として接続。接続方法に若干違いがあるが、問題なく相互接続が可能だった

 保証やサポートなどの問題があるので自己責任の範疇となるが、すでにBL-PA100などを利用しているユーザーが、ルータとしてAterm CR2500Pを利用するという手もありそうだ。





パフォーマンスは既存HD-PLCと同等

 最後にパフォーマンスを計測した結果を紹介する。まずは、電源タップに親機と子機を直結した場合の値だが、以下のように最大で45Mbpsとなった。Atem CR2500PとCA2100Pを比較すると、やはり若干ながら直結のAterm CA2100P同士の方が特性が良いようだ。


PLC組み合わせGETPUT
CR2500P+CA2100P44.40Mbps39.52Mbps
CA2100P+CA2100P45.76Mbps43.84Mbps
※サーバーにはAthlon64 X2 3800+/RAM1GB/HDD160GB搭載PCを利用。OSはFedoraCore5、vsFTPd使用
※クライアントにはLenovo ThinkPad T60(CoreDuo T400/RAM1.5GB/HDD160GB)、Windows XP SP2
※コマンドプロンプトからFTPによるPUT/GETを実行し、極端に高い値と低い値を除いた5回の平均を計測

 一方、木造3階建ての筆者宅の各コンセントで計測した値は以下の通りだ。親機と子機を同じL1相同士に接続した場合で最大44Mbps前後、パフォーマンスがもっとも悪い位置(筆者宅では2階のL2相コンセント(図中2-1)で5.3Mbpsとなった。



 以上、Atermシリーズに新たに追加されたPLCアダプタを検証したが、PLCとしての使い勝手はHD-PLC製品ならではの良さを継承しつつ、さらにルータ部分で同社ならではの簡単設定、「インターネット悪質サイトブロックサービスfor BBルータ」などのサービスを利用できるという特徴を備えている。コンセント直結型のAterm CA2100Pのコンパクトさや特性の良さも大きな魅力だ。

 PLCは正直なところ、使ってみないと特性が分からないのが難点ではあるが、少なくともHD-PLC製品の中では後発の理を活かした付加価値の高い製品となっており、PLC製品の中では積極的に検討したい製品の1つと言えそうだ。


関連情報

2007/7/24 10:55


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。