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山岳での遭難時、圏外でもStarlink活用で素早い救助へ。ヤマレコ、KDDI、長野県警が実証実験
2025年6月3日 13:30
株式会社ヤマレコ、KDDI株式会社、長野県警察本部は5月30日、長野県北沢峠で実施した、衛星とスマートフォンの直接通信サービス「au Starlink Direct」と登山アプリ「ヤマレコ」を利用した山岳遭難救助隊による山間部での救助活動の実証に成功したことを発表した。2025年夏以降の本格運用を目指す。
山岳遭難事故が増加している一方、電波の届かない場所の多い山間部では、遭難しても連絡手段がなく、状況把握までに数日から数十日かかるとされている。既存の衛星SOSサービスでは、特定のOSを搭載した端末にしか対応していないほか、詳細な情報取得ができないなどの問題がある。実証実験では、避難者が家族へ緊急SOSメッセージを送信し、家族が受け取ったメッセージをもとに警察へ110番通報する流れを想定して行われた。
遭難者役のスマートフォンでは、通信に「au Starlink Direct」を使用した。au Starlink Directは、2025年4月にau契約者向けにサービスを開始した、既存のau周波数を活用しながらも基地局を介さずStarlink衛星とつながる通信サービスで、空が見える環境であれば、携帯電波の圏外エリアでも通信でき、一部サービス(位置情報の送信やテキストメッセージの送信など)が利用できる。
「ヤマレコ」アプリはiOS/Androidに対応しており、au回線に対応したスマートフォンで、機種を選ばずに利用できる。また、au Starlink Directによるテキストメッセージ送信に対応し、位置情報や遭難の状況などを送信できる。
実証では、まず、電波の届かない登山道にいる遭難者役が、「ヤマレコ」アプリから位置情報や遭難状況を入力したメッセージを送信する。送信されたメッセージはヤマレコが手掛ける遭難者情報照会システム「SAGASU」(サガス)に届き、SAGASUを通じて家族役に対する通知が行われる。
通知を確認した家族役は、SAGASUの情報をもとに警察へ通報。、警察は、家族の申告とSAGASUの情報から遭難者の位置情報・負傷状態・装備・保険加入有無・登山ルートなどを把握でき、山岳遭難救助隊の救助の初動までの時間を大幅に削減し、初動を30分以内で開始できた。
実証実験後、長野県警察本部山岳遭難救助隊の岸本俊朗隊長は「本実証のようなサービスにより圏外エリアでの遭難時も状況が共有できるようになると、救助開始までの時間を大幅に短縮ができ、遭難者の生存率も高まると期待したい」とコメントした。