第442回:連続通信約9時間、タフな小型WiMAXモバイルルーター「URoad-8000」


 シンセイコーポレーションから登場した「URoad-8000」は、約9時間という長時間通信を可能にしたWiMAXモバイルルーターだ。実際の連続通信時間を含め、その実力を検証してみた。

更新が繰り返される連続通信記録

 内蔵単体バッテリーでの連続通信時間において、これまでのモバイルルーターの中では圧倒的な優位を誇ってきたNECアクセステクニカのAterm WM3500R。その存在を脅かす製品がようやく登場してきた。シンセイコーポレーションの「URoad-8000」だ。

シンセイコーポレーションの「URoad-8000」

 幅91×奥行き57×高さ20.4mmでバッテリー込みで98gと、非常にコンパクトなWiMAX対応のモバイルルーターだが、3.7V/2300mAという大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載しており、最大約9時間という連続通信時間を実現している。

 現状、モバイルルーターを選ぶ基準として、稼働時間(連続通信時間)は非常に大きなウェイトを占める。これを考慮すると、現状、最長クラスの連続駆動時間を実現した本製品は、今後のモバイルルーターの主流となり得る可能性を秘めた製品と言っていいだろう。

 もちろん、またたく間に進化する現在の状況を考えると、10時間を越えるような製品が登場してくるのも時間の問題かもしれないが、本製品で評価したいのは、9時間という連続駆動時間を前述したような100gを切るコンパクトな筐体で実現している点だ。

 本体は角を丸めたやわらかなイメージのデザインとなっており、手のひらに完全に収まる非常にコンパクトなサイズとなっている。いわゆるポケットサイズの製品というのは、このジャンルの製品には珍しく無いが、本製品の場合、ポケットに入れたとしても、そのスペースを占有することなく、ズボンなどのポケットの底の隅に控え目に「ちょこん」と収まるようなイメージとなっている。

丸みを帯びたコンパクトなデザイン大容量バッテリーを搭載するため厚みは若干ある上部にWPS用スイッチとUSB端子(充電)を装備

 このため、実際にジーンズのポケットに入れて持ち歩いたとしても、その存在はほとんど気にならないし、座ったり立ったりを繰り返しても邪魔に感じるようなことがない。

 大容量バッテリーのおかげで、厚みが20mm近くあるため、ポケットに入れたときなどの膨らみは気になるが、持ち運びを考えると、このサイズは絶妙と言って良いだろう。

 単に連続通信時間を延ばすだけなら、サイズや重量を無視して大容量のバッテリーを搭載すれば済む話だが、本製品では、きちんと持ち運びを考慮しながら、バッテリー容量が拡大されている。この点は高く評価したいところだ。

 

実働でも9時間をオーバー

 では、気になるその実力を検証していこう。いつも通り、URoad-8000に接続したPCから一定時間おきにPingとHTTP GETを繰り返すバッチファイルを実行させ続けたところ、9時間27分(11:10から20:37まで)の連続通信を確認できた。

 もちろん、今回のテストはWiMAXの電波を安定的に確保できる定点計測となるため、テスト環境によって時間は変化するが、カタログスペックに対してプラス27分ほどの連続通信時間は圧巻で、現状のモバイルルーターの中ではトップクラスの性能と言える。

 もちろん、USB経由での給電や充電も可能となっているため、PCやエネループなどと組み合わせて利用すれば、さらに連続通信時間を延ばすこともできる。

 また、バッテリーが取り外し可能となっているのも1つの特徴と言える。充電器が付属しているわけではないので、2つのバッテリーを充電して交換しながら使うことは考えにくいが、バッテリーが劣化した場合などでも手軽に交換できるのは大きな魅力だ。

 なお、通信中の発熱は表面が若干暖かくなる程度であった。この程度であれば、特に問題なさそうだが、鞄やポケットなどに長時間入れたままで利用すると熱がこもる可能性も考えられるため、通信しながら持ち歩く場合は、通気性の良い場所に入れた方がいいだろう。

バッテリーは脱着可能となっている

無線LANの規格と電源操作に注意

 このように、「URoad-8000」は、バッテリー駆動時間を考えると非常に優秀な製品と言えるが、いくつか注意が必要な点もある。

 まず、無線LANの規格がIEEE802.11b/gのみとなる。WiMAXの実効速度を考えると最大54MbpsのIEEE802.11gでも実用上は問題ないが、最近はIEEE802.11nに対応したモバイルルーターも多くなってきたため、若干見劣りするポイントとなる。

無線LANはIEEE802.11b/gのみに対応。設定画面もシンプル

 続いては、電源操作についてだ。一般的なモバイルルーターの場合、一定時間無通信の状態が続くと電源を自動的にオフにする機能が搭載されているが、本製品では、こういった制御機能はない。一旦、電源をオンにすると、自分で電源をオフにするか、バッテリー切れになるまで電源は常にオンのままとなる。

 実際にモバイルルーターを持ち歩くと、スマートフォンやPCを使う度に電源を入れる操作が面倒なので、使い勝手としては常にオンの方が良いうえ、実際、オンのまま使っても9時間以上バッテリーが持つので全く問題ないのだが、やはり電源をオフにし忘れてムダにバッテリーを消費してしまうことがたまにある。

 バッテリー駆動時間を考えると、他社製のルーターほど細かく制御する必要はないので、無通信時間が1時間続いたら電源を切るなど、電源の切り忘れを防止するための機能くらいはあると助かったところだ。

 また、これも基本的に常に電源オンで使う場合は気にならないのだが、電源を入れてから通信可能になるまでに1分近く時間がかかる。この時間も、もう少し、短くなるとありがたいところだ。

電源を入れるとインジケーターが点滅する。最終的にWiMAXに接続され使えるようになるまでには1分ほどかかる

 

駆動時間重視のユーザーに最適

 以上、シンセイコーポレーションのWiMAX対応モバイルルーター「URoad-8000」を試してみたが、カタログ通りの長時間駆動を実現しており、とにかくバッテリーを気にせず使いたいユーザーには、おすすめできる製品となっている。

 ただし、直接的なライバルとなるAterm WR3500Rと比べると、無線LANの規格やクレードルの有無(有線LAN対応)などで劣る部分もある。外出先での優位性はURoad-8000が上だが、オフィスや自宅で使う場合などを考慮すると、ライバルに比べて、まだ工夫の余地が残されている印象だ。

 今後、モバイルルーターのバッテリー駆動時間はまだ延びる可能性もあるが、サイズや重量を考えると、今後は単純な容量の増加だけに頼らない工夫が必要になってくると思われる。賢い省電力機能や素早い電源のオン/オフなど、限られたバッテリー容量をうまく使う工夫も求められてくるだろう。

 また、スマートフォンのテザリング対応によってモバイルルーターの存在意義も問われつつあるが、テザリングの場合、バッテリーを使い切ってしまったときに、メールや電話まで使えなくなってしまうため、まだまだモバイルルーターの需要はあると考える。むしろ、テザリングとの違いを明確に出せるようなモバイルルーターが登場してくることを期待したいところだ。


関連情報

2011/5/31 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。