第450回:2.4GHz/5GHz同時通信可能な450Mbps対応無線LANルーター ロジテック「LAN-WH450N/GR」
ロジテックから、3ストリームMIMOによる最大450Mbps通信に対応した無線LANルーター「LAN-WH450N/GR」が発売された。450Mbps対応製品は、他社からも発売されているが、2.4GHz/5GHzの同時通信に対応している点が特徴だ。その実力を検証してみた。
●変形タイプの巨大アンテナを装備
専有面積で言えば、本体そのものより、確実にアンテナの方が広い。そんな巨大なアンテナが印象的な無線LANルーターが、ロジテックの「LAN-WH450N/GR」だ。
巨大なアンテナが印象的なロジテックの無線LANルーター「LAN-WH450N/GR」 |
ここ最近登場してきた3ストリームMIMO対応の無線LANルーターの1つで、これまでの2ストリームMIMO製品で実現されていた300Mbpsの1.5倍となる450Mbpsの通信速度を誇る製品となっている。450Mbps対応の無線LANルーターは、他社からもも発売されているが、本製品は前述した巨大なアンテナと2.4GHz/5GHzの同時通信に対応しているのが特徴だ。
実際、このアンテナは、かなりインパクトがある。箱から取り出した状態では、折りたたまれた状態になっているが、それでも何か発射されそうな独特の雰囲気があり、その存在感に圧倒される。
側面 | 正面 | 背面 |
設置するときは、そのままアンテナを格納したままでもかまわないが、変形させることで電波の送受信感度を向上させることができる。三方に開き、さらに先端を延ばしたその姿は、まさに、あらゆる電波を逃さずキャッチするようなイメージで、言葉が悪いかもしれないが、ちょっと異様な雰囲気させ感じさせられる。
「格納」だの、「変形」だのといった言葉だけ見ると、戦隊モノやロボットの世界の話のようにも感じられ、とにかく外観は非常にユニークな製品だ。
箱から出した状態では畳まれているアンテナ。それでも存在感は十分 | 3ストリームMIMOの象徴とも言える3本のアンテナを開いた状態 | アンテナの先端は伸縮可能になっており、開くとさらに巨大化する |
●無線LANの利用に絞ったスペック
このように、アンテナだけに目が奪われてしまいがちな製品だが、「LAN-WH450N/GR」は無線LANルーターとして、非常に充実したスペックを誇っている。
前述したように最大450Mbpsでの通信が可能な3ストリームMIMOに対応しているが、IEEE802.11n/b/gの2.4GHzだけでなく、IEEE802.11n/aの5GHzにも対応しており、2.4GHzと5GHzの同時通信が可能となっている。
2.4GHzは、スマートフォンでの利用が進んできたうえ、公衆無線LANの充実などもあり、もはや空いているチャネルを探すのが難しいほどだ。特に、300Mbpsや450Mbps通信に必要な40MHzを確保するとなると、都市部ではほぼ不可能と言って良い状態にもなっている。このような環境を考えると、空いている5GHz帯が利用できるのは大きなメリットだ。
このほか、有線LANも、WAN×1、LAN×4ともにすべて1000BASE-Tに対応するなど、とにかく速度を意識したスペックになっている。
最近の無線LANルーターは、USB機器の共有やリモートアクセスなど、付加機能を搭載することが多くなってきているが、本製品ではこのような機能は一切搭載されていない。純粋に高速な無線LAN環境を低コストで(実売15000円前後)で手に入れたいというユーザー向けの製品と言えるだろう。
IEEE802.11n/a/b/gに対応。2.4GHzだけでなく、5GHzの同時通信が可能 | 背面の有線LANポートはすべて1000BASE-T対応 |
●自由度だけでなく難易度も高いアンテナ
気になるパフォーマンスだが、450Mbps通信に対応したThinkPad X1を利用して、木造3階建ての筆者宅でテストしてみたところ、以下のような結果となった。
同社のWebページなどでは実行200Mbps以上のテスト結果が掲載されているため、かなり物足りない値となっているが、電波状況やサーバーなどのテスト環境の違いが影響していると考えられる。あくまで筆者宅での値なので、テスト環境によっては、さらなる速度も期待できるだろう。
とは言え、実効で100Mbpsを超える通信が無線LANでもできるうえ、離れた場所でも30Mbps前後の速度を維持できるので、大量のファイルのアップ・ダウンロード、動画配信サービスなどの利用には最適と言えそうだ。
しかしながら、1つ注意したいのが、この製品は、かなりチューニングが難しいということだ。
前述したように、本製品には変形タイプの巨大アンテナが装着されているが、この形や方向によって、速度に影響が出る。
同一空間上で同一周波数の3つの電波を混在させてやり取りするMIMOの特性を考えると、アンテナはなるべく広く展開しておいた方が有利なので、とりあえず全開、MAXの長さで利用するのがおすすめだが、方向をどう調整するかが非常に悩ましい。
アンテナの根元を回転させたり、それぞれのアンテナを開いたり閉じたりして向きを変えながら、家中のそれぞれの場所で良好なパフォーマンスが出るように調整しなければならないのだが、この調整は非常に難易度が高い。
アンテナや向きや角度を調整可能。環境に合わせた調整が可能だが、実際に使うとなるとどう調整すればいいかが難しい |
最初は、おもしろがって、いろいろ試してみたくなるのだが、「あちらにアンテナを向ければ、こちらのPCのアンテナマークが減る」といった具合に、方向やPCの場所によって、どうして良いのかがわからなくなってくる。この巨大で自由度の高いアンテナの性能をフルに活かすには、ユーザー側にもスキルと根気が要求されそうだ。
なお、有線LANのスループットについては、以下の通りで、300Mbps前後となった。必要十分なスループットと言えるが、1Gbpsの光ファイバーなどで使う場合は、少々物足りない可能性もありそうだ。
有線スループット | |
GET(下り) | 299.14 |
PUT(上り) | 329.26 |
※Mbps ※サーバー:Core i7 860/RAM8GB/HDD2TB ※クライアント:ThinkPad X1(Intel Core i3-2310M 2.1GHz/RAM2GB/HDD320GB/Intel82579LM/Windows7 Professional 64bit) ※サーバー上に作成した4GBのRAMDISK上に900MBのMTSファイルを保存しFTPにてファイル転送した際の速度を計測 |
●最新ファームでの利用を
このように、「LAN-WH450N/GR」は、2.4GHz/5GHz同時通信可能で、450Mbps対応という他に類のない製品となっている。
現状、450Mbpsで通信可能なクライアントが限られるが、今後、PCやタブレットなどで450Mbps対応製品が増えてきた場合に便利なうえ、用途に応じて2.4GHzと5GHzで機器を使い分けることができるのは大きなメリットと言えそうだ。
なお、今回、筆者がテストした製品は、ファームウェアが初期バージョンの1.11であった。このバージョンのファームウェアは、無線LAN接続時にインターネット接続ができないことがあるという不具合があり、実際、筆者の環境でも2.4GHz側のSSIDに接続したときだけ通信ができない症状が発生した。この不具合は、最新のファームウェアで改善されているので、購入した際はファームウェアのバージョン確認とアップデートを忘れずにすることをおすすめする。
発売当初のファームウェア1.11では不具合あり。購入後はファームのバージョンチェックとアップデートを推奨したい |
できれば、ファームウェアのアップデートを自動的に実行するなどの工夫が欲しいところだが、こういった点を考えても、誰にでも使える製品というよりは、ある程度、スキルのあるユーザー向けの製品と言えそうだ。
関連情報
2011/7/26 06:00
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