Dropbox連携機能で任意のフォルダを自動同期 アイ・オー・データ機器「LANDISK XR」新ファームを試す


 アイ・オー・データ機器の法人向けNAS「LANDISK XR」シリーズに、Dropbox連携機能を搭載した新ファームウェアが登場した。クラウドサービスとの連携によって、NASはどのように進化していくのだろうか?

クラウドサービスの取り込み

 まだ融合というにはほど遠いが、これまでの競合的な関係から、まさに連携といったレベルまで前進したのではないだろうか。

 今回、アイ・オー・データ機器の法人向けNAS「LANDISK XR」シリーズ向けに提供が開始された「Dropbox」対応の新ファームウェアを使ってみると、そう感じさせられる。

アイ・オー・データ機器の法人向けNAS「LANDISK XR」。最新版のファームウェアでDropbox連携機能を搭載した

 小規模な環境のファイル共有環境として着実に普及してきたNASにとって、個人ユーザーや企業内個人の間で利用者を広げるクラウドストレージサービスとどのように対抗するかは大きな課題だった。

 これまでは、どちらかというとNASがクラウドストレージサービスの代替えとなる機能を取り込む方向が主流であった。実際、外出先からNASのデータにアクセスできるリモートアクセス機能などは、もはやNASの定番とも言える機能だが、これは明らかにクラウドストレージサービスに対抗するための機能と言っていい。

 しかし、今回のLANDISK XRでは、クラウドストレージサービスと競合する独自機能を搭載するのではなく、代表的なクラウドストレージサービスであるDropboxの機能、そのものを取り込むという選択肢を採用した。

 容量とコスト、さらにはWAN経由でのパフォーマンスを考慮すると、Dropboxが最適な解だとは言い切れないうえ、詳しくは後述するが機能的に物足りない部分もあるが、現状、多くのユーザーがすでに利用しているサービスをNASの機能の一部として取り込むことで、新しい用途での活用や新たな顧客層の開拓が可能になる可能性もありそうだ。

 個人的には、クラウドサービスとの融合という意味では、Pogoplugに一日の長があると思えるが、そういったデバイス+サービスへの対抗と考えても、今回のLANDISKシリーズのDropbox対応は興味深い進化と言えそうだ。


nasdsyncで同期

 実際の使い方は非常に簡単だ。まずは、LANDISK XRのファームウェアを同社のサポートページ(http://www.iodata.jp/lib/product/h/3246_win7.htm)からダウンロードして最新バージョンにアップデートする。

 Dropbox連携機能は、2012年2月22日に公開されたVer.1.40から対応しているが、本稿執筆時点ではDropbox連携機能の安定性向上が図られたVer.1.41がリリースされている。今後もアップデートされる可能性があるので、必ず最新バージョンをインストールしておこう。

Dropbox対応ファームウェアは同社のサポートサイトからダウンロード可能。必ず最新版をダウンロードしよう

 このバージョンのファームウェアを適用すると、共有フォルダーの設定でDropbox連携機能を有効にできるようになる。標準で「disk1」という共有フォルダーが作成済みとなっているので、これをDropboxで連携させてもかまわないが、新たに同期用の共有フォルダーを作成した方がいいだろう。

 共有フォルダーの新規作成画面で、共有フォルダー名を入力後、利用するサービスの一覧から「Dropboxで共有する」にチェックを付け、LANDISK内部で同期処理のために利用する識別名(任意の半角英数6から12文字)を設定する。

共有フォルダーの設定で「Dropbox」との連携を有効化設定後、表示されたURLからDropboxのサイトにアクセスnasdsyncのアクセスを許可すると同期が有効になる

 設定を適用すると、Dropboxのウェブページへのリンクが表示されるので、これをクリックしてログインすると、「nasdsync」に対してアクセスを許可するための画面が表示される。LANDISKでは、同社が独自開発したこのプログラムによって同期が実行されるので、接続のリクエストを許可しておこう。

 これで設定は完了だ。しばらくすると、Dropboxにあるデータが同期によってLANDISKの共有フォルダーへと自動的にコピーされる。もちろん、ファイルを共有フォルダーに新たにファイルを保存すれば、自動的にDropbox上にアップロードされるし、どちらかでファイルを削除すれば、同様に同期先でもファイルが削除される。

 イメージとしては、PC用のDropboxクライアントで設定した同期フォルダーとまったく同じ感覚だ。

 同社によると、ファイルのチェックは1分おきとなっているとのことなので、即座に同期されるわけではないが、ファイルを保存しておくだけで、同期されるのは非常に楽だ。常に起動しているNASならば、出かける直前にファイルをコピーしても、PCの同期フォルダーのように同期されるまで待つ必要がないので、まさに意識せずにDropbox上でファイルが扱えるようになる。


複数アカウントOKも容量は300MBまで

 単に同期させるだけならPC版クライアントでもいいではないか、そう思う人もいるかもしれないが、NASの共有フォルダの場合、複数のPCからアクセスできるため、社内の全員がアクセスできる共通のDropbox領域として利用することが可能となる。PC版は個人アカウント、NASは会社の共通アカウントといったように使い分けることも可能だ。

 また、LANDISK XRのDropbox機能は、共有フォルダーごとに個別のアカウントにひも付けすることが可能となっている。このため、LANDSIK上の「dropboxA」フォルダーはAさんのDoropboxアカウント、「dropboxB」フォルダーはBさんのDropboxアカウントといったように、個別に同期先を設定できる。

 NAS上にユーザーデータを保存するように運用している場合、そのホームフォルダーをユーザーごとのDropboxと同期させることもできるわけだ。ここまでできれば、運用次第で、いろいろな活用もできそうだ。

複数の共有フォルダーに対して、個別のDropboxアカウントを設定可能

 ただし、ひとつ注意点がある。nasdsyncの同期は、ウェブUI版のDropboxの仕様に準拠しているため、アップロードできるファイルが1ファイル300MBまでに制限されている。デスクトップ版のクライアントであれば、300MB以上のファイルも同期できるが、300MB以上のファイルをLANDISK XR上の共有フォルダーにコピーした場合、NAS上には保存されるものの、Dropboxには同期されない(設定画面にエラーメッセージが表示されスキップされる)。

 この制限はアップロードのみなので、デスクトップ版Dropboxなどを使ってアップロードした300MB以上のデータに関しては、同期によってLANDISK上にもダウンロードされるが、アップロードは300MB制限を回避することができない。これはDropbox側の仕様なので仕方がないが、大容量のデータを保存する機会が多いNASだけに、デスクトップ版同様に大容量ファイルもアップロードできるようにしてほしかったところだ。

300MBを超えるファイルは同期できない


NASの用途が広がる

 以上、アイ・オー・データ機器のLANDISK XRシリーズ向けに提供が開始されたDropbox対応ファームウェアを試してみたが、ファイルがシームレスにクラウドに同期されるのは、なかなか便利だ。

 これなら、Dropboxを使っていない場合でも、無料アカウントを取得して一部のファイルを同期してみようかという気になる。

 ただし、前述した300MBの制限がやはり残念だ。せっかくなので、Dropboxと密に連携し、この制限をなくしてほしいところだ。ついでなので、LANDISK XR購入者向けに無料の5GBの容量が拡張されたり、有料アカウントが安くなるような特典があれば、なおいい。

 また、今回のファームウェアは法人向けのLANDSIK XRシリーズ向けなので、価格的にコンシューマーには手を出しにくい面もある。今後、このファームがコンシューマー向けのNAS、さらにはルーターなどの製品にも対応してくれば、アイ・オー・データ機器ならではの特長として、市場での評価も高くなってくるのではないだろうか。


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2012/3/21 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。