生まれ変わったWindows Live

第6回:クラウドとの連携を強化したWindows Live Mail 2011


 Windows XPはOutlook Express、VistaはWindowsメールというように、これまでのマイクロソフトのOSは、メールソフトが標準でバンドルされていた。しかし、Windows 7では、OSにはメールソフトは標準バンドルされていない。Windows 7では、Windows Live Essentialsをインストールすれば、Windows Live Mailが利用可能になる。

 Windows Live Essentials 2011にバンドルしているWindows Live Mail 2011は、Office 2007から採用された「リボンUI」を全面採用している。リボンUIは、ウィンドウ上部を横断するように設けられたタブとボタンによるユーザーインターフェイスだ。

 メールソフトとしての機能は、以前のWindows Live Mailと変わらず、RSSリーダー機能やニュースグループも従来同様サポートされている。個人的には、もうニュースグループリーダーとしての機能は、さすがにいらないのではと思うほどだ。

 今回のWindows Live Mail 2011での大きな強化点は、クラウドサービスとの連携だ。ウェブメール「Hotmail」との連携は当然として、Windows Liveのカレンダーやアドレス帳との連携機能が強化されている。さらに、SkyDriveと連携してフォトメールの送受信が行える。

リボンUIを全面採用したWindows Live Mail 2011

 Windows Live Mail 2011は、Officeなどで特徴なリボンUIを全面的に採用している。このため、以前のWindows Live Mail 2011を利用してたユーザーにとっては、使い勝手が異なり面食らってしまうかもしれない。

 リボンUIに関しては、賛否いろいろあるが、Office2007で採用して、Office2010では全面的にリボンUIを採用してきたことを考えれば、マイクロソフトとしては今後アプリケーションのUIとしては、リボンUIの方向に進んでいくということだろう。

 Windows Live Mail 2011を試してみて便利だと感じたのは、ウェブメールの設定だ。Hotmailは当然として、Gmail、Yahoo!メールなど他社のウェブメールにも対応している。

 GmailやYahoo!メールなどのウェブメールをWindows Live Mail 2011で使うには、これまでのバージョンと同様に、メールアドレスとパスワードをメールアカウントに入力するだけでOKだ。難しいメールサーバー名の設定など、まったく行う必要はない。

 さらに簡単なのは、Hotmaiの設定だ。Hotmailは、Windows Live Mail 2011のリボンUI上に表示されているWindows Live IDのアイコンでサインインするだけで、自動的に各種の設定をして、メールをダウンロードしてくれる。

 メールの設定は、POP3やSMTP、IMAPなど設定項目の意味がそもそもわからないなど、初心者にはかなりハードルが高い。Windows Live IDにサインインするだけで設定が完了するため、初心者にとっては使いやすいサービスとなっている。

 Hotmailのアカウントを利用する場合、メールの本文は、Hotmailのサーバー上に保存されているため、Windows Live Mail 2011から見るときと、ウェブブラウザーからHotmailを利用する際に、こちらにあってあちらにはないといった差違が生じる心配はない。

 ただし、Windows Live Mail 2011でHotmailアカウントを利用する際に、パソコンがネットワークに繋がっていないと、本文が読めないのでは不便だ。そこで、Windows Live Mail 2011には、オフラインモードも用意されている。

 また、Windows Live Mail 2011では、手動でメールサーバー名などを設定すれば、ISPなどのメールボックス(POP3)にもアクセスできる。この設定を行うことで、Windows Live Mail 2011で、複数のメールアカウントを管理することができる。

 なお、Microsoft Officeシリーズの有料版メールソフト、Microsoft Office Outlookでは、各ISPと協力して、自動アカウント設定の機能を備えている。今後、Windows Live Mail 2011にもこういった機能が搭載されることを期待したい。

 個人的には、Hotmailが使いやすくなったので、ISPメールもすべてHotmailに転送hして、すべてのメールがHotmailで管理可能になった。ウェブメールのHotmailなら、自宅のデスクトップPC、ノートPCなど、複数のマシンで利用する場合にも、環境の違いやデータ同期などを心配する必要もない。さらに、Hotmailなら、メールボックスの容量も無制限となっており、何十年にもわたって、メールをアーカイブしておくこともできる。

 迷惑メールに対するフィルターも強化された。アドレス帳に登録されているアドレス以外からのメールでは画像を表示しないなど、Hotmailで採用された迷惑メール対策機能が搭載されている。

 画面レイアウトについても、コンパクト表示を用意し、プレビュー画面の表示場所などをユーザーの使いやすいようにカスタマイズすることも可能になった。また、Hotmailでサポートされたメールのスレッド表示もサポートされた。

 少し注意が必要なのが、Windows Live Mail 2011を、すでに使っているウェブメールのアカウントと同期させるときだ。Widows Live Mail 2011は、最初にウェブメールからメールの件名やメッセージをダウンロードする。このため、何万件ものメールがあるウェブメールのアカウントを設定したときは、同期に数時間かかることもあるので時間の余裕をみておこう。

 そのほか、Gmailに関しても、迷惑メールとゴミ箱フォルダーに自動的に対応するなど細かい点だが、強化されている。

Windows Live Mail 2011のメイン画面。上部には、リボンUIが用意されている。電子メール アカウントの追加は、リボンメニューのアカウントから行う。Webメール以外のISPメールもサポートされている。マイクロソフトは、Outlookと同じように、ISPメールを自動設定できるようにしようと計画している表示タブで、コンパクト表示した。左のペインがアイコンだけになっている
さらに、カレンダー表示も行わないと、コンパクトな画面になるので、画面の狭いネットブックで使っても大丈夫だメッセージ一覧を1行にすれば、多くのメールを一目で確認できる。Windows Live Mail 2011のクイック分類の設定。この設定に従った、クイック分類にメールが仕分けられる。複数のメールアカウント使っていると結構便利だ

クラウドとの連携~Liveカレンダー、アドレス帳

 Windows Live Mail 2011は、メール以外にもWindows Liveのさまざまなサービスとの連携が重視されており、前述したHotmail以外にも、Windows Liveカレンダーやアドレス帳との連携が図られている。

 新しいWindows Live Mail 2011では、ユーザーごとに共有カレンダーが設定可能になった。これにより、グループでのスケジュール共有も簡単になっている。

 また、Windows Liveに登録されているアドレス帳をWindows Live Mail 2011で使用することが可能になった。新しいWindows Liveでは、SNS連携などにより、FacebookやMyspaceなどから友人情報を取り込むことも可能だ。

 この機能により、自動的にアドレス帳にも、各SNSに登録されている友人のメールアドレスが取り込まれる。この機能により、Windows Live Mail 2011では、SNSに登録してある友人やWindows Live Mesenger 2011のコンタクトリストに入っている知人のメールアドレスが自動的に利用可能になる。

 Liveカレンダーで面白かったのは、カレンダーファイルをインポートしたり、購読する機能が用意されていることだ。iCALやICSファイルなどを使って、Liveカレンダーにスケジュールを追加できる。もっとも、こうした機能は、他のウェブメールサービスやメールソフトなどでも提供されており、特別目新しい機能というわけではない。

 多くの企業がカレンダーサービスを積極的に利用するようになれば、いろいろと便利になるだろう。たとえば、IT関連のイベントスケジュールを提供したり、プロスポーツの試合スケジュール、コンサートスケジュールなどをLiveカレンダーに取り込むことで、つねに最新の情報が閲覧できれば、チケットの買い忘れ防止などに役立つだろう。

Windows Live Mail 2011は、Windows Liveのアドレス帳が利用できる。Windows Liveのアドレス帳は、SNS連携により、SNSの友人も登録されているWindows Live Mail 2011のカレンダーは、Windows Liveカレンダーと同期しているWindows Live Mail 2011のカレンダーに登録したスケジュールは、WebサービスのLiveカレンダーに自動的に反映する
自分のカレンダーを複数の人と共有することができる。招待メールは、Liveカレンダーで設定を変更すれば、自動的に送信されるLiveカレンダーは、公開されているカレンダーデータを読み込むことができる6月から開催されたサッカーのワールドカップの試合スケジュールも公開されていた。これをつかえば、どの試合が、いつあるのかもカレンダーですぐにわかる

OutlookもWindows Liveに連携できる

 Windows Live Essentials 2011は、「Microsoft Office Outlook Connector」というアドインソフトが入っている。このアドインをOutlookにインストールすれば、OutlookからHotmailのメールボックスにアクセスする事が可能になる(Outlook 2010用に、32bit版/64bit版の両方が用意されている)。

 また、カレンダーに関しても、Liveカレンダーの情報をOutlookに取り込み、Windows Liveの複数アカウントの予定を確認することも可能だ。

 ただし、Outlookの予定表(カレンダー)をLiveカレンダーにアップロードして、OutlookとLiveカレンダーを同期させることはできない。自宅や会社のパソコンでOutlookを使って管理しているスケジュールが、そのままWindows Liveカレンダーに同期されれば、外出先でもつねに最新のスケジュールが容易に確認できる。また、Liveカレンダーで変更したスケジュールが、Outlookのスケジュール帳に反映されるようになればさらに便利だろう。

 このOutlookの予定表とLiveカレンダーの同期機能は、以前からユーザーの間で要望が上がっている機能だ。ライバルのGoogleは、OutlookとGoogleカレンダーを同期するGoogle Calendar Syncというソフトをリリースしていることもあり、Windows Liveでも早急にサポートして欲しい機能の1つといえるだろう。

Windows Live Essentials 2011には、Microsoft Office Outlook Connectorが入っている。このプラグインを使えば、OutlookでもHotmailのメールボックスにアクセスできるLiveカレンダーにスケジュールをOutlookに読み込むことが出来る。ただし、Outlookの予定表を自分のWindows Live IDに同期させることはできない。また、Liveカレンダーを使うには、必ずHotmailのメールボックスにアクセスできるようにする必要がある

GB単位の写真付きメールもOK

 多くのウェブメールサービスでは、添付ファイルの容量上限=1ファイルあたりの容量上限となっている。たとえば、添付ファイルが1つでも複数でも添付ファイルの容量上限は、Gmailなら25MB、Yahoo!メールなら20MBだ。

 Hotmailでは、添付ファイルは1ファイルの容量上限が50MBまでとなっている。GmailやYahoo!メールよりも大容量のファイルが添付できるものの、いまどきの1000万を超える画素数のデジカメで撮影した画像をまとめて圧縮して添付しようと思うと、簡単に50MBを超えてしまう。

 そこでHotmailでは、SkyDriveと連動する方式で、合計10GBまでの添付ファイルを送ることができるようになっている。

 オンラインストレージのSkyDriveにいったん送信したい添付ファイルをアップロードして、相手にはSkyDriveにアップしたURLを送信するというやり方だ。

 Windows Live Mail 2011では、HotmailのSkyDrive連携を使って、「フォトメール」というメールを特別に用意している。このフォトメールを使うことで、複数の写真をフォトアルバムとして一括送信が可能になる。

 何よりも便利なのは、Windows Live Mail 2011内部で、複数の写真を選択すれば、自動的にSkyDriveにアップロードして、URLを相手先に転送できる点だ。

 受信側にとって便利なのは、アップロードされた写真へのアクセスURLがメールにはられているだけではなく、HTMLメールとして、SkyDriveにアップされている写真のサムネイルも表示される点だ。さらに、フォトメールのデザインもテンプレートから選択できる。

 HTMLメール上ではサムネイルとして表示されるフォトメールは、メール中にある「スライドショーの表示」をクリックすれば、Silverlightのスライドショー プログラムが起動して、大画面で写真を確認することができる。また、「ダウンロード」ボタンを押せば、SkyDriveから写真を一括ダウンロードできる。非常にスムーズな使い勝手だ。

 また、実際にフォトメールを使ってみて便利だと感じたのは、アップロードした写真は90日で自動消去してしまう機能だ。これなら、SkyDriveにアップロードしても、90日後に消去されるから、整理しないとどんどん溜まってしまい、SkyDriveのストレージを圧迫してしまうおそれもない。

 ただし、ダウンロードできる期限を変更したり、相手がダウンロードしたら自動消去されるなど、柔軟な設定・管理ができない。このあたりは、SkyDrive側の機能にも関わるのだが、できれば柔軟なコントロールができるようにして欲しい。

 また、SkyDriveと連携するフォトメールは、写真しかアップロードできない。できれば、PDFやZIPファイルなど、いろいろなファイル形式に対応してくれればより便利になる。

 個人的には、無料ファイル転送サービスの「宅ふぁいる便」のようなことが、Windows Liveで可能になれば、非常に便利になると思う。さらに、Windows Live Mail 2011やOutlookなどのメールソフトから、簡単に送信できれば、活用するユーザーもかなり多いと思われる。

 なお、ウェブメールサービスのHotmailでは、SkyDriveを利用したDocメールが利用可能だ。

Windows Live Mail 2011の「フォトメール」では、容量の大きな写真をアルバムとして送信できるフォトメールには、テンプレートが用意されているため、テンプレートを変えれば、いろいろなデザインが試せる。フォトメールは、HTMLメールとして送信されるフォトメールでスライドショーをクリックすると、Silverlightが起動して、写真をスライドショーとして表示してくれる。Silverlightはブラウザー外でも動作するため、スライドショー単独アプリケーションのようなイメージで利用できる
ブラウザーからスライドショーにアクセスすると、ブラウザー内でSilverlightが起動して、写真を見せてくれるフォトメールで写真をダウンロードする時は、ZIP形式に圧縮して、一括でダウンロードできるフォトメールは、写真をSkyDriveにアップロードする。アップロードした写真は、90日間だけアクセスできる

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(山本 雅史)

2010/8/27 06:00