イベントレポート

Interop Tokyo 2016

QNAP、クリエイターや企業向けのNASを展示 10TBのヘリウム充填型Seagate製HDDによるデモも

 台湾のNASメーカーQNAP Systems, Inc.の日本法人QNAPは、8日から幕張メッセで開催している最新のICT技術やソリューションを体験できる展示会「Interop Tokyo 2016」で、主に企業向けにフォーカスした高性能NAS製品を展示している。

 コンシューマー向けNAS製品の分野ではよく知られるQNAPは、2015年10月の日本法人設立を機に、日本市場によりマッチした製品の開発を加速させ始めた。同社ブースでは、大容量のCG・動画データなどを扱うハイエンドユーザーあるいはクリエイター向けの据え置き型製品と、主に中小企業からデータセンターなどまでのエンタープライズに向けたラックマウント製品を、一部デモを交えながら紹介している。

QNAPのブース

データの超高速転送に対応するThunderbolt 2搭載DAS兼NAS

 ハイエンドユーザー・クリエイター向けの据え置き型製品として展示されているのは、Thunderbolt 2を搭載し最大20Gbpsの高速データ転送に対応したNAS「TVS-x82T」シリーズ。6ベイ・8ベイ・12ベイの3タイプをラインアップしている。

 6ベイ・8ベイの両モデルは2個の2.5インチベイにキャッシュ用SSDを、残りのベイに3.5インチSATA HDDをそれぞれ搭載でき、12ベイのモデルはキャッシュ用の2.5インチSSDを4台搭載可能なモデルとなっている。

「TVS-x82T」シリーズのデモを行っている
6ベイモデルの「TVS-682T」
12ベイモデルの「TVS-1282T」

 Skylake世代のデュアルコアまたはクアッドコアのIntel Core i3/i5/i7を採用しているのも大きなポイントで、最大32GBのDDR4メモリを搭載可能。Thunderbolt 2ポートを2つ用意しているほか、USB 3.0ポートを5個、10Gbps対応イーサネットポートを2個、管理画面の表示や動画再生に使用可能なHDMIポートを3個利用できる、圧倒的なパフォーマンスを誇るストレージシステムとなっている。

 ターゲットは大容量のデータを日常的に扱うユーザー。例えば3D CGレンダリングや動画編集を行うCGデザイナーもしくはクリエイターなどが挙げられる。2台までのThunderbolt 2搭載PCと接続し、高速に読み書きできるDAS(ダイレクトアタッチトストレージ)として使用できるだけでなく、ネットワーク上の他のPCからNASとしてもアクセス可能な柔軟性を備えているのが特徴だ。

 OSはQNAP製品ではおなじみのQTSを搭載。発売は6月下旬から7月上旬を予定。価格は現在のところ未定となっている。

デモ機の「TVS-682T」には4台のSeagate製HDDのみ搭載し、SSDは非搭載の状態
それでもベンチマークではリード1GB/s以上、ライト400~500MB/sを記録していた
もちろんHDDはホットスワップが可能
正面から。内部のM.2スロットにSATA SSD(最大6Gbps)を装着することもできる

“デュアル”を軸に展開するラックマウント製品

 エンタープライズ向けのラックマウント型製品のなかでは、最大16ベイ・計160TBの3.5インチまたは2.5インチのSAS/SATA HDDと、2台のキャッシュ用SSDを1Uサイズに集約可能なストレージシステム「TDS-16489U」に注目したい。

 仮想化も含めたアプリケーションサーバーやストレージサーバーとして用いられる製品で、Intel Xeon E5-2600 v3プロセッサをデュアルで搭載しているのに加え、PCIeスロットにはGPGPUなどに用いることを想定したAMD Radeon R7またはR9シリーズのグラフィックスカードを追加することも可能だ。発売は6月中を予定している。

10TB HDDを搭載することで計160TBの大容量ストレージとなる「TDS-16489U」

 2つのストレージシステムを1台の筐体に収めたかのような「ES1642dc」は、日本では7月に発売が予定されている。こちらは最大16ベイの3.5インチまたは2.5インチのSAS/SATA HDDを搭載でき、次世代ファイルシステムのZFSに対応する。内部には全く同じ2つのシステムボードがビルトインされ、HDDのホットスワップはもちろんのこと、システムボードにトラブルが発生した場合にはシステムボード自体をホットスワップすることができる。OSはLinuxベースのQTSではなく、Free BSDベースのQESを新たに採用している。

「ES1642dc」
内部にはこのユニットが2個搭載されている

 以上のようなエンタープライズ向け製品の拡充は、従来コンシューマー向け製品を中心に展開してきたQNAPとしては日本市場における新しい試みとなる。同社マーケティング部長の神崎尚君氏によれば、日本法人設立によってより敏感に日本のユーザーの要望に対応できるようになったことと合わせ、ソフトウェアとハードウェアの両方を自社開発しているという強みを活かしながら、戦略的な価格も意識しつつ、ローエンドとハイエンドの中間をターゲットにエンタープライズ市場における存在感を高めていきたいとしている。

QTS上には、インストールした複数の異なる仮想OS環境を一元管理できる仕組みが用意されている
ややコンシューマー寄りのTSシリーズ、TVSシリーズも展示

QNAP製品はSeagate製HDDでデモ。無料のデータ復元サービスがポイント

 ブースで紹介しているデモ機には、Seagate製の「NAS HDD/Enterprise NAS HDD/Enterprise Capacity 3.5 HDD」のいずれかを使用していた。これは、コンシューマー向けかエンタープライズ向けかにかかわらず、QNAPとSeagateが協力してNAS製品の市場を盛り上げるべく互いの商品PRに活用しているというもの。

 SeagateのNAS用HDDの2ブランドには、3年もしくは5年の保証期間が設けられているだけでなく、Seagate独自の「Seagate Rescue サービス」が付帯されているモデルも設定されている。保証期間内であれば万が一の故障時に交換対応してもらえるのはもちろんのこと、容量制限なしのデータ復元サービスを1回、無料で受けられるのも大きなメリットだ。

デモ機の「TVS-682T」に使用されていたSeagateの「NAS HDD」
仮想化の一元管理のデモ機に使用されていた8TB容量の「Enterprise NAS HDD」
「TDS-16489U」のデモ機に使用されていた10TB容量のヘリウム充填型「Enterprise Capacity 3.5 HDD」
3種類のHDDの違い

(制作協力:Seagate)