イベントレポート
IPv6 Summit in TOKYO 2016
日本のIPv6、普及率は高いがコンテンツの対応に遅れ、アドレス分配は「早くから進んだが息切れ」も
2016年12月2日 13:14
IPv6のカンファレンス「IPv6 Summit in TOKYO 2016」が11月28日に「Inetenet Week 2016」の同時開催イベントとして開催された。
ここでは、IPv6の最新動向についてデータをもとにレポートするセッション「IPv6アップデート」の模様をレポートする。
日本は世界に比べコンテンツのIPv6対応に遅れ
北口善明氏(金沢大学総合メディア基盤センター)は、IPv6の普及状況に関する最新データを紹介した。
まず、Cisco 6labによる国別のIPv6対応率。日本は38%で13位であり、同程度の国にはノルウェーやオランダ、インドネシアなどがいる。それ以上の対応率の国の中では、ベルギーやドイツ、エクアドルが伸びているという。
ここで北口氏は、普及度の指標として「ユーザー」「ネットワーク」「コンテンツ」の3つを挙げ、「鶏と卵の関係にある」と説明した。そして、端末やサーバーのOSはほぼすべてIPv6に対応しており、あとはネットワークとコンテンツの対応を待つ状況だと語った。
続いて、GoogleへのIPv6アクセスの割合。2012年のWorld IPv6 Launchのあたりから急速に伸びており、シグモイド関数で近似すると2019年に50%を超えると予想されるという。
次は、世界のISPごとのIPv6アクセスのトラフィック量。日本からはKDDIが3位に、6位にソフトバンクがランクインしている。「ただしこれはデータ量であり、対応率だけからいうと日本は低い」と北口氏は補足した。
米国ではモバイルキャリアのIPv6対応も進んでいるという。Verizon WirelessはIPv6ネイティブで、T-Mobileは464XLATで対応しており、両者とも7割を超える。
その次は、各国のネットワークのIPv6対応状況。RIPE NCCがBGPの経路情報から割り出した対応率を見ると、各国ともIANAのIPv4枯渇を境に大きく伸びていることがわかる。特にベルギーは、IANAのIPv4枯渇のタイミングで急激に対応率が上がっている。
日本は、「ネットワークだけいうとIPv6普及率が世界の中でも高い」と北口氏は言う。KDDIは100%で、NGNも20%を超えた。その一方で、世界のコンテンツプロバイダー(サイト)のIPv6対応状況を見ると、日本は韓国や中国とともに50%未満で低い。
日本のコンテンツプロバイダーのIPv6対応状況をドメイン種別ごとに見ると、汎用jp(日本語ドメイン)がホスティングサイト利用が多いため47.09%と特殊だが、その次のgo.jpが10.12%、ad.jpが6.46%と低い数字になっている。
最後に2016年の現状が語られた。大きいのがAppleのApp StoreアプリでIPv6対応が必須化されたことだ。さらに、iOSやmacOSにおいて、IPv6をIPv4より優先するようにも変更されている。
また、日本の携帯キャリア大手3社が2017年にIPv6デフォルト化すること(別記事を参照)や、大手ISPでのIPv6デフォルト化の動きを挙げて、「2017年はIPv6化が進むかもしれない」と北口氏は語った。
日本のIPv6アドレス分配は「早くから進んだが息切れ」
佐藤晋氏(JPNIC)は、IPv6アドレスの分配状況に関する最新データを紹介した。
まずRIR(地域インターネットレジストリ)ごとのIPv6アドレス分配件数については、特にヨーロッパ地域(RIPE)の分配数が極端に多いという。アジア太平洋地域(APNIC)は、この2~3年で伸び率が増えた。
各RIRの分配アドレスサイズごとの件数を見ると、RIPEの/29が5243件と多く、全体的に分配数でもヨーロッパ地域が多いことがわかる。これは、/32の基準を満たせば/29までもらえるからだという。北米(ARIN)では/22に22件集まっているが、これはすべて同一の国防組織のものだという。
IPv6アドレスの分配数とIPv6普及率(APNICおよびAkamaiの調査結果)のランキングを並べてみると、ここでもヨーロッパが多い。一方、南米や中国は、分配数は多いが対応率は高くない。
アジア太平洋地域の国別のIPv6アドレス分配数の推移を見ると、中国では2013~2014年ごろから急に分配数が伸びている。それと対照的なのが日本と韓国で、「早い段階からIPv6割り当てを進めたが、最近はほかと比べて息切れを起こしている」と佐藤氏は説明した。
ちなみに日本のJPNICでは、IP指定業者415組織のうち244組織がIPv6アドレスの分配を受け、特殊用途PIアドレス(/48)が45件だという。
そして、IPv4アドレスの枯渇に話題が移った。各RIRの在庫を見ると、いずれも1を切っている。IPv4アドレスの分配状況は、LACNIC(中南米)とARIN(北米)ではすでになくなっている。APNICとRIPEは/22で少しずつ分配しているが、APNICは2019年になくなると予測しているという。
残る方法は、IPv4アドレスを譲渡するIPアドレスの移転だ。かつては地域内移転しか認めなかったが、地域外移転も認めるようになり、移転数が急激に伸びた。ただし、限りあるものであるため「IPv4アドレスの取り合いになり、入手コストも上がる傾向にある」と佐藤氏は説明した。
IPv6普及・高度化推進協議会の活動報告
最後にIPv6普及・高度化推進協議会/株式会社三菱総合研究所の津国剛氏が、IPv6普及・高度化推進協議会の活動を報告した。
活発なWG(ワーキンググループ)の中から、「IPv4/IPv6共存WG」と「サーティフィケーションWG」について報告。IPv4/IPv6共存WGについては、「IPv6家庭用ルータSWG(サブワーキンググループ)」や「IPv6導入に起因する問題検討SWG」、「アプリケーションのIPv6対応SWG」、「アプリケーションのIPv6対応SWG」の活動が紹介された。サーティフィケーションWGについては、IPv6 Ready Logo認証の推移が紹介された。