イベントレポート
Japan IT Week 春 2013
マーケティングツールとして見たLINE~新サービス「LINE FREE COIN」も発表
国内ユーザー4500万で全国津々浦々、全年齢層にリーチ
(2013/5/9 09:55)
8日に開幕した「第7回Web&モバイルマーケティングEXPO 春」では、基調講演にLINE社の取締役 出澤剛氏が登壇。マーケティングツールとして活用されるLINEの実例や、新サービスの「LINE FREE COIN」「企業Home」「企業Timeline」が発表された。
1億5000万ユーザーを突破したLINEの現状
出澤氏は、まずLINEの現状を最新データを交えながら紹介。4月30日にユーザー数は全世界で1億5000万を突破し、1月18日からわずか3カ月程度でこの数値を達成できたことが語られた。日本のユーザー数は4500万。出澤氏は「日本以外の海外ユーザーが1億人を超えた。日本初のウェブサービスで、海外でこれだけのユーザーを獲得し、しかも拡大しているものはほかにない」と自信をのぞかせた。
LINEは現在、230以上の国や地域でサービスを行っており、43の国や地域でApp Storeの1位を獲得した。海外では、特に台湾、タイなどで高いシェアを誇り、欧州では「最近急速に伸びているのがスペインで、1000万人以上が使っている」という。このLINE上でやり取りされるメッセージは、1日に50億件以上になる。
無料のメッセージアプリとして急成長しているLINEだが、「成長の方向性は2つある」。1つ目が「海外への水平的な展開」で、上述したようにアジアだけでなく、欧米への普及も加速させている。もう1つの軸が「プラットフォームへの進化」だ。出澤氏はこれを「メッセージングだけでなく、コンテンツやゲームと、幅を広げたり深さや高さを出す、垂直方向のプラットフォーム化」と呼ぶ。
昨年7月に同社が開催した「LINE Conference Hello, Friends in Tokyo」というイベントでプラットフォーム化の方針が発表されたLINEだが、出澤氏によると「スタートは順調にいっている」という。
「LINE POP」や「LINE バブル」など、LINEの名前を冠したゲームは24タイトルがリリースされ、「合計のダウンロード数は1億を超えている」。また、ゲーム以外の分野も好調に推移している。写真加工アプリの「LINE camera」は3000万ユーザー、アバターアプリの「LINE Play」は700万ユーザーを集め、全世界で利用されている。日本向けにリリースした「LINE マンガ」や「LINE 占い」も、App Storeで各ジャンルの1位を獲得した。
マーケティングツールとしての基本データ
こうしたユーザー数の伸びや、プラットフォーム化の成功を受け、マーケティングツールとしての価値が高まっているというのが、基調講演のメインテーマだ。マーケティングに関しても「1年足らずで大手企業100社程度にご採用いただけた」と、出足は好調。友だち数限定で月額5250円の小規模企業向け公式アカウント「LINE@」も、「数千社にご利用いただく」状況だ。
LINEはDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)が非常に多く、「国内では全体の50%を超える。国内ユーザーが4500万とご紹介したので、2000万人以上が1日に1回以上LINEを使っている」ことになる。
海外大手SNSの日本での状況と比較してもこの数値は突出しており、「TwitterやFacebookが1000万台と言われているので、LINEは1日のアクティブユーザー海外のソーシャルメディアを抜いている」。また、この数値は若年層ほど高くなり、24歳以下に区切ったデータでは、70%以上が1日1回以上、アプリを起動しているという。
ユーザーの性別はほぼ半々。元々若年層を中心に広がったサービスだが、「昨年後半に一般化が進み、現状は30代以上のユーザーが55%」と、年齢層にも広がりを見せている。こうした結果、「マーケティングの観点で考えると、若者向けのキャンペーンしかできないのではなく、全年齢に使える」ようになった。
一般的にインターネットサービスは都市部にユーザーが集中する傾向にあるが、出澤氏によると、LINEはこれに当てはまらないという。「人口統計にほぼ相似しているため、全国津々浦々に効果が出る。」
一方で、特にアクティブなユーザーはやはり男性だと10~20代、女性だと10~30代に集中しているため、新聞やテレビなど、既存メディアがリーチできなかった層も取り込めることも語られた。
高い効果を発揮するLINEでのマーケティング
出澤氏からは、いくつかの企業の実例も紹介された。たとえば、大丸松坂屋百貨店では、3月12日から公式アカウントと企業スタンプの配布を開始。ここには、同百貨店のキャラクターである「さくらパンダ」が活用されている。
公式アカウントはスタンプ配布と連携させたことで、1カ月で320万人の友だちを獲得。こうした施策は効果が高く、通常でも「1カ月で200万人ぐらいの友だちを集めることができる」という。大丸松坂屋百貨店は、ここに対してメッセージを送付。1000円以上の商品購入でオリジナルグッズ、来店でチョコをプレゼントするキャンペーンを行ったところ、高い効果が出た。1000円以上のレシートを持ってきたユーザーは8200人、キャンペーンを通じた売上は5400万円にものぼったという。
出澤氏が「公式アカウントのスモールスタート版」という「LINE@」は、横浜にある「いしがまやハンバーグ」の事例を紹介。こちらのアカウントは店員が名札にQRコードをつけるなどの工夫をし、200人集まったユーザーに対してクーポンを送付した。その結果、開封したユーザーが112人、50人の客が店舗を訪れ、クーポンを使ってデザートを注文したという。
また、4月に始まった、特定の商品を購入した際にスタンプをプレゼントできる「LINEマストバイ」は、コカコーラが導入。「爽健美茶」のキャンペーンと連携させたところ、20万人がスタンプをダウンロードし、そのスタンプは平均7.5回使用されたとう。
では、なぜLINEはマーケティングツールとしても効果が高いのか。出澤氏はその理由を2つあるといい、次のように語っている。
「1つは友達を集めやすく、マーケティングに参加する障壁が著しく低い。利用者もものすごく多く、DAUも50%を超えている。もう1つの特徴として、プッシュメッセージがものすごく効く。この2つの掛け合わせで、お客様が動く。」
ただし、企業アカウントがユーザーにとってSPAMのようになってしまっては本末転倒だ。そのためLINEでは広告事業開始当初に、「絶対にぶれない軸を作った」。
出澤氏は当時を振り返りながら、「ユーザーが喜ぶ情報、価値のある情報を提供し、キャンペーンへの参加がストレスなく簡単にできること。この2点にこだわってきた」と語る。こうした前提があるからこそ、バナー広告や属性広告のインターフェイスをあえて廃し、結果としてマーケティングツールとしての価値も高まっているというのが、出澤氏の分析だ。
マーケティング用の新サービスも投入
一方でLINEには「弱点もいくつかある」。その1つが双方向性。SNSとは異なり、今のところ、ユーザーが企業に対してメッセージを送ることはできない。また、プッシュでのメッセージ配信は効果が高い半面、「(SNSの)タイムラインと同じ内容、同じ頻度できたらウザく思われる」デメリットもある。こうした欠点を補完するため、LINEは一般ユーザー向けに提供されている「ホーム」や「タイムライン」を、企業向けにも導入する予定だ。さらに先には、ポイントやマイレージに近いサービスの開始も計画している。
このほか、7月には、新サービスの「LINE FREE COIN」を開始する。対象はAndroidのみで、「いわゆるリワード広告」となる。ユーザーはアプリをダウンロードすることでコインが獲得でき、これを使って有料スタンプを購入できる仕組みだ。LINEでは、アプリでビジネスを行っている企業の活用を視野に入れている。