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イベントレポート

孫正義氏、全世帯へ光ファイバー整備する「光100%」の意義語る


孫正義氏。一般聴講客を前にしての講演は約10年ぶりという

 一般社団法人ブロードバンド推進協議会は23日、シンポジウム「三木谷浩史・孫正義が語る『国民の、ITによる、日本復活』〜ブロードバンドアクセス100%がもたらす国民生活の変貌とポテンシャル〜」を都内のホテルで開催した。同協議会の代表理事であるソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏が講演し、総務省で議論されている「光の道構想」を積極的に推進し、従来のメタル回線(電話回線)を光ファイバーへ入れ替える形で、全世帯ブロードバンド化を目指すべきと主張した。

「21世紀は光の道へ」

 孫氏は「光ファイバーを全世帯へ配備するのは突拍子もないことだと思われるが、シンガポールや韓国はそれに向けて動き出している」と説明。さらに「日本でもかつて後藤新平(明治・大正期に活躍した政治家)が、馬車の時代には大規模すぎる道路整備案を関東大震災後の復興計画として実行した。当初は大風呂敷だと非難されたが、実行されていなければ東京の渋滞はもっとひどかったはずだ」と補足した上で、インフラ整備は数十年先を見越して実行すべきだと強調する。

 後藤新平の計画は“車の道”として生活に必要不可欠なインフラとなった。その後は水道の道(水道)、電気の道(電力網)、通話の道(電話網)が登場。離島・過疎地なども居住場所ほぼすべての世帯へ配備されており、日常生活と切り離すことは難しい。孫氏は、光の道(光ファイバー)をこの1つに加えるべきだと訴える。

 光ファイバーの全世帯導入によるメリットとして挙げたのは、都市と地方部で別れて暮らす家族の交流や、教育分野への応用など。「都心に住む人だけが光ファイバーを使えるのでは意味がない。教育の機会均等のためにも、基本的人権の1つに情報アクセス権を加えるべきだ」とも語った。子育て支援、在宅勤務、遠隔診療への活用も視野に入れる。

 孫氏は「ソフトバンクの社長として、サービスの売り込みをするといった小さな話ではない。日本の成長には絶対光ファイバーが必要であることを説明したい」と発言。営利企業の社長としての立場を越え、光ファイバーの整備は社会的必要事業であるとも断言した。

 シンポジウムには現役国会議員らが来賓として列席していた。孫氏は「(理想ばかりを並べたが)法律によるしがらみなどはもちろんある。だが既成のルールに縛られる必要があるのか。国民のためにも政治家の先生方には腹をくくってもらいたい」と、構想への協力を促した。


電力網と同様に、光ファイバーも全世帯へ配備すべきだと説明 光ファイバーとクラウドの活用で、生活スタイルが変化する可能性もある

税金ゼロ、月額1400円で光ファイバー。その論拠とは

 講演の後半では、光ファイバー全世帯敷設の方法論を、具体的な予算規模なども提示しながら解説した。孫氏は「税金ゼロで全世帯への光ファイバー敷設が可能」と言い切る。

全世帯への光ファイバー敷設を税金ゼロで実現できるとまで主張した

 孫氏の主張する方法は、ほぼすべての世帯に導入されている固定電話サービスを、光ファイバーによるインターネット接続サービスへ入れ替えるという方法だ。料金についても、電話利用料とほぼ同額の月額1400円とする。アダプターを併用すれば従来の電話としても利用できるため、インターネットを不要とするユーザー(例えば独居老人)らに対しても問題なく交換可能という。

 そして月額1400円という価格の根拠の1つは、回線保守費用の削減だ。「電話用のメタル回線は経年劣化で錆び、重く、電柱への負担も大きい」とし、NTTによる年間保守費用は3900億円に達するという。対して光ファイバーは錆びず、軽い。メタル回線の撤去を進め、光ファイバーを導入すれば、保守費用の削減効果は大きいと解説する。

 孫氏は「メタルの保守費用は10年間で3兆9000億円になる計算。しかし、2兆5000億円あれば光の100%敷設ができる。NTTだって増益になるはずだ」と、その意義を強調する。

 敷設工事についても、世帯別で個別で工事するのではなく、エリアを定めて道路工事的に一斉に行う。現行の工事費は部材込みで8万円だが、効率化により2万6000円まで圧縮できると見込み、営業費も4万円から4000円に削減可能という。孫氏は「仮に2015年までにメタル回線を100%撤廃するなら、定年前のベテラン工事技術者の力を借りられ、経済的にも良い効果をもたらせる」と人材面での不安もないとした。


メタル回線の撤廃で莫大な保守費用を削減。光ファイバーへ置き換えるというのが基本的な考え 計画的な一斉工事で、工事・営業費も圧縮できるという

 さらに孫氏は、NTT東西の光ファイバー部門を事業分離し、公共性の高い民営会社へ移設させることを提唱する。この新設会社は、希望する事業者へ光ファイバー網の貸し出しを行う。複数の事業者が参入すれば、結果的に競争が進んで低価格化も実現可能という。

 孫氏はこのほかにも、光ファイバーの普及が政府予算の削減にもつながると主張。「八ッ場ダムの総建築費用4600億円に対し、電子教科書の導入コストは3600億円(次年度以降400億円)。現在の紙の教科書と比べてもコストパフォーマンスは高い」「共通電子カルテを導入すれば2015年の医療費を約3割圧縮できる」と説明。電力の普及がさまざまな産業を創出したように、光ファイバーもまた1000万人規模の雇用と産業を創出できると訴えた。

 講演のまとめとして、孫氏は「政権交代が起きた今この時代は、明治維新並みのパラダイムシフトを起こせる可能性がある」「誰のためでもなく、自分のため、子や孫のために腹をくくろうではないか」と発言。光ファイバー普及への理解を求めた。


光ファイバーに入れ替えても、これまでの電話は使えるようにする NTTの光ファイバー事業分割も提案した

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(森田 秀一)

2010/4/26 06:00