ニコ動や初音ミクの世界進出の可能性、N次創作のビジネス化は


 情報処理学会創立50周年記念全国大会で10日、講演「CGMの現在と未来:初音ミク、ニコニコ動画、ピアプロの切り拓いた世界」が実施された。ボーカル作成ソフト「初音ミク」や動画コミュニケーションサイト「ニコニコ動画」の開発者ら4名が登壇。それぞれの立場からCGM(Consumer Generated Media)の現状を分析するとともに、その未来像について討論した。

 ここでは、講演者によるパネルディスカッションをレポートする。

ニコニコ動画や初音ミクの世界進出の可能性は

開演直前の会場。イベント告知ソングをユーザーから募るなどの事前告知効果もあってか、、ほぼ満席に近い盛況だった。Twitterのハッシュタグが用意されたほか、当日はニコニコ動画でも生中継された

 講演者による個別のプレゼン終了後は全員が参加しての討論が行われた。まず司会の後藤氏からは、ニコニコ動画や初音ミクの世界進出の可能性について質問が出された。

 ドワンゴの戀塚氏は「ニコニコ動画は漢字文化を前提としている部分が大きく、短期的には難しい。また動画配信インフラも大きな課題」と開発者視点の意見を披露。画面のサイズに対する文字表示量など、十分なチューニングが必要になるという。ただしインターフェイスの翻訳については、それ自体をネタ化し、ユーザーの助力を仰ぐ余地もあるのではないかと補足している。

 濱野氏からは、初音ミクに対する海外の反応を問う質問がなされた。ヤマハの剣持氏は米国の楽器見本市に参加した際の実感として「ギターやドラムを中心にした従来からの楽器文化が根強くあり、ボーカル作成ソフトの存在感はまだまだ薄い。ただ若年層には受け入れられそうな余地もある」とコメント。クリプトンの伊藤氏も「もともと主要な取引相手がプロ演奏家という影響もあるが、プロが要求する絶対的スペックには足りなく、面白さが伝わらないようだ」とし、海外展開には考慮すべき事情が多いことを示唆した。

N次創作はビジネス化できるか

 今回の講演の大きな主題ともなったN次創作が、はたしてビジネス化できるかという討論も行われた。閲覧者が創作者に対し、対価を支払うためのマイクロペイメント、あるいは“投げ銭”的な手法はすでに確立されている。しかしN次創作された作品については、その収益を原著作者、二次創作者らに対し、どう技術的に配分するか検討する必要がある。

 濱野氏は「ニコニ広告などを応用すればいずれは可能だろう」としながらも現時点では難しいと指摘。その他の講演者も、決定的な方向性を見いだせてはいないようだ。北海道に本社があるクリプトンの伊藤氏は「CGMのビジネス化は、首都圏から遠い地方都市にとっては非常に魅力的。映像や音楽のマッシュアップが進むことで、また新たな側面も生まれるのでは」と、道の将来像についての期待感も示している。

 最後に後藤氏は「CGMは、料理やスポーツのようにプロもアマチュアもそれぞれの領分で楽しめるものになっていってほしい。また人間は、子供のころ誰もが歌やお絵かきという創作活動を楽しんでいたのに、いつしかそれをやめてしまっているだけとも言える。より簡単にコンテンツを作成するためのツール作りなど、高い障壁を取り払うべく、さまざまな研究を続けていきたい」とアピールし、討論を締めくくった。


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(森田 秀一)

2010/3/11 12:24