今年は地理空間情報ビジネスもテーマに、IMES送信機を内蔵したLEDランプも


 6月13日(一部コンファレンスは12日)から15日まで千葉・幕張メッセで開催された「Interop Tokyo 2012」。この併催イベントとして今年初めて開催されたのが、地理空間情報を活用したビジネスをテーマとした「Location Business Japan 2012(LBJ)」だ。Interop展示会場の一角ではこのLBJのパビリオンが設置され、位置情報・地理空間ビジネスに携わるさまざまな企業が出展した。

 LBJパビリオンの中でも中心的存在だったのが、屋内測位技術「IMES(Indoor MEssaging System)」の関連ビジネスを紹介する「iMES Showcase」だ。IMESとは、JAXAが民間企業と協力して発案した屋内測位技術。GPS衛星と同じ電波を出す送信機を屋内に設置し、その場所の緯度・経度・高さ(階数)などの位置情報を直接送信することで、スマートフォンなどの受信機を使って位置特定が可能となる。受信機側は既存のGPS受信チップのファームウェア改修で対応可能で、屋内外のシームレス測位を同一のデバイスで実現可能。これまで二子玉川ライズや北海道の網走監獄などで実証実験が行われている。屋内測位方式には、IMESのほかにもWi-Fi測位や可視光通信を利用したものなどいくつかの方式があるが、それらと組み合わせての運用も研究されている。

 今回、LBJパビリオンが設置された幕張メッセのホール7では、場内10カ所にIMES送信機が設置され、この送信機による測位を利用した各社のデモが展示されていた。例えば株式会社インディゴのブースでは、商業施設内でユーザーの場所や時間に連動した情報をスマートフォンなどに配信し、回遊を誘発するソリューション「Map Mashup Manager」の紹介などにおいてIMESを利用していた。

iMES Showcase

インディゴのブース

 IMES Showcaseにおいてもう1つ注目されたのが、株式会社リコーが展示していたIMES送信機内蔵のLEDランプだ。株式会社日立産機システムと共同で小型の組込用IMES送信モジュールの試作機を開発し、リコーの直管形LEDランプ「CLARTE」への内蔵化を実現した。展示されたモジュールを見ると従来の送信機に比べてかなり小型で、LEDランプの中に入れたことで設置の手間も大幅に簡略化されるという。

リコーのIMES送信モジュール

IMES送信機内蔵LEDランプ

 このほか、街歩きや観光、防災などに役立つスマートフォンアプリ、デジタルサイネージと組み合わせたソリューションなどが展示されていたほか、地図上を六角形ポリゴン(ヘックス)に区切って場所を管理する技術「GEOHEX」など、新技術やサービスのプレゼンテーションも行われた。


GEOHEXのプレゼンテーション

場内に設置されたIMES送信機

 LBJ関連の展示でもう1つ見逃せないのが「可視光通信コンソーシアム」のブース。ここではパナソニック株式会社エコソリューションズ社が、照明光を使った屋内測位システムを紹介した。これはLED照明光を使った位置特定技術で、Androidスマートフォンにアタッチメントを付けて実験した様子が動画で紹介された。さらに、カシオ計算機株式会社によるiPhoneアプリ「Picapicamera」のデモを実施。酒瓶の前に光を発する端末を置いてARで「いいね!」マークを付ける「リアルいいね!」のデモが行われた。

パナソニックによる照明光を使った屋内測位システムの紹介

カシオの「リアルいいね!」

基調講演にはグーグルが登場

 Interopの基調講演では、LBJ関連の講演として13日、グーグル株式会社エンタープライズ部門マネージングディレクターの阿部伸一氏が登場。「Discover データ活用が導くあらたな世界へ」と題して、Google マップやGoogle Earthなどの企業向け地図サービスを紹介した。

グーグル株式会社エンタープライズ部門マネージングディレクターの阿部伸一氏

 阿部氏はGoogle マップのビジネスへの活用方法として、アセットトラッキングをクラウド上に集中させた例を出し、情報を地図上で社内の多くの人が簡単に確認できるようにしたことで、顧客に“Discover(気付き)”が生まれたことを紹介。好景気の発展途上国に重機を輸出し、その状況を地図に反映したところ、次第に製品が納入されたまま稼働しないケースが増えていき、輸入は落ちていないものの工事の件数が減っていることがわかったという。データを表計算ソフトで見るのではなく、地図を使って時系列で多くの人が共有することで、景気の変動という“気付き”が生まれたと語った。

 さらに、ストリートビューの拡充やインドアマップにより、地図が見るだけではなく疑似体験ができるコンテンツになってきたと指摘。ユーザーが地図に情報を加えていく「Googleマップメーカー」により、ユーザーが投稿した情報やアイデアが新たなイノベーションを生み出す、そのようなプラットフォームになりつつあると語った。また、ストリートビューは今後、船の上や山道、雪原など車が行けないような場所などにも撮影範囲を広げるとした。

 このほか、携帯電話の基地局の稼働状況や、宅配会社の配送状況、ホテルの予約サービスなどでGoogleの地図サービスが活用されていることを例に出し、Googleの地図サービスのメリットを解説。さらに、大災害が起きた時の「クライシスレスポンス」というプロジェクトでも、多くの人でデータを共有し、それをリアルタイムに双方向でアクセスできるようにすることの力が発揮されたと語った。また、カーナビのプローブデータを使って通行実績マップが作られたことなどを例に出し、Googleのプラットフォームと顧客が持つオリジナルデータを組み合わせることで新たなアクションが生まれ、ビジネスや人々の生活も大きく変わっていくと語った。

 その上で、「Google Maps API for Business」「Google Earth Pro」「Google Earth Enterprise」などのサービスに加えて、クラウドを利用して顧客が独自のデータや地図を保存・共有できる「Google Maps Engine(旧Google Earth Builder)」のデモを行った。


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(片岡 義明)

2012/6/18 15:01