FacebookやGREE、クックパッドなど国内外の事業者が今後を議論
IVS 2009 fall最後の公演は、国内外の事業者が語るパネルディスカッション。Facebookの国際マネージャーを担当するJavier Olivan氏のプレゼンテーションに加え、RockYou! のJia Shen CTO、PlayfishのAre Mack Growen VP and GM China、Five MinutesのSeason Xu 共同設立者兼COO、PlurkのAlvin Woon 共同設立者、クックパッドの佐野陽光代表執行役、グリーの田中良和代表取締役社長による議論が行われた。
●Facebookはリアルが特徴。日本展開は開発者採用も視野に
FacebookのJavier Olivan国際マネージャー |
ディスカッションの冒頭は、Olivan氏によるFacebookの紹介から開始。現在3億のユーザーが1カ月以内に、150億のユーザーが毎日ログインしており、世界中で1日に80億分もの時間がFacebookに費やされているという。
Facebookの特徴としてはユーザーがリアルなIDを利用している点を挙げ、「写真や実名を使うFacebbokはリアルなIDで、実際の友達と共有している」と説明。プライバシー機能の充実も紹介し、「私の携帯電話番号はFacebookに登録しているが、アクセスできる人は限定している。番号を3億人に知られたくはないが、友達になら公開できる」とした。
Facebookは写真や動画、イベント、チャット機能などさまざまな要素を持っており、「つながっている人の中で何が起きているかを視覚化できる」とコメント。また、PCや携帯電話だけでなく最近ではニンテンドーDSやXbox 360にもFacebook対応機能の搭載を始めており、さまざまな環境からアクセスできるメリットを強調した。
開発者との関係も重視し、開発者の数は個人から大企業も含めて100万以上存在。国際化も進めており、「2年前は英語のみだったが、コミュニティに翻訳してもらい、一番いい翻訳を投票するという方法で、短期間で70カ国に対応できた」とし、「こうしたツールを開発者にオープンにし、コミュニティに権利を委譲して多言語化したことで、Facebookを世界中で共有できるようになった」と語った。
日本展開の概要も説明。現在日本におけるユーザー数は100万人、モバイルでのユーザー数が20万人規模だという。日本語に対応したのは2008年5月だが、そこから急激にアクセスが伸びており、2010年には東京オフィスを開設する予定。日本人開発者も採用し、「日本の携帯電話に対応したFacebookを作る」との意志を示した。
Facebookの現状データ | ニンテンドーDSやXbox 360にもFacebook対応機能が搭載 |
ゲーム分野は成長著しいジャンル | Facebookの日本における現状 |
●日本展開や海外進出について各事業者が自論を展開
左からグリーの田中良和代表取締役社長、クックパッドの佐野陽光代表執行役、FacebookのJavier Olivan国際マネージャー |
左からPlurkのAlvin Woon 共同設立者、Five MinutesのSeason Xu 共同設立者兼COO、RockYou! のJia Shen CTO、PlayfishのAre Mack Growen VP and GM China |
日本のSNSで勢いを見せるグリーの田中氏は、Facebookの日本展開について質問されると、「最近は過去の成功体験を捨てることを大事にしており、それはこういったFacebookの参戦など海外参入も含めて」とコメント。
「1~2年前に成功していたが今は駄目になったサービスも多い」と振り返った上で、「我々は内製でゲームを開発しており、アプリケーションプロバイダーとしても強い。Facebookが来たから終わりではなく、つながっていく可能性もあるのでは」との考えを示した。
日本でFacebookが展開するためのアドバイスは、という質問には「これまでもCyworldやMySpaceなどが日本展開してきたが、それほど使われた印象はない。しかしTwitterやFacebookは日本にオフィスもないのに使われているというのは大きな違い」とし、「まだ使っているのは特殊な層だろうが、それでも使われないサービスは今までにいくらでもあった」と見解を述べた。
FacebookのOlivan氏は日本展開について「文化の違いも、日本に独自の携帯電話があることも理解している」とした上で、「開発環境も含めてオフィスを開設するのは日本が初」とコメント。「ユーザーにとって最適なプロジェクトを届けるにはオフィスが重要」とし、「他のアジアは伸びているのに、なぜ人口が減少している日本に来たのか」という問いには「日本は世界第2位の経済大国で、技術的にも最先端。まだゲームオーバーとは思っていない」とした。
RockYou! のShen氏は、「Facebookは中国で使うことができないなど苦労しているが、日本の展開は楽しみにしている」とし、「世界のソーシャルプラットフォームの可能性を探るのは良いこと」とコメント。「自分たちがトップの時はなかなか他のことを考えてくれない。MySpaceは僕たちのアプリを載せてくれず、コピーして真似をした」と発言した上で、「Facebookは我々にも優しく、競合にも良い姿勢。一緒に働くのが楽しい」と語った
中国でソーシャルゲームを展開するFive MinutesのXu氏は、「中国は最大のネット大国だが、その経済システムは独占状態にあり、エコシステムはあまりうまくいっていない」と説明。「Facebookはグローバルな市場を持っており、一部の市場占有を恐れる必要はない」とした上で「中国の企業はSNSコミュニティを拡大できず、Facebookの事例を参考にできないことが残念」との考えを示した。
●ソーシャルゲームはまだ普及段階。今後に大きな可能性が
クックパッドの佐野氏は「インターネットの普及はまだこれからで、エンタメやゲームなど試行錯誤があるのだろう」とした上で、「本当の流れはインターネットが僕らの生活の中にあること。そういう点でFacebookもPlayFishもリアルの生活を志向しているのは面白い」と指摘、「まだインターネットは始まったばかりで、この先には実際の世界があるのだろう」と語った。
PlayFishのGrowen氏も、この指摘に「非常に同感で、ここ数年インターネットは可能性を少し見たが、今後もまだまだ拡大の可能性はあり、ソーシャルグラフはこのまま存在し続けるだろう」との考えを示した。
Facebookが日本のトップになり、クックパッドを真似たサービスが登場したらどうするか、という質問が佐野氏に寄せられると、佐野氏は「それは僕たちが価値を提供できていないだけ」と即答。「競争は起きるべきで、その中でベストな価値を出せているならそれは素晴らしいことだ」とした。
牧場ゲーム「Happy Farm」を運営する中国5 MinutesのXu氏は、「我々の開発した牧場ゲームがいくつもコピーされていて、正直最初は我々のインテリジェンスが盗まれていると感じていた」と振り返り、「Facebookには、コピーに対する監査役の立場もお願いしたい」と語った。
司会からは「Happy Harmも元々はHarvest Moon(牧場物語)のコピーではないのか」という問いかけがあったが、それについては、「確かにインスピレーションも得たが、実際にはかなり違いがある。我々は友達と楽しむためのものであって、コピーとは言えないと思う」と見解を述べた。
Facebookを含め、ソーシャルの世界が今後どうなるか、という質問には、「モバイルが鍵」(PlurkのWoon氏)、「Facebookがインフラになる」(Five minutesのXu氏)、「家族や友達に対して接し方が変わるように、複数の存在に対応するようになって欲しい」(RockYou! のShen氏)といった意見が寄せられた。
一方、クックパッドの佐野氏は自身が大学時代に研究していたカーナビ技術に触れ、「一番面白かったのは、ワイパーと緯度・経度を組み合わせることで局所的な雨を調べられるという技術だった」と説明。「今のソーシャルは車だからカーナビを載せよう、という段階。先に述べたワイパーを使った技術のようなパラダイムシフトが今後起きるのだろう」との予測を示した。
関連情報
(甲斐 祐樹)
2009/11/16 11:58
-ページの先頭へ-