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名刺管理を働き方改革への入り口・きっかけに、紙ベースの業務はITで生産性向上

 Sansan株式会社は、全国のオフィスワーカー1035人を対象として1月16日・17日にオンラインアンケートで実施した「働き方改革に関する意識・実態調査」の結果を発表した。

 政府が2016年に実施した「働き方改革実現会議」で表明された9項目のうち「労働生産性の向上」に当てはまる取り組みは「名刺管理サービスを導入した企業の大半が目的に入れている」とのこと。Sansanの提供する企業向け名刺管理サービスのシェアは8割で、同社取締役Sansan事業部長の富岡圭氏によれば、「最近は働き方改革の手段としての導入が目立つ」という。

 残業時間規制などによる長時間労働の是正も注目を集めているが、富岡氏は「日本のビジネスパーソンの現状を考えると業務は多岐に及び、労働時間は労働生産性向上に密接に関係している」と指摘。「一般企業が生産性を向上させて働き方改革を実現していくには、オフィスワーカーの実態を明らかにする必要がある」と調査を実施した目的を説明した。

 調査によると、83.3%が「働き方改革」の必要性を認識しているが、65.5%が取り組みに着手できていない状況だ。その理由として、「経営者が取り組む必要性を感じていない」が45.3%で最多となった。同社Sansan事業部マーケティング部ワークスタイルエバンジェリストの志賀由美子氏によれば、「生産性の低下や競争力の減少、顧客満足度の低下など、ビジネス上の影響を懸念している経営層が多い」という。「何に取り組んで良いか分からない」との回答も21.8%に上り、「全体としてどんな取り組みが可能で、何から始めればいいのか暗中模索の状況」(志賀氏)となっている。

 一方で、すでに取り組みを始めている企業で最も多く実施されているのは「残業時間の引き下げ」で67.7%。調査でも、長時間労働が課題と感じている声は61.3%と多く、その中で、「残業時間の引き下げ」への期待は高い。しかし、業務に支障が出ているとの回答も多かった。例えば19時退社で消灯しても業務量は変わらず、持ち帰って帰宅後にサービス残業をしているという回答も45.8%に上っている。志賀氏は「日本のオフィスワーカーの抱える多大なタスクをいかに減らし、フォーカスするものと捨てるものをどう切り分けるかが必要」とした。

 働き方改革実現の目的でITソフトウェアを導入した企業はまだ多くないが、実際に導入した企業では、88.3%が効果があったとしている。また、ITにより生産性を向上できる業務については、資料作成(25.6%)、ハンコ文化(24.6%)、経費精算(21.0%)、など、紙にまつわる業務が多いことが特徴的だ。紙ベースの業務が生産性を阻害している(61.6%)、ペーパーレスで業務時間を短縮できる(58.8%)との声も多い。

 志賀氏は「この領域をITで解決すれば生産性が上がるが、名刺も紙が介在している」とし、名刺管理についての調査では、9割が紙のままで保管し、うち45.8%が100枚以上の名刺を保有しており、名刺があっても整理していない人も47.7%に上る。この調査結果について、「名刺情報が使えないような状態で、この糸口としてITを活用すれば、例えば43年勤務した場合での生産性は103.9日、人件費は297万円削減できる」とした。この算出については、「名刺を管理している」と回答した37.1%の人に対して、クラウド名刺管理サービスの利用前後で短縮された時間をもとにしているとのことだ。

 そして、「名刺管理はこれまで細々と発生する小さな業務の1つだが、それでもこれだけの効果が見込める。ほかの紙ベースの業務では、さらなる生産性向上が見込める」とした。

 経済産業省経済産業政策局産業人材政策室室長補佐の藤岡雅美氏は、「働き方改革実現会議では、同一労働同一賃金、長時間労働などについて、さまざまな検討を重ねている。最終的に改革を完遂し、日本の競争力強化につなげたい」とし、改革を取り巻く状況については、「少子高齢化で生産年齢(の人口比)が下がってくる。勝者総取りの産業構造の中で、どこに資源を集中投下して日本として勝ち残るかを考える必要がある」とした。

 働き方改革については、「センターピンは長時間労働是正。その背後には、日本型雇用システムをどう改善して生産性を高めるかがある」とし、「制度設計についての議論は全体に進んでいるが、これをどう現場で実践するか、改革をどう現場に落とし込むかが重要。テレワークや人事マネジメント、ツールを浸透させながら、生産性の高い企業活動を後押ししていきたい」と述べた。

 富岡氏は「現在は対処療法的施策も多いが、企業と働く人双方ににメリットがないといけない」とし、その一方で、「業務そのものを減らさないと、サービス残業の増加をはじめ、逆に負担がかかる。特に間接業務をいかに省くかが重要」との見方を示した。そして「双方にメリットあるモデルケースをいかに作るのか。その1つがITソフトウェアの導入」とした。

 調査では、ITソフトウェア導入に高い効果があるとの評価が高かった。「その意味では、まだまだ働き方改革の余地がある」とし、「利益を生まない間接業務をITで圧縮すれば、さらに重要な業務に集中できる」と述べ、「名刺共有はシンプルな取り組みで、課題を解決する手段の1つに過ぎないが、企業が働き方を変え、業務効率化する入り口、きっかけになる」との見方を示した。そして「業務を分析して仕組み化し、これをIT化によって効率化することが重要。結果として経営者にも働き手にもメリットがあり、労働生産性の向上と、間接業務に費やす時間を削減できる」とした。

 Sansanで提供するソリューションは、これまではユーザー単位での課金だったが、「働き方改革につなげるため」(富岡氏)、全社・全拠点で使える新しいコーポレートライセンス体系の導入を行うとのことだ。

 なお、同社では「働き方進化論」をテーマに、さまざまな企業における「働き方改革」の事例を紹介する「Sansan Innovation Project 2017」を2月2日にヒルトン東京お台場(東京都港区)で、2月9日にヒルトン大阪(大阪府北区)で開催する。

 東京では、スタンフォード大学講師でベストセラー作家のケリー・マクゴニガル氏によるゲスト基調講演「働き方を変える最強のマインドセット~ストレスを仕事に活かす方法」や、日本マイクロソフト株式会社代表取締役社長の平野拓也氏、株式会社コンカー代表取締役社長の三村真宗氏、経済産業省経済産業政策局産業人材政策室参事官の伊藤禎則氏、Sansan代表取締役社長の寺田親弘氏も参加する基調講演「働き方進化論」が行われる。