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「生徒1人1台iPad」の授業には、「学校用」の無線LANが最適? バッファローの「学校向け機能」を確認してきた
埼玉・聖望学園のWi-Fiトラブルを解消した「AirStation Pro WAPM-2133TR」
2017年5月16日 06:00
聖望学園中学校高等学校(埼玉県飯能市)において4月20日、ICTモデル授業がメディア向けに公開された。同校は、生徒1人1台の教育用コンピューター環境を実現するなど、教育ICT化に関して先進的な取り組みをしている。今回のモデル授業は、株式会社バッファローの法人向け無線LANアクセスポイント「AirStation Pro WAPM-2133TR」の特徴である「DFS障害回避機能」と「トライバンド対応」の効果をアピールするために実施されたものであり、今後加速するであろう学校の普通教室の無線LAN環境整備に有用な知見を与えるものであった。
5GHz帯における気象・航空レーダーの干渉を「DFS障害回避機能」で防ぐ
バッファローの柴田成儀氏(ネットワーク事業部製品企画担当)によると、同社では、営業・企画・開発が三位一体となって、ICT教育に向けた製品開発を行っているという。
最近は生徒1人1人にタブレットを持たせて授業を行うことが増えているが、そうした環境のために搭載した機能が「公平通信制御」や「トライバンド対応」「DFS障害回避機能」である。また、学校の体育館などは、災害時に一時避難場所として使われることも多いが、そのための機能が「緊急時モード」である。
これらの文教向け機能をすべて搭載した法人向け無線LANアクセスポイントの新製品が「AirStation Pro WAPM-2133TR」であり、同製品を導入することで、DFS障害によって授業が止まることを防げるとした。
WAPM-2133TRの最大の特徴である「DFS障害回避機能」については、バッファローの平井敏幸氏(文教担当フィールドエンジニア)が詳しく解説を行った。
DFSとは、「Dynamic Frequency Selection(動的周波数選択)」の略。5GHz帯(W53/W56)使用時に気象・航空レーダーなどの干渉があった場合、干渉のないチャンネルに退避する仕組みのことで、法律で搭載することが決められている。チャンネルを退避する際に移動予定のチャンネルに干渉がないかを無線を止めて60秒間監視する必要があり、これが通信中断の原因となる。
DFS障害回避機能を搭載したWAPM-2133TRでは、レーダー波を監視するための専用アンテナを搭載しているため、無線を止めずにチャンネルを切り換えることが可能だ。DFS障害回避機能の効果を40台のタブレットを使って検証したところ、レーダー波検知時に相当するコマンドを実行すると、DFS障害回避機能をオフにした状態では動画が途切れてしまうことがあったが、DFS障害回避機能をオンにすると動画が途切れずに再生できた。
バッファローが聖望学園でDFS障害の検出を行ったところ、1週間で16回のDFS障害を検知したという。これは、聖望学園の立地と関係がある。聖望学園の周辺には、入間基地や朝霞駐屯地など、航空レーダーを備えた施設が多いため、DFS障害が起きやすいのだ。聖望学園では、バッファロー製の無線LANアクセスポイントを10台ほど導入していたが、ときどきDFS障害が原因と思われる無線トラブルが生じていたそうだ。今回、WAPM-2133TRを2台新たに導入したところ、WAPM-2133TRを設置した教室では、そうしたトラブルは起きなくなったそうだ。
なお、バッファローの各事業所でも、DFS障害の調査を行ったところ、札幌や東京、名古屋でDFS障害が発生していたことが分かったとのことだ。
5GHz帯の19チャンネルすべてを有効活用、バンドステアリングで40人クラスでも安定した通信
DFS障害回避機能を搭載し、トライバンドに対応したWAPM-2133TRの教育現場におけるメリットについては、柴田氏が説明を行った。
2.4GHz帯は、無線LAN以外での利用も多く、学校の教室で利用するには5GHz帯が基本となる。しかし、5GHz帯の19のチャンネルのうち、W53/W56の15チャンネルはDFSの影響があるため、これまでの機器では安定して使えるチャンネルはW52の4チャンネルのみであった。これに対して、DFS障害回避機能を備えたWAPM-2133TRなら、5GHz帯の19チャンネルすべてを有効に活用できる。
さらに、WAPM-2133TRは2.4GHz帯1系統と5GHz帯2系統の同時通信が可能なトライバンド対応であるため、接続する端末数が同じなら、1台あたりの通信速度は2倍となる。また、接続される端末を各バンドに均等に振り分けることができるバンドステアリング機能も備えているため、40人程度の大人数クラスでも安定した通信が可能になる。各教室で同時に無線LANを使っても、チャンネル重複を回避できるため、授業が中断されてしまうこともない。
聖望学園は、APM-2133TRのDFS障害回避機能を高く評価しており、今後は高等学校の教室においても、WAPM-2133TRのようなDFS障害回避機能を備えた無線LANアクセスポイントを順次導入していく計画があるとのことだ。
「IP55対応」の屋外用無線LANアクセスポイント「AirStation Pro WAPM-1266WDPR」も発売
説明が行われた教室の前方の壁には、WAPM-2133TRが設置されていたほか、バッファローの文教向け無線LANソリューションの展示やDFS障害検知デモのスペースも用意されていた。
DSF障害回避機能を備えたWAPM-2133TRには、気象・航空レーダーを常に監視するための専用アンテナが搭載されている。このアンテナは、小さい基板状であり、本体のLED部の横に内蔵されている。
さらに、5GHz帯の全チャンネルを監視し、DFS障害の発生を検知するデモも行われ、取材当日にもDFS障害が起きたことを示していたほか、W56帯の電波状況をリアルタイムに表示するデモも行われた。
WAPM-2133TRの売りが「DFS障害回避機能」「トライバンド対応」「公平通信制御機能」であるが、新たに発売した防塵・防水対応の無線LANアクセスポイント「AirStation Pro WAPM-1266WDPR」も展示されていた。こちらは屋外設置用であり、「IP55対応」「動作保証温度-25~+55℃」「DFS障害回避機能」という特徴を備えている。なお、こちらはデュアルバンド対応となる。
聖望学園では、中学生全員にiPadを貸与
モデル授業ではまず、聖望学園中学校高等学校学校長の関純彦氏、ICT担当教諭の永澤勇気氏による、同校の教育ICT化に関する説明が行われた。
聖望学園では、中学生全員にiPadを1人1台ずつ貸与しており、自宅へ持ち帰ることもできるようになっている。また、中学校の全教室で無線LAN環境が整備されており、プロジェクターも常設されているほか、Apple TVも導入されている。授業では主にMetaMojiのリアルタイム授業支援アプリ「MetaMoji ClassRoom」を利用している。永澤氏は、教育のICT化で重視していることは、インタラクティブとリアルタイムの2点であると述べ、MetaMoji ClassRoomにより、そうした環境を実現しているとのことだ。しかし、通信が切れたり、充電を忘れたりといった、いつもちょっとしたトラブルが起きがちとも指摘していた。
1人1台のiPadを利用して数学の授業
今回見学したのは、中学2年の数学の授業で、テーマは1次関数。教室の前方には、短焦点プロジェクターと電子黒板システム、WAPM-1266WDPRが設置されており、生徒は全員学校から貸与されているiPadを持参していた。生徒数は20人程度で、いくつかのグループに分かれて授業を受けていた。
まず、担当教師がプロジェクターで投影されている問題の上に、電子黒板システム用のペンを使って手で書き込みながら問題のポイントを解説する。同じ画面が生徒1人1人のiPadにも共有されており、生徒はノートやテキストは使わず、指でiPadに書き込んでいた。ピンチイン/アウトでの拡大・縮小操作なども手慣れたもので、解答を次々と書き込んでいた。各生徒の画面は、プロジェクター画面でもサムネイルとして確認できるようになっており、生徒は自己申告で正解や不正解を選び、正解なら青色、不正解なら赤色の背景が画面の周りに表示される仕組みだ。
ほとんどすべての生徒が問題に正解しており、1人1台タブレットを使った授業は、生徒にも理解しやすいようだ。授業終了後、生徒にタブレット授業の感想を聞いたところ、「紙のテキストとノート、鉛筆を使う授業よりも分かりやすい」とのことであった。また、最初はタブレットの操作に戸惑うこともあったが、1カ月程度で慣れたとのことだ。もちろん、すべての授業でタブレットを使っているわけではなく、数学と理科での利用が多いとのことだ。