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名刺管理アプリのSansan、「2年後に国内外1万社への導入を目指す」、新ロゴと社名変更を発表

 Sansan株式会社は、8月8日より社名を「sansan株式会社」へと変更し、コーポレートロゴと法人向け名刺管理サービス「Sansan」のプロダクトロゴを変更することを発表した。また、名刺管理アプリ「Eight」に対し、未来創生ファンド、DCM Vetures、Salesforce Veturesの3組織から、総額42億円の資金調達を行ったことを発表した。

 Sansan株式会社取締役でSansan事業部長の富岡圭氏は、Sansanについて「名刺を企業の資産に変えるというコンセプトで、企業で一括管理する法人向けサービス」と位置付けた一方、Eightについては「交換した名刺を起点としたビジネスSNS」とした。

Sansan株式会社取締役でSansan事業部長の富岡圭氏
「sansan」の新ロゴ

 Sansanは2007年から提供を開始しているが、2015年ごろからは大手企業での全社導入が増加し、現在では、中小から大企業など、業種を問わず6000以上の企業で利用されているという。「2007年は、iPhoneの発売やAndroidの発表など、新しい当たり前の芽が生まれた年」とし、Sansanについても「新しい働き方を創造するために生まれた」とした。

法人向け名刺管理サービス「Sansa」とビジネスSNS「Eight」
多くの大手企業で全社導入が増加

 Sansanでは、名刺をスキャンしたデータをAIで会社名や個人名、住所といったデータに分割し、オペレーターによる手入力で情報の正確性を担保している。こうした情報を社内で一括管理・共有することで、誰と誰が会ったかのつながりを可視化するものとなる。

Sansanは、iPhone発売とAndroid発表と同じ、2007年に提供を開始
スキャンした名刺を正確にデータ化し、全社で情報共有できる

 Sansan株式会社デジタルトランスフォーメーション室室長の芳賀諭史氏は、名刺について「顧客情報にとどまらず、その人の持つ強みや人脈の塊。すべてを集計して分類すれば、得意な領域が導き出される」と述べ、法人向けの名刺管理サービスである「Sansan」によって「紙の名刺が意味あるものに変わる」とした。

名刺情報は単なる顧客情報だけでなく、その人の人脈や強みを示すもの
Sansan株式会社デジタルトランスフォーメーション室室長の芳賀諭史氏

 そして、Sansanが提供する3つの価値を紹介。「組織で一括管理することで、誰と誰が知り合いで、出会ったことがあるという情報を全社で共有して活用できる」とし、まず営業機会の拡大を挙げた。「Sansanで検索をすれば、会いたい人のつながりが分かる。日経の情報とも連携して、会社の組織ツリーを自動生成する機能もあるので、人のつながりを可視化できる」とした。

 また、顧客の名刺情報に基づいたメールの一括配信など、メールマーケティングも行えるという。例えば、株式会社クレディセゾンでは、個人任せの名刺を組織で共有することで、新規契約が約30%増加したという。

名刺情報を全社で共有し、営業のチャンスを拡大
名刺情報に基づいた組織ツリーの表示も可能

 芳賀氏が次に挙げたのが、社員の生産性向上だ。名刺情報の入力を不要にしただけでなく、タググルーピングやCSVエクスポートといった機能で管理のわずらわしさから開放。さらに顧客管理システムをはじめとした、ほかのシステムと連携により、活用の幅を広げるという。

 ドイツの化学・医薬品メーカーであるMerckでは、グローバルで導入しているSalesforceとの連携により、名刺情報をダイレクトにデータベースへ登録できることで、社員の手間を大幅に削減。「本来向かうべき顧客との対話などに時間を使えるようになり、生産性が上がった」という。

自動入力した名刺情報はタグ付けやCSVエクスポートが可能
さまざまな外部システムとの連携も行える

 最後に挙げたのが、組織のコミュケーション進化。Sansanのメッセージ機能により、伝えたいことと、伝えるべき手段を提供していることに加え、「名刺の保有者のプロファイリング情報にもなるため、その業界の専門家が誰なのかと行った情報をキャッチでき、組織のコミュニケーションがより円滑に進化していく」とした。

 講談社では、複数部門にまたがる事業での部門間連携が「予想外に活発化された」という。1つの事業に組織力を生かして取り組む際に、部署を超えたコミュニケーションが活発になり、部署間でのコラボレーションが生まれやすくなったという。

プロフィールでは、その人の名刺情報を可視化して得意分野などを把握可能
業務に必要な人脈を持つ同僚へのメッセージ機能も備える

 このように、組織の情報共有基盤としてSansanを活用することで、生産性が向上できるとし、株式会社KADOKAWAでは2000人、株式会社三井住友銀行では3万3000人の全社員を対象にした導入が決定。また、株式会社電通でも、「働き方改革の文脈で全社員への導入が決定した」という。

 富岡氏は「ユーザー単位のライセンスでは、営業など特定部門の情報しか分からない」とし、全社員が全拠点で利用できる“コーポレートライセンス”により、「全社利用で、企業内で(名刺情報を)一括管理・共有することで、本来のさまざまな価値を提供できる」とした。

 富岡氏は「ここ数年、全社導入が増えている大手への注力とともに、今後、中小企業向けの提供では地方へもすそ野を広げ、海外、地方での人員も強化して導入を拡大。2年後には1万社への導入を目指す」とした。第5弾となるテレビCMなど、積極的な露出も行っていくという。

2年後には国内・海外合わせて1万社への導入を目指す
4月開催時に4200人が参加したイベント「Sansan Innovation Project」を2018年3月にも開催

 また、海外向けの事業展開としては、2015年12月にシンガポールで現地法人を設立。2016年より本格活動を開始しており、すでに100社へ導入を行っている。今後2年間で「これを500社に拡大する」との見通しを示した。なお、3組織から、総額42億円の資金調達を行った「Eight」については9月に海外版をリリースし、「Sansanとは別に、アジア圏への進出を図っていく」とした。

 さらに、現在十数名のデータサイエンティストが所属する戦略部門「Data Strategy & Operation Center」では、これまでSansanにより取りこまれた数億枚の名刺データに基づいて、「人脈データベース解析で、誰と誰が出合い、どんな投資が行われたのかを分析し、ここから将来の事業や投資の予測を行い、次に会うべきなのは誰かを提案する」AIの研究開発を進めているという。

シンガポールの拠点を中心にして、今後2年間で導入企業を500社に拡大する
「Data Strategy & Operation Center」ではAIを活用した新機能を開発中だ