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佐野元春のライブをTwitter中継、iPhoneとYouTubeで動画配信も


佐野元春氏(7月26日に「ZEPP TOKYO」で行われた「佐野元春 & THE COYOTE BAND ライブハウスツアー 2009」公演より)

 7月26日20時すぎ、インディペンデントレーベル「DaisyMusic」のYouTube公式チャンネルに、1分半ほどの短い動画がアップされた。タイトルは「佐野元春 コヨーテツアー アンジェリーナ」。説明文には「アンコールパート2これが今夜のラスト!」と書いてある。同日夜、東京・お台場の「ZEPP TOKYO」で行われた「佐野元春 & THE COYOTE BAND ライブハウスツアー 2009」の公演を撮影したものだ。

 注目されるのは、この動画の公開された時刻が、ライブで実際に「アンジェリーナ」が演奏されてから10分ほどしかたっていないという点。動画の詳細を見ると「Uploaded Using iPhone」のロゴが表示されることもからわかるように、じつはこの動画、iPhoneで撮影して即YouTubeにアップロードしたものなのだ。

 従来、インターネットでライブ映像の配信をするとなると、大がかりな撮影機材や配信用のPC、高速インターネット回線などを会場に用意し、あらかじめ配信サイトのURLを広く告知するなど、準備段階から大きなコストがかかったという。一方、今回の動画配信で使った機材は、iPhone 3GSのみ。それをYouTubeと組み合わせることで“最も小規模なインターネット動画中継”を実現した。YouTubeにアップした動画を告知したり、ライブ会場の様子を伝えるのに、Twitterを活用したことも特徴だ。


YouTubeの「DaisyMusic」公式チャンネル ライブ中継を行った「MWS(MotoWebServer)on Twitter」

多くのファンとリアルタイムにライブを共有したいとの思い

機材はiPhone 3GSのみの、まさに“最も小規模なインターネット動画中継”
YouTubeへのアップロードもTwitterへのつぶやきもすべてiPhoneで行う

 動画中継は、佐野元春のオフィシャルファンクラブサイトである「Moto's Web Server(MWS)」と、佐野元春が主催するインディペンデントレーベル「DaisyMusic」の連携で実施した。

 MWSはファンによるボランティアメンバーでスタートしたサイトだが、現在では、DaisyMusicや佐野本人とも密接にミーティングを行い、インターネットを活用したファンとの交流を図る活動を展開している。1年ほど前には、ライブ会場を訪れたファンが携帯電話で写真を撮影し、コメントとともにMWSのサイトに投稿。それらをリアルタイムに公開していくイベントを実施したこともある。

 今回の動画中継には、「ライブアクトをより多くのファンと共有できる、リアルタイム性のある活動をできないか」という佐野本人の要望があったという。ミーティングの中でMWS側から、iPhoneとYouTube、Twitterを活用する方法を提案し、これを実施することとなった。

 この“最も小規模なインターネット動画中継”は、すでに7月4日、ライブツアーの初日となった東京・赤坂Blitz、翌5日の横浜Blitzの公演で試みられているが、実施を決定したのは、なんとその1週間ほど前だったという。大がかりな準備を必要としないというフットワークの軽さがうかがえるだろう。

 これら2日間の公演では計13本の動画をアップ。ライブ中の映像だけでなく、ライブ会場周辺の風景や開演前のステージの様子、楽屋裏の様子などもアップされている。Twitterは数十人がフォローした。その後MWSでは、まだTwitterをよく知らないファンのために「Twitterの使い方マニュアル」ページも作成・公開し、メールマガジンなどで告知したことで、現在までにフォロワーは300人近くに増えている。

動画撮影、アップロード、TwitterをすべてiPhoneで

 今回、動画中継を担当したのは、MWSのWebマスターである宮田正秀さん、同スタッフの今井健史さんら3名。手にしている機材は前述のようにiPhone 3GSのみで、動画撮影とYouTubeへのアップロードはiPhone 3GS標準搭載の機能を使っている。YouTube動画の公開URLをメールで取得した後、やはりiPhoneにインストールしてある「Tweetie」アプリを使って、TwitterのMWSアカウントで告知していく流れだ。一部の動画はMacのiMovieで編集したり音声を補正することもあったというが、基本的にはiPhoneで不要部分を削除(トリミング)する程度で、撮影した現場でそのままアップロードする。

 26日の公演では、18時の開演を前に、まず15時ごろにTwitterで「ZEPP TOKYOなう」とつぶやいて“中継”がスタートした。16時30分過ぎには、開演を控えたバンドメンバーを撮影したインタビュー映像をアップ。その後、会場前に並び始めた来場者の列などの風景を撮影した後、17時15分の開演とともに続々と入場するファンを撮影してこれをアップ。さらに「会場は満員。元春レイディオショーが流れてます。」といった具合で、会場内の様子を静止画とともにTwitterで報告し、フォロワーのファンの気分も盛り上げていく。


動画中継を担当した、MWSのWebマスターである宮田正秀さん(左)、同スタッフの今井健史さん(右) 続々と入場するファンを撮影する宮田さん

 そして18時の開演とともに、客席後方にあるPAブース内でスタンバイしていた宮田さんが動画撮影を開始。特に三脚などを使うわけではなく、iPhoneを両手で持ち、それを頭よりもやや上の位置で構えるスタイルは、ごく一般の人が携帯で撮影しているかのようだ。マイクは付属のイヤホンに付いているものを利用しているが、これは前回の赤坂・横浜の時の経験から得たノウハウだという。今回のツアーは会場がライブハウスのため大音量になり、録音の際に音が割れてしまう。イヤホンのマイクを使うことで適度にコンプレッサーがかかるのだそうだ。

 とはいえ、YouTubeで公開されている動画を実際に再生してもらうとわかるが、それでも音割れは気になる。また、権利処理の関係から曲の冒頭1分間程度しか配信されないのも、もの足りないかもしれない。この点については「あくまでもライブの臨場感を共有するためのもの」(今井さん)であり、それをできるだけリアルタイムに可能にするのが、今回の方法だったというわけだ。

 なお、iPhoneを使うメリットとしては、携帯電話の3Gネットワークと無線LANの2通りでインターネット接続できる点も挙げられるという。26日の公演でも、開場後の様子などをロビーから伝える際は3G回線経由で行っていたが、客席内は携帯電話が圏外となるため、無線LANを利用していた。ただし、これもライブハウスの業務用としてもともと設置してあるもので、動画中継のために特別に用意したものではないという。


ライブ中の模様は、客席後方にあるPAブース内で撮影 YouTubeへのアップロード作業などもその場で行った

動画と静止画、つぶやきでライブをリアルタイム中継

 さて、ライブの1曲目「星の下 路の上」の1コーラス目が終了するころには、宮田さんは録画を停止し、その場でトリミング作業。その後、タイトルや説明文などを入力してYouTubeへのアップロード作業にとりかかる。2曲目が終了するころにはすでにYouTubeへのファイル転送状態に入り、YouTube側でのエンコードを経て公開されるのを待って、やはりその場でTwitterに動画のURLを告知する。

 こうして26日のライブでアップされた動画は計11本。楽曲部分の動画は、前述した1曲目の「星の下 路の上」とアンコール曲「アンジェリーナ」のほか、中盤で演奏した「Us」の3曲。Twitterにはこのほかにも曲順を追うかたちで静止画が投稿され、例えば「みんな大丈夫?もう一曲行こう!」など、佐野元春のMCなどもあわせて伝えている。

 無事終了したかに見えた“最も小規模なインターネット動画中継”だが、ハプニング(?)がないわけでもなかった。「アンジェリーナ」は動画の説明文にあるように、ファイル転送時には「これが今夜のラスト!」になるはずだったが、この日はさらに1曲追加。Twitterに「大ラス、アンジェリーナの演奏後、観客に煽られるように星路をもう一度プレイ」と、この日のサプライズをすぐさま投稿した。 「アンジェリーナ」の動画がYouTubeで公開されたことをTwitterで告知したのはその後になったため、Twitterのつぶやきは「コヨーテツアー、アンコール大ラス(のはずだった)アンジェリーナの映像をアップしました」と食い違ってしまったわけだ。こんなハプニングも「やっている我々としては盛り上がる」ということで、逆にリアルタイム性が反映されている点と言えるかもしれない。

 佐野元春は2010年、デビュー30周年を迎える。MWSとDaisyMusicでは、今回実現した“最も小規模なインターネット動画中継”の成果などもふまえながら、来年のさまざまな活動につなげていきたいとしている。


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(永沢 茂)

2009/7/27 14:12

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