欧州デジタル図書館、規模拡大に伴い著作権問題を調整へ


 欧州委員会は、欧州デジタル図書館「Europeana」のサイズを2倍にし、書籍、地図、写真、フィルム、新聞など、現在460万件の所蔵規模を、2010年までに1000万件に拡大する計画を発表した。一方で、デジタル化されたデータの著作権は各国の規定がまちまちであることから、その調整の必要性が浮き彫りになってきた。

 欧州デジタル図書館は、2008年11月に開設。当初は、アクセスの殺到によるトラブルも見られたが、現在では安定的に利用されている。現在でも、EU各国当局からのデジタルデータ提供が継続的になされており、規模の拡大が進んでいる。しかし、現時点で利用可能となっているデジタル書籍は、EU内に存在するデジタル化された書籍の5%にとどまっており、所蔵の過半数は特定の国からのデータ提供にとどまっているという現状も指摘されている。

 また、データ提供の拡大に伴って、著作権の問題が浮上してきた。著作権保護期間が過ぎた古典的書籍については著作権の問題は無いが、まだ保護期間内の書籍については、図書館所蔵目的であってもデジタル化データの作成や所有について制限しているEU加盟国が多い。また、著作者が不明な著作物の扱いも問題となっている。

 著作権者によってデジタル化が許諾されている書籍についても、その許諾内容は部分的なものとなっており、図書館の所蔵として活用できるのかも不明な場合がある。また、著作権自体が各国に分散して譲渡されている事例などもある。実際に、フランスでしか権利を有していなかった著作物について、承諾を得てデジタル化データを所蔵したものの、それ以外の権利が確認できず、消去を迫られた例もあるという。

 そこで、欧州委員会では、著作権問題の公的な諮問機関を開設し、2009年11月15日まで著作権の調整を行うと発表した。今後は、加盟各国におけるデジタル著作権の調整をしていく予定。欧州委員会では、Europeanaに対して2013年までに9億ユーロの支援をする予定であり、その前提の整備として今回の著作権問題の行方が注目される。


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(Gana Hiyoshi)

2009/8/31 11:46