マイクロソフト、電子書籍バリアフリー化に向けWord用アドイン無償公開


 マイクロソフトは4月6日、DAISYコンソーシアムおよび財団法人日本障害者リハビリテーション協会と電子書籍のバリアフリー化への取り組みで協力すると発表。同日、「DAISY(デイジー)」形式の文書をWordで作成できるアドインソフト「DAISY Translator日本語版」の無償提供を開始した。アドインは日本障害者リハビリテーション協会のサイトでダウンロードできる。

左から、財団法人日本障害者リハビリテーション協会 情報センター長 野村美佐子氏、マイクロソフト株式会社最高技術責任者 加治佐俊一氏、DAISYコンソーシアム会長 河村宏氏

DAISYフォーマットとは

 DAISYフォーマットは、スイスに本部を置く国際的な非営利団体「DAISYコンソーシアム」が策定し、無償で提供しているXMLベースの電子書籍フォーマット。DAISYフォーマットと対応の再生プレーヤーを用いることで、視覚障害者や読字障害者でも読書ができるよう、文章を音声で読み上げたり、文章の読まれている部分のハイライト表示などができる。

 DAISYフォーマットは、欧米など世界で障害者向け電子教科書や電子書籍のフォーマットとして採用され、米国の標準規格ANSI/NISO Z39.86-2005として規格が公開されている。PCでは無償公開されている再生ソフトウェアを使って再生できるほか、再生専用機器などでも再生できる。

DAISYとは「DAISY Translator日本語版」は今日、4月6日に提供を開始した

アドイン提供でXHTMLの知識がなくてもDAISY文書が作成可能に

 「DAISY Translator日本語版」はWord 2007/2003/XPに対応。オープンソースソフトウェアとして提供され、ソースコードも公開している。音声合成エンジンは含まれないため、読み上げ機能を実装するためには別途音声合成エンジンを入手する必要がある。

 音声合成エンジンは日本障害者リハビリテーション協会などに申し込むことで入手できる。また、DAISY再生用ソフトウェアも、「AMIS 3.1」が日本障害者リハビリテーション協会のサイトで公開されている。

 なお、日本障害者リハビリテーション協会は、今年4月1日より著作権法第37条第3項に基づく視覚障害者等のための複製または自動公衆送信が認められる施設に子弟され、DAISY図書を自由に製作し、自動公衆送信が可能になった。同協会 情報センター長 野村美佐子氏は発表会で、「これを機会に読むことが困難な方々に、より多くのDAISY図書を届けられるよう積極的に活動していきたい」とコメントした。

 DAISYコンソーシアム会長の河村宏氏は発表会で、「これまでDAISYフォーマットのコンテンツを作成するには、XHTMLのソースコードを書く必要があり、知識がないと手も足もでないという面があった。今回のアドインを使うことで、簡単なものは変換操作だけでDAISYフォーマットで配布可能になった。たとえば、学校の先生がプリントを作って配る際に、Wordで変換して障害を持つ子供にはDAISYフォーマットで配布するなども可能になる」と述べた。

アドインを入れると、メニューに「アクセシビリティ」という項目が増え、「DAISYとして保存」操作で、DAISYフォーマットに変換できるDAISY再生ソフトで、変換後のDAISYフォーマットになった文書を再生しているところ。音声読み上げ可能で、現在読んでいるところがハイライトできる

DAISY4では動画対応・各国語対応を強化。EPUB3とも連携

 また河村会長は、今後の電子フォーマットにも言及。DAISYの次バージョン「DAISY4」とEPUBの次バージョン「EPUB3」は、2010年末から2011年はじめ頃にかけてリリースされる見込みだが、EPUBの策定にあたっているIDPF(International Digital Publishing Forum)とDAISYコンソーシアムは緊密な連携を取って作業を進めるとした。

 また、DAISYコンソーシアムでは、DAISY4の仕様で電子書籍出版用のプロファイルを定義しようと考えているが、これをできるだけEPUB3と一致させたい、可能なら同じにしたいと考えていると述べた。

 河村会長は、DAISY4では、手話を必要とする人など動画を必要とする人に対応するため動画をサポートするほか、日本語など各国仕様に対応すると説明。EPUB3でも各国語対応を含めアクセシビリティをもっと完璧なものにすることをバージョンアップの課題としており、日本電子出版協会(JEPA)がEPUBの日本語要求仕様案を4月1日に発表しているが、日本語対応についてはDAISY4およびEPUB3で共通の実装になるという。

電子書籍とバリアフリー関連団体の関係

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(工藤 ひろえ)

2010/4/6 15:12